【2019年】養育費算定表が改定されました。
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新養育費算定表(2019年)の概要
新養育費算定表では、従来から問題となっていたひとり親世帯の貧困を改善するために、養育費の支払い額の基準が多くの場合で引き上げられました。
2019年12月23日以降に、裁判所のウェブサイト上で公開されているものが、新養育費算定表となります。
改定前の養育費算定表は、2003年に作成されたものであり、当時の税制や社会保障制度等は、現在とは大きく異なっているため、新養育費算定表では最新の統計値などが用いられています。
近年、養育費の未払い問題が社会問題化されており、直近になされた2016年度の厚生労働省の調査(ひとり親世帯等調査結果報告)によると、特に母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは、24.3%となっており極めて低い割合となっています。
養育費自体が低額であることや養育費の未払いが多発していることから、現在様々な改正が行われており、新養育費算定表は養育費の金額の底上げが目的とされています。
【注意点】
「新算定表」とインターネット上で検索した場合に、2016年に日本弁護士連合会(日弁連)から提言された養育費算定表が、新算定表として検索結果に表示されている場合があります。
残念ながら、日弁連が新算定表として提言した養育費算定表は実務上あまり定着せず、裁判上もほとんど使われていないのが現状です。
新養育費算定表について調べる場合は、2019年12月23日以降に作成された記事であるか否かを確認してください。
新養育費算定表では何が変わったのか?
子供の生活費指数が変わりました。
子供の生活費指数が、0~14歳の子供については、新養育費算定表では62(旧養育費算定表では55)となり、引き上げられました。一方、15歳以上の子供については、新養育費算定表では85(旧養育費算定表では90)となり、引き下げられることになりました。
(1)15歳未満のお子様について
15歳未満の小さいお子様のみがいる家庭では、生活費指数が引き上げられるため、養育費が旧養育費算定表に比べ高額になります。
(2)15歳以上のお子様について
15歳以上のお子様のみがいる家庭では、15歳以上のお子様の生活費指数が引き下げられたことにより、養育費が下がってしまうのでしょうか?
この点については、生活費指数のみで見ると引き下げられるように思われますが、実際には、生活費指数のみではなく、同時に基礎収入割合も変更されています。そのため、15歳以上のお子様がいる家庭においても、旧養育費算定表と比べて、養育費は変わらないか高くなる傾向にあります。
基礎収入が変わりました。
養育費を算定する際、年間の収入から税金や社会保険料、その他様々な経費を控除して、家庭のなかで生活費として自由に使用できる金額はどのくらいあるのかを算出します。この金額を、基礎収入といいます。
総収入の中での基礎収入の割合は、給与所得者においては旧養育費算定表では、34%~42%でしたが、新養育費算定表では38%~54%となりました。
すなわち、低所得者層でも高所得者層でも、総収入に占める基礎収入の割合が高くなったため、養育費を支払う側(義務者)の負担が大きくなりました。
その結果、15歳以上のお子様がいる世帯においても、旧養育費算定表と比較した場合、同額になるか、高くなることになりました。
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新養育費算定表が公表されたことの影響
(1)過去に養育費を取り決めている場合、養育費はどうなるのでしょうか?
養育費の増額・減額をする場合、事情の変更があれば、養育費を変更することが可能となりますが、新養育費算定表ができて公表された事実は、養育費の変更自由である、「事情変更」には該当しないと、明確にされています。
2019年12月23日より前に、当事者間での合意(公正証書によるものも含む)、調停、裁判いずれの形で取り決めていたとしても、当然に養育費が増額されるということはありません。
したがって、新養育費算定表が発表され、新養育費算定表によれば養育費が増額するはずだという主張のみの請求は、原則的に認められません。
新養育費算定表により養育費を増額したい場合には、新たに協議し直して当事者間で合意するか、調停等で新養育費算定表に基づいて養育費の金額を取り交わす必要があります。
なお、既に調停等で養育費が取り決められている場合は、「取り決めた当時と比較して年収に変更があったこと」など、事情の変更が存在することを併せて主張する必要があるでしょう。
(2)「養育費の支払いは“成年”になるまで」とは、いつまでを指すのか?
民法の一部が改正されることになり、成年年齢が2022年4月1日から、18 歳に引き下げられます。この点、養育費をいつまで支払うかについて、合意書や調停調書上「成年」に達する日までなどと定められたものが一定数存在しますが、「成年」の意義は、「基本的には20歳と解するのが相当である」と発表されました。
これは、養育費をいつまで負担するかについては、子供が未成熟子を脱する時期と考えられており、「成年」=「未成熟子を脱する時期」ではないとの見解からです。そのため、これまでと同様、養育費をいつまで負担するかについては、未成熟子を脱する時期が特定して認定されないケースでは、子供が20歳になる時期までとされるものと考えられます。
新算定表と旧算定表との比較の具体例
義務者の収入 | 旧養育費算定表 | 新養育費算定表 |
---|---|---|
300万円 | 2~4万円 | 4~6万円 |
500万円 | 4~6万円 | 6~8万円 |
800万円 | 8~10万円 | 10~12万円 |
1000万円 | 10~12万円 | 12~14万円 |
義務者の収入 | 旧養育費算定表 | 新養育費算定表 |
---|---|---|
300万円 | 4~6万円 | 6~8万円 |
500万円 | 8~10万円 | 10~12万円 |
800万円 | 14~16万円 | 14~16万円 |
1000万円 | 16~18万円 | 18~20万円 |
多くの場合が、算定表上2万円程度増加していることがわかると思います。
また、表上では同じ区分に入っていたとしても、下限に近かった場合と、上限に近かった場合とでは、実際に養育費を決める際には大きな違いになります。
その他の養育費の支払いを促進するための制度
新養育費算定表の作成は、養育費の金額の底上げのために行われましたが、養育費の制度改革は他にもあります。
民事執行法が改正され、2020年4月(令和2年)に施行されます。この改正による変更点は、下記2点です。
1つ目は、養育費について公正証書や調停調書等により取り決めたにもかかわらず、未払いの場合に、財産開示制度の手続きが拡充され、「第三者からの情報取得手続き」として銀行口座等の開示ができるようになります。
2つ目は、市区町村の年金事務所から、義務者の勤務先を照会できるようになります。勤務先が分かれば、給与からの差押えが容易になるため、養育費の支払いについて、任意での支払いが促進されると思います。
具体的な強制執行手続きについては、下記をご確認ください。
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また、明石市が、養育費の未払いについて、市が一旦立て替えて養育費の支払い義務者である親から回収する制度や、養育費を支払わない親の氏名を公開する制度を検討するなど、市区町村レベルでも様々な制度改革が検討されています。
今後は、養育費は支払うべきという社会的気運が高まるのではないかと思います。
まとめ
養育費について、算定表が改定されましたが、実際裁判になったときには養育費の算定表を見るだけで解決するというものではなく、算定表を用いてどのように主張するのか、算定表に反映されていない特殊事情はあるのかなど、個別の事情に応じて主張立証を行わなければならないことは、今までと変わりません。
離婚件数は増加傾向にあり、当事者だけでは解決できない問題がたくさんあります。
養育費についてお悩みの方はたくさんいらっしゃいますが、実際は、養育費だけで離婚問題が解決できるとは限りません。
養育費、そして離婚問題についてお悩みの方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
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