離婚調停を取り下げても離婚裁判を起こせる?再度調停することは可能?
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚調停を申し立てたけれども、一向に話し合いが進まない……、不利な流れに調停が進んでいると感じる……やっぱりヨリを戻したい……など理由は様々ですが、一度申し立てた離婚調停を取り下げることができます。
そこで、本記事では……
・離婚調停の取り下げとは何か?
・離婚調停を取り下げた方が良いケースとは?
・離婚調停を取り下げる方法
など、「離婚調停の取り下げ」をテーマにして、詳しく解説していきます。
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離婚調停の取り下げとは?
離婚調停の取り下げとは、離婚調停を申し立てた「申立人」が離婚調停の申立てを撤回し、調停を終了させることをいい、主に以下の注意点があります。
- 離婚調停の取り下げは、いつでも取り下げることができる
- 取り下げるのは、申立人からしかできず、離婚調停を申し立てられた「相手方」から取り下げることはできない
- 取り下げには相手方の同意は必要ない
離婚調停の「不成立」と「取り下げ」の違い
離婚調停の手続きに何ら結論が出ないまま終了するケースとして、「不成立」というパターンもあります。
離婚調停の「不成立」は、裁判官と調停委員で構成する調停委員会が、話し合いの末にこのまま調停を続けても合意する見込みがないと判断した場合や当事者の一方が調停に出席せずに話し合いができないと判断した場合に打ち切って終了させる手続きです。
一方で離婚調停の「取り下げ」は、話し合いができているか、できていないかは関係なく申立人の意思でいつでも打ち切って終了できる手続きになります。
離婚調停の「不成立」と「取り下げ」の違いは主に次表のとおりです。
不成立 | 取り下げ | |
---|---|---|
調停の打ち切りを決める人 | 調停委員会(裁判官と調停委員) | 申立人 |
打ち切るタイミング | ある程度話し合いをして合意する見込みがないと判断したとき、もしくは当事者の一方が調停に出席せずに話し合いができないとき | いつでも可能 |
打ち切る理由 | 必要 | 不要 |
離婚調停の不成立については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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離婚調停を取り下げた方が良いケースとは?
離婚調停を取り下げる際は、特段理由は必要ありませんが、次のような場合は取り下げを検討すべきケースです。
- 自分に不利な流れで進んでいる場合
- 離婚裁判で決着をつけたい場合
- 復縁したいとなった場合
次項より、それぞれ詳しく確認していきましょう。
自分に不利な流れで進んでいる場合
離婚調停を申し立てたけれども、不利な流れで進んでいると感じる場合は、調停を取り下げて仕切り直しをしたほうがいい場合もあります。
例えば、次のような場合です。
- 不貞行為(浮気・不倫)やDV・モラハラなどの相手の有責行為を立証できる証拠が足りない
- 相手の主張に対して反論するのが難しい
- 調停を進めていくうちに調停委員が相手の味方についた など
上記のような場合は、一度取り下げて、相手の有責行為を証明できる証拠集めに注力したり、相手の主張に対してどのように反論すればいいのかしっかり検討して再度戦略を練り直したうえで、再度離婚協議や離婚調停を行うのが得策だと考えられます。
離婚裁判で決着をつけたい場合
離婚調停を成立させるには、相手が調停に出席し、離婚の可否と離婚条件について双方の合意が必要です。
離婚調停を続けていても長引くだけであり、ある程度の段階で調停を打ち切って離婚裁判に進んだほうがスムーズ、かつ適切な条件で離婚できる可能性が高い場合もあります。
例えば、次のような場合です。
- 相手が調停に出席したりしなかったりするので、なかなか話し合いが進まない
- 相手が調停で無謀な離婚条件を提示してきて譲歩する気がない
- 双方の主張がずっと平行線で折り合いがつかない など
ただ、一般的には、離婚裁判へ進めたいのであれば、調停取下げを行うより、調停不成立としてもらうことが多いでしょう。
復縁したいとなった場合
離婚調停を申し立てたものの、話し合いを重ねていくうちに気持ちに変化が生じて、離婚することを思い直し、夫婦関係を修復したいと考えた場合は、離婚調停を取り下げることができます。
もっとも、離婚調停を申し立てた側が復縁を望んで取り下げをしても、相手が復縁を望んでいるとは限りません。
そのような場合は、離婚調停を取り下げたあとに円満な夫婦関係を回復するための話し合いをする手続きとなる「円満調停」を家庭裁判所に申し立て直すという手段もあります。
円満調停については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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離婚調停を取り下げても離婚裁判に進めるのか?
