年収別の養育費相場や基準となる年収の考え方について解説!
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
「配偶者がこれぐらいの年収だと養育費はいったいどのぐらい支払ってもらえるの?」
「養育費の計算方法が分からない」
おそらく、この記事をご覧の方はこのような疑問を抱えていらっしゃるかと思います。
養育費をいくらにするか決める際、一般的に参考にされているのが「養育費算定表」というものです。
この養育費算定表を利用して、子供の人数と年齢に加えて、養育費を支払う側と受け取る側の夫婦それぞれの年収から、養育費の金額相場を確認することができます。
この記事では、年収は養育費にどう影響するのか、年収別の養育費の相場はどのくらいか、いつの年収を基準に養育費を計算するのかなど“養育費と年収の関係“に焦点をあて、詳しく解説していきます。ぜひご覧ください。
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年収は養育費にどう影響する?
養育費は夫婦間の話し合いで合意できれば、自由に決めることができます。
話し合いをスムーズに進めるためには、養育費の相場を把握しておくことが大切です。
養育費の相場は、「養育費算定表」が基準になります。
「養育費算定表」は裁判所のウェブページに掲載されており、調停や裁判など、裁判所の手続きで養育費を決めるときにも参考にされています。
「養育費算定表」では、子供の人数・年齢と夫婦それぞれの年収によって養育費の目安が決められています。子供の年齢と人数が同じでも、夫婦の年収によって養育費の相場は大きく変わります。
養育費を支払う側の年収が高ければ、養育費の相場は高くなり、養育費を受け取る側の年収が高ければ、養育費の相場は低くなる傾向にあります。
もっとも、必ずしも養育費算定表の金額に従わなければならないわけではありません。
算定表の金額には家庭の個別の事情は反映されていませんので、あくまでも目安であり、個別の事情を考慮して、夫婦それぞれが納得できる金額を定めましょう。
受け取る側に年収があれば養育費は減る
養育費を受け取る側の年収が高くなると養育費は減ることになります。
例えば、14歳未満の子供が1人いる場合、養育費を支払う側の年収が600万円(フルタイム勤務)とすると、受け取る側の年収が120万円(パート勤務)であれば、養育費算定表では養育費の相場は6万~8万円となります。
一方で、受け取る側の年収が300万円(フルタイム勤務)であれば、養育費算定表では養育費の相場は4万~6万円となります。
夫婦の事情によって異なりますが、受け取る側の年収が高くなれば、受け取れる養育費は減ることになります。
相手の年収が低い・無職の場合でも請求は可能
相手の年収が低くても、養育費の請求は可能です。ただ、養育費の相場は、支払う者の年収が低いと低額になる傾向にあるので、養育費を多く受け取ることは期待できないでしょう。
なお、相手が無職で収入が0円だった場合でも、潜在的稼働能力がある、つまり働こうと思えば働くことができるのであれば、養育費を請求できる可能性があります。一方で、病気などで働きたくても働けない状況にあるなら、支払い能力がないと判断され、養育費を受け取るのは難しいといえます。
年収別 養育費の相場
養育費を支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収によって、養育費の相場がどのくらい変わるのか、また支払う側(義務者)が給与所得者と自営業者ではどのくらい変わるのか、具体的にみていきましょう。
今回のケースはすべて養育費を支払う側(義務者)を夫、受け取る側(権利者)を妻として表しています。
まず、夫の年収が300万円、500万円、600万円、1000万円の場合と妻が年収0円、120万円、300万円の場合をそれぞれみていきましょう。
なお、弁護士法人ALGでは、養育費計算ツールを作成しています。下記ページで簡単に養育費の相場を確認できますので、ぜひご活用ください。
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夫の年収300万円の場合
受け取る側の職業 | 子供の人数 | 年収300万円 (給与所得者) |
年収300万円 (自営業者) |
---|---|---|---|
妻 年収0円(専業主婦) | 子供1人 | 4~6万円 | 4~6万円 |
子供2人 | 4~6万円 | 6~8万円 | |
子供3人 | 6~8万円 | 8~10万円 | |
妻 年収120万円(パート勤務) | 子供1人 | 2~4万円 | 2~4万円 |
子供2人 | 2~4万円 | 4~6万円 | |
子供3人 | 4~6万円 | 6~8万円 | |
妻 年収300万円(フルタイム勤務) | 子供1人 | 2~4万円 | 2~4万円 |
子供2人 | 2~4万円 | 4~6万円 | |
子供3人 | 2~4万円 | 4~6万円 |
夫の年収が300万円の場合、養育費の相場は上記の表のようになります。子供の年齢は14歳以下とします。
例えば、【妻が専業主婦で年収0円、子供2人】のケースを見ていただくと、同じ年収300万円でも、給与所得者と自営業者では相場に違いが生じることがわかります。
また、【妻が専業主婦で年収0円】の場合と【妻がフルタイム勤務で年収300万円】の場合を比較すると、子供1人または2人だと養育費は2万円ほど、子供3人の場合4万円ほど相場が変わってくることがわかります。
下記のページでは、義務者の年収が300万円の場合に特化して、養育費の相場について解説しています。こちらもぜひご覧ください。
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夫の年収500万円の場合
受け取る側の職業 | 子供の人数 | 年収500万円 (給与所得者) |
年収500万円 (自営業者) |
---|---|---|---|
妻 年収0円(専業主婦) | 子供1人 | 6~8万円 | 8~10万円 |
子供2人 | 8~10万円 | 12~14万円 | |
子供3人 | 10~12万円 | 14~16万円 | |
妻 年収120万円(パート勤務) | 子供1人 | 4~6万円 | 6~8万円 |
子供2人 | 6~8万円 | 10~12万円 | |
子供3人 | 8~10万円 | 12~14万円 | |
妻 年収300万円(フルタイム勤務) | 子供1人 | 4~6万円 | 6~8万円 |
子供2人 | 6~8万円 | 8~10万円 | |
子供3人 | 6~8万円 | 10~12万円 |
続いて夫の年収が500万円の場合をみていきましょう。この場合の養育費の相場は、上記の表のとおりです。子供の年齢は14歳以下とします。
先ほど紹介した年収300万円の場合よりも、全体として高額になっていることがわかります。
義務者の年収が500万円の場合の養育費の相場について、詳しくは下記のページをご覧ください。
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夫の年収600万円の場合
受け取る側の職業 | 子供の人数 | 年収600万円 (給与所得者) |
年収600万円 (自営業者) |
---|---|---|---|
妻 年収0円(専業主婦) | 子供1人 | 6~8万円 | 10~12万円 |
子供2人 | 10~12万円 | 14~16万円 | |
子供3人 | 12~14万円 | 16~18万円 | |
妻 年収120万円(パート勤務) | 子供1人 | 6~8万円 | 8~10万円 |
子供2人 | 8~10万円 | 12~14万円 | |
子供3人 | 10~12万円 | 14~16万円 | |
妻 年収300万円(フルタイム勤務) | 子供1人 | 4~6万円 | 6~8万円 |
子供2人 | 6~8万円 | 10~12万円 | |
子供3人 | 8~10万円 | 12~14万円 |
夫の年収が600万円の場合、養育費の相場は上記の表のようになります。子供の年齢は14歳以下とします。
前項目のケースとの年収の差は100万円ですが、相場は2万円ほど違っている部分もあります。
夫の年収1000万円の場合
受け取る側の職業 | 子供の人数 | 年収1000万円 (給与所得者) |
年収1000万円 (自営業者) |
---|---|---|---|
妻 年収0円(専業主婦) | 子供1人 | 12~14万円 | 16~18万円 |
子供2人 | 18~20万円 | 22~24万円 | |
子供3人 | 20~22万円 | 26~28万円 | |
妻 年収120万円(パート勤務) | 子供1人 | 10~12万円 | 14~16万円 |
子供2人 | 16~18万円 | 20~22万円 | |
子供3人 | 18~20万円 | 24~26万円 | |
妻 年収300万円(フルタイム勤務) | 子供1人 | 8~10万円 | 12~14万円 |
子供2人 | 14~16万円 | 18~20万円 | |
子供3人 | 16~18万円 | 22~24万円 |
最後に夫の年収が1000万円の場合、養育費の相場は上記の表のようになります。子供の年齢は14歳以下とします。
最初に紹介した夫の年収が300万円の場合と比較するとわかるように、養育費を支払う側の年収が高ければ高いほど、養育費の相場が高くなり、3倍以上になっている場合もあります。
また養育費を受け取る側の年収も大きく影響することがわかります。
下記のページでは、義務者の年収が1000万円の場合や基本的な養育費の相場について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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養育費の算定表の見方
養育費算定表の見方は次のような流れになります。
- ①子供の条件に該当する表を見る
算定表は子供の人数(1人・2人・3人)・年齢(0~14歳まで/15歳以上)に応じて9種類あります。
あてはまる算定表ひとつを選択します。 - ②父母それぞれの年収を確認する
算定表の縦軸は義務者(養育費を支払う側)の年収、横軸は権利者(養育費を受け取る側)の年収を示しています。縦軸も横軸も年収が2列表記されています。内側の列は自営業者の年収、外側の列は給与所得者の年収となっています。 - ③相場を確認する
算定表の縦軸と横軸の該当する年収をたどって交わる部分が養育費の相場となります。
給与所得者と自営業者の相場に差が出る理由
「養育費算定表」上の年収額が同じでも、給与所得者と自営業者で養育費の相場が違うのは、年収の考え方が違うからです。
給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」が「養育費算定表」上の年収になります。
そこから社会保険料、所得税、住民税や、特別経費(住居費、医療費など)、職業費(仕事のために必要な費用)などを引き、最終的な「基礎収入(生活費に充てることができる金額)」を算出します。統計によると、この基礎収入は年収の34~42%ほどだといわれています。