離婚裁判は、調停を経てなければ裁判を起こすことができないという制度があります。
この制度のことを「調停前置主義」と呼びます。
離婚問題については、裁判所が一方的に判決で決めるよりも、できる限り調停での話し合いによって当事者双方が納得できる解決を図るほうが望ましいと考えられています。
そのため、当事者双方に調停をさせるため、調停前置主義が決められているのです。
離婚調停の取り下げをした場合に離婚裁判に進めるのかは、調停でどの程度の話し合いが行われたかによって判断されます。
具体的には、離婚調停を数回実施して話し合いを行ったものの折り合いがつかなかったので取り下げた場合は、調停前置の要件を満たされていると判断されて離婚裁判に進められると考えられます。
また、相手が調停期日に一度も出席せずに取り下げた場合も、相手が話し合う意思がないために話し合いが成立しないことが明らかなので、調停前置の要件が満たされていると判断されて離婚裁判に進めることが多いです。
一方で、第1回調停期日に相手が出席しなかったからといってすぐに取り下げた場合は、調停前置の要件を満たしていないとして離婚裁判に進めない可能性が高いです。
そのほかにも、離婚調停を取り下げして数年の月日が経過してから離婚裁判を提起した場合、もう一度離婚調停から再度始めて話し合いで解決を図るように促される場合もあります。
離婚裁判について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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取り下げ後はすぐに裁判を起こさなければならない?
離婚調停を取り下げたとしても、すぐに離婚裁判を提起しなければならないという定めはありません。
もっとも、離婚調停の取り下げから数年経過して離婚裁判を提起した場合は、夫婦双方に心境や事情が変化していることも考えられるため、話し合いによる解決ができる可能性があると裁判所に思われて、再度離婚調停を申し立てるように促される場合もあります。
裁判所の判断によって異なりますが、離婚調停を取り下げてからおよそ半年以内に離婚裁判を提起すれば、調停前置の要件を満たしているとして受け付けてくれると考えられます。
なお、離婚調停の取り下げ後に離婚裁判の提起を検討しているのであれば、家庭裁判所で「事件終了証明書」の申請と取得をしておきましょう。
調停と裁判で管轄となる家庭裁判所が異なる場合もありますので、離婚訴訟では「事件終了証明書」を提出して調停を行ったことを証明することになります。
調停不成立と取り下げではどちらが裁判に有利?
離婚調停で「不成立」となった場合と「取り下げ」をした場合を比べても、どちらかが離婚裁判で有利になるものではありません。
しいていえば、調停不成立という結論は調停委員会が判断するので、時間がかかる可能性があります。
たとえば、議論が平行線で調停が成立する可能性は皆無であると考えられるのに、相手方が調停続行をしつこく求め、調停委員もなかなか不成立にしてくれないなどの場合、離婚裁判を始めたいのであれば早く離婚調停を打ち切って取り下げしたほうがいいケースもあると考えられます。
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メールで相談する離婚調停を取り下げた後に再度調停はできるのか?
離婚調停を取り下げたあとでも、再度離婚調停を申し立てることはできます。
ただし、離婚調停を取り下げてから2回目の離婚調停の申立てまでの期間が短いと、「調停を軽んじている」、「不当な目的での申立てだ」と判断されてしまい、調停委員の心証が悪くなるうえに、離婚調停そのものを行わないと判断される可能性があります。
また、離婚調停を取り下げたあとすぐに、双方の離婚についての考え、希望、気持ちなどが変わって合意できるとは考え難く、再度離婚調停で相手と合意しようとしても困難なのが現状です。
あらためて調停を申し立てるのであれば、ある程度は期間を置いたほうがいいでしょう。
離婚調停を取り下げる方法
家庭裁判所の担当係属部に作成した「取下書」を提出すれば、手続きは完了します。
離婚調停の取り下げは、法律上は口頭でもできることにはなっていますが、実際の運用としては、取り下げの意思を明確にするために、書面で取下書を提出することが要求されます。
なお、相手の同意までは不要です。
裁判所の下記ページで調停用の取下書のひな形と記載例がありますので、ぜひ参考になさってください。
相手から離婚調停を取り下げられた場合の対処法
こちらが離婚調停を申し立てられた方で、まだ話し合いたかったのにもかかわらず、突然相手から離婚調停の取り下げをされてしまう場合もあるかと思います。
その後は、離婚調停を申し立てられた側から再度離婚調停を申し立てることもできますし、離婚裁判を提起することもできます。
まずは調停で話し合いをしてから裁判をしないといけないという調停前置の要件は、申し立てた側だけでなく申し立てられた側にもあてはまることなので、ある程度調停が進んでから取り下げられた場合などは、申し立てられた側から離婚裁判を提起して離婚裁判を進めることができます。
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メールで相談する弁護士に依頼した結果、離婚調停と訴訟を経て早期離婚が成立した事例
【事案概要】
別居期間が7年経過している夫婦で、ご依頼者様から早期の離婚を求めて、財産分与として約600万円を支払うとする具体的な離婚条件を提示してらっしゃいました。しかし、相手方から反応がない状態が続いたため、弁護士の介入が必要と考えてご依頼されました。
【弁護士方針・弁護士対応】
相手方と話し合いで解決できる可能性は低いと考え、離婚裁判を見越して離婚調停を申し立てました。
離婚調停で、相手方は出席しなかったため、取り下げをして離婚裁判での解決を図りました。
【結果】
訴状が相手方に到着したところ、相手方から裁判外での離婚を打診されました。最終的に、財産分与を含めて解決金200万円だけを支払うという条件で裁判外での離婚が成立しました。
ご自身で交渉していたときより、はるかに有利な条件で早期に離婚が成立しました。
よくある質問
- Q:
離婚調停を取り下げるメリット・デメリットはありますか?
- A:
離婚調停を取り下げると次のようなメリットとデメリットがそれぞれあると考えられます。
【メリット】
- 早くに離婚裁判を提起することができて、離婚への近道となる
- 離婚裁判に進めることで、離婚を頑なに拒んでいる相手との離婚が認められる可能性が高まる
- 復縁できる可能性が出てくる
【デメリット】
- 相手とほとんど話し合いをすることなく離婚調停を取り下げてしまった場合は、調停前置の要件を満たしていないとして、離婚裁判を起こしても再度離婚調停に付される可能性がある
- 再度調停を申し立てたい場合は、ある程度期間を空けなければいけないので、離婚の話し合いが進まない
- Q:
離婚調停を取り下げた場合、弁護士費用を返金してもらえますか?
- A:
離婚調停を弁護士に依頼していた場合、弁護士費用が発生します。
弁護士費用の内訳は、相談料、実費、着手金、成功報酬金があります。相談料は、相談を受けたときに支払う費用ですので返金してもらうことは困難です。
実費は、調停を申し立てた際に、裁判所に収める収入印紙代、郵便切手代がすでに発生しているので、実費も返金してもらうことはできません。着手金については、取り下げた際の状況によっては着手金の一部を返還してもらえる可能性があります。詳細は、弁護士に依頼したときに締結した委任契約書で、離婚調停を取り下げた場合の取り扱いについて確認するか弁護士に直接確認するといいでしょう。
成功報酬金は、離婚成立を目指して弁護士に依頼した場合は、離婚が成立したときに支払う費用ですので、離婚調停を取り下げたのであれば成功報酬金は基本的に発生しません。
- Q:
離婚調停を申し立てられましたが復縁したいです。取り下げてもらうことはできますか?
- A:
ご自身が復縁を希望して離婚調停を取り下げてもらうように伝えることは問題ありませんが、相手が離婚調停を申し立てたということは離婚を希望しているのですから、実際に離婚調停を取り下げてくれるかは難しいといえます。
まずは次のとおり復縁をするためのポイントを抑えておくべきです。【復縁するためのポイント】
・離婚調停にはきちんと出席する
離婚調停は、夫婦の本音をぶつけ合う機会となります。きちんと参加して、復縁の意思をできるだけ早くにしっかり伝えるとともに誠意をみせれば相手も離婚を考え直して取り下げてくれる可能性があります。
決して、調停を欠席しつづけて、「不誠実な人だ」と不信感を増すようなことをしてはいけません。・相手の気持ち・言い分を理解する
相手がどんな点が嫌で離婚を決意したのかなどを聞いて、相手の気持ちを理解したうえで、ご自身の言動を改めましょう。相手の言い分を一方的に否定したり、ご自身の気持ちを押し付けるようなことをしては逆効果です。・弁護士に相談する
弁護士に相談することで、客観的に夫婦関係をみてもらい、第三者の視点からアドバイスしてもらえます。また、弁護士は、法律的な観点から相手に復縁する気になるような戦略をたてて、離婚調停に一緒に出席して代わりに話し合うこともできます。
- Q:
離婚調停を取り下げると相手に通知は行きますか?
- A:
家庭裁判所から相手方に対して、申立人が離婚調停を取り下げた旨の通知がされます。
取り下げたことを通知しないと、離婚調停を申し立てられた側である相手方は調停が終了したことを知らずに次回の調停期日に家庭裁判所へ行ってしまうおそれがあるからです。
離婚調停の取り下げを検討するなら、まずは弁護士にご相談下さい
離婚調停を申し立てた側で、離婚調停が不利な流れに進んでいる場合や早く離婚裁判で決着をつけたい場合、気持ちが変わり復縁したい場合などは離婚調停を取り下げたほうが良いケースかもしれません。
離婚調停の取り下げを検討されているなら、まずは弁護士にご相談ください。
早い段階で調停を取り下げてしまうと、調停前置の要件を満たさずに離婚裁判を起こしても再度離婚調停に付される可能性があります。
弁護士であれば、どのタイミングで離婚調停を取り下げて、取り下げたあとどのような行動をとるべきか戦略を立てて、最善の方法についてアドバイスをいたします。
さらに離婚調停を取り下げたあとに離婚裁判に進める場合は、専門的な知識が必要になります。
離婚裁判では、法的に適切な方法で主張と立証をしないと有利な判決は勝ち取れません。
弁護士に依頼すれば、安心して離婚裁判の手続きを進めてくれるでしょう。
1人で悩みを抱え込まずに、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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メールで相談する- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)