一方で、自営業者は「課税される所得金額」が「養育費算定表」上の年収となりますが、「課税される所得金額」は、すでに必要経費、社会保険料などが引かれたものになっているため、まだ引かれていない特別経費(住居費、医療費など)を引き、最終的な「基礎収入」を算出します。統計によるとこの基礎収入は年収の47~52%ほどだといわれています。
その結果、年収は同じでも、基礎収入は自営業者の方が給与所得者よりも高額になります。
養育費はこの「基礎収入」を参考に計算されるため、同じ年収でも給与所得者より自営業者のほうが、養育費の金額が高くなるのです。
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メールで相談する養育費はいつの年収を基準に計算するか
養育費算定表を使用して養育費を算定する際に使用する権利者・義務者の年収は、原則、確定している前年度の収入になります。
しかし、転職によって前年度より年収が減ることが分かっているケースや、昇進により前年度より給与が増額したケースでは、前年度と今年度の給与に大きな差が生じる場合もあります。
このような場合は、今年度の収入をベースとして養育費を算定することがあります。
次に、相手の年収はどうやって確認したらいいのでしょうか。また将来的に給与の増減がある場合は養育費を変更できるのでしょうか。次項より解説していきましょう。
相手の年収を確認する方法
まず、相手の年収を確認できる書類は、主に次のようなものです。
- 源泉徴収票
- 課税証明書
- 確定申告書
- 給与明細・賞与明細 など
上記の相手の年収を確認できる書類は、相手本人が保管しているはずですので、まずは相手に提出を求めましょう。
もし、相手が提出に応じないようであれば、「弁護士会照会」の制度を利用することによって上記の書類を取得できる可能性があります。
弁護士会照会は、弁護士が法律にもとづいて、事件の解決に必要な情報を取得できる手続きです。
弁護士に依頼する必要があり、個人では利用できない手続きとなります。
そのほかにも、裁判所で裁判の手続きを行っている場合は、相手の勤務先や市区町村に「文書送付嘱託」を申し立てれば、書類を取得することができます。
将来的に給与の増減がある場合は変更できる
将来的に給与の増減がある場合、当事者間の話し合いで合意できれば、一度決めた養育費を変更できます。
話し合いでは折り合いがつかない場合は、「養育費増額調停」または「養育費減額調停」を申し立てる必要があります。
調停では、養育費を取り決めた時点では、想定しえなかった事情の変更があり、その事情変更が当事者に責任のないやむを得ないものであれば、養育費の増減額が認められる可能性があります。
例えば、受け取る側もしくは支払う側が予期せぬリストラや病気が理由で収入が著しく減少、または無収入になった場合、昇給をして収入が大幅に増加したなど、現在の養育費を維持するのは著しく不公平であるといえる場合が挙げられます。
養育費の増額請求、または養育費の減額請求の方法について、各下記ページでそれぞれ詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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養育費と年収についてのQ&A
- Q:
養育費は受け取った側の年収になりますか?
- A:
養育費は、子供を扶養するために必要なものですので、原則非課税です。
養育費を受け取っている側からみると「収入」と思いがちですが、あくまでも“親が子供に渡しているお金”ですので、収入に応じて支払う所得税の対象とはなりません。
そのため、年末調整や確定申告書で収入として申告する必要もありません。ただし、次のように、例外的に養育費に対して贈与税が課される場合もあります。
- 過大な額の養育費を受け取っている場合
- 養育費を一括で受け取った場合
- 受け取った養育費を子供の養育費以外(預金や投資、不動産の購入など)に充てている場合
なお、児童手当や児童扶養手当も、社会保障給付にあたるので年収として考慮されません。
- Q:
年収のほかに、養育費の増減を決める要素には何がありますか?
- A:
養育費を決めるにあたって父母の年収のほかに、養育費の増減を決める要素には次のようなものがあります。
- 【増額要素】
- 子供の人数・年齢
- 子供の私立学校や大学進学で多額の費用がかかる
- 子供が重い病気をして高額の医療費がかかる
- 【減額要素】
- 再婚によって再婚相手と子供が養子縁組をした
- 再婚によって扶養家族が増えた(子供が生まれた)
など
- 【増額要素】
年収による養育費の相場は目安です。不安な場合は弁護士にご相談ください。
養育費の金額は夫婦のそれぞれの年収によって大きく変わります。
また年収をもとにした養育費の相場はありますが、あくまでも目安です。それぞれの家庭の事情によって、考慮すべき点もありますので、適正な養育費の金額を知りたい方や、養育費を決める際に不安のある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
それぞれの家庭の状況を伺い、夫婦の年収や状況に応じた適正な養育費を算出してアドバイスいたします。そのほかにも、弁護士が代わりに相手と直接交渉(話し合い)したり、裁判所の手続きを行ったりすることも可能です。
養育費は、子供が社会的・経済的に自立するまで長い期間に渡って支払ってもらうものであり、子供が健やかに成長するための大切なお金です。
夫婦それぞれが納得する適正な金額で養育費を取り決めておかないと、後からトラブルになり兼ねません。
まずは、弁護士法人ALGにお気軽にお問合せください。
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