ワンオペ育児で離婚したい!離婚可能なケースとは?
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
近年、家事や育児を1人で行う「ワンオペ育児」が問題となっています。
本来、子育ては夫婦で協力して行うものですが、「育児=女性の仕事」という考えは根強く、妻の負担だけが増えているのが現状です。
また、ワンオペ育児をめぐって夫婦仲が悪化し、離婚に至るケースも少なくありません。
本記事では、「ワンオペ育児で離婚したい」とお悩みの方に向け、離婚が認められるケースや注意点、離婚の流れなどを詳しく解説していきます。
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ワンオペ育児とは
ワンオペ育児とは、両親のどちらか一方が1人で育児や家事をこなしている状態のことです。日本では、特に女性がワンオペ育児に陥りやすくなっています。例えば、以下のようなケースが該当します。
- 夫が家事や育児に協力してくれない
- 夫がいつも休日に外出してしまい、妻に1人の時間がない
- 夫が単身赴任中で、ほぼ帰ってこない
- 夫の仕事が多忙で、あまり家にいない
- 実家が遠く、頼れる人がいない
なお、専業主婦でも、ワンオペ育児を理由に離婚できる可能性があります。「仕事をしていないのだから、家のことを1人で行うのは当たり前」などと諦める必要はありません。
ワンオペ育児を理由に離婚できる?
ワンオペ育児による離婚は可能ですが、簡単には認められないケースもあります。なぜなら、離婚の方法によって、離婚成立の要件も異なるためです。
①協議離婚
夫婦の話し合いで離婚を決める方法です。双方が合意すれば、離婚理由に関係なくいつでも離婚を成立させることができます。
②離婚調停
裁判所の調停委員を挟み、話し合いで離婚の成立を目指す方法です。最終的に双方の同意が得られれば離婚が成立するため、基本的に離婚理由も問われません。
③離婚裁判
話し合いで解決できない場合、最終的には裁判所の判断に委ねることになります。しかし、裁判所は法的根拠に基づいて離婚の可否を判断するため、ワンオペ育児だけを理由に離婚を成立させるのは難しい可能性が高いといえます。
離婚の詳しい流れは、以下のページで解説しています。
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ワンオペ育児の離婚率
ワンオペ育児による離婚率は、近年上昇傾向にあるとされています。
この背景にあるのが、女性の社会進出が進んでいる一方で、家事育児の分担は進んでいないという実態です。女性の負担だけが増え、ストレスが限界に達した結果、離婚を決意するケースが多くみられます。
2021年の調査でも、女性が家事や育児に割く時間は、男性の約4倍に上るというデータがあります※1。
また、離婚理由を調査したアンケートでも、「家事をしない」「子育てに非協力的」など、ワンオペ育児に関連するものが多数ランクインしています※2。
※1:総務省「令和3年社会生活基本調査生活時間及び生活行動に関する結果」
※2:参考「離婚弁護士相談広場( https://www.riconhiroba.com/ )」
ワンオペ育児で離婚するメリット・デメリット
メリット
・ストレスが解消される
家事や育児をしない夫がそばにいると、それだけでストレスを感じることもあります。離婚後は相手の顔を見ずに済むため、気持ちが楽になるでしょう。
・家事の負担が減る
夫の食事の準備や洗濯が不要になるため、毎日の負担を減らすことができます。体力をセーブできるのは、大きなメリットといえるでしょう。
・子供が親の不仲を見ずに済む
夫婦喧嘩が多い家庭は、子供にとって好ましくありません。離婚すれば、子供が健全に安心して過ごすことができます。
デメリット
・経済的な不安が生まれる
元夫からの養育費だけでは、生活が苦しい家庭もあります。自分の仕事を増やしたり、子供の習い事を減らしたりと、我慢が強いられることも増えるでしょう。
・子供のメンタルに影響する可能性がある
家庭環境が変わることは、子供のメンタルに大きな影響を与えます。場合によっては、不登校や引きこもりに繋がるおそれもあります。
・子供の学校生活に影響が出る
引っ越し先によっては、保育園の転園や転校を余儀なくされることがあります。仲の良い友人や先生と離れることで、子供にストレスがかかる可能性もあります。
離婚裁判になったら、ワンオペ育児以外の理由が必要になる
離婚裁判となった場合、「ワンオペ育児だったこと」だけを理由に離婚を成立させるのは難しいといえます。というのも、裁判所は以下の「法定離婚事由」がない限り、離婚を認めてくれないからです。
- 配偶者の不貞行為
- 配偶者による悪意の遺棄
- 配偶者の3年以上の生死不明
- 配偶者の強度の精神病、また回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
法定離婚事由の詳細は、以下のページで解説しています。
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次項では、ワンオペ育児による離婚が裁判で認められるケースを具体的にみていきます。
ケース1:共働きにもかかわらず、家事育児をしない相手に我慢できず別居
ワンオペ育児に耐え切れず、別居したケースです。
この場合、別居期間が相当長期にわたれば、夫婦関係は破綻しているとみなされ、離婚が認められる可能性があります(その他婚姻を継続し難い重大な事由)。なお、必要な別居期間は「3~5年」が相場とされています。
なお、別居はお互いが冷静になるためにも有効な手段です。「本当に離婚したいのか」「子供のためになるのか」などと気持ちを整理し、再構築を目指す夫婦もいます。
ただし、相手に無断で家を出たり、勝手に子供を連れて別居した場合、裁判などで不利になる可能性があるため、注意が必要です。
詳しくは以下のページもご覧ください。
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ケース2:家事育児に協力しない相手から暴力を振るわれる
相手が家事育児に協力してくれないばかりか、殴る・蹴るといった暴力を振るう場合、その暴力行為自体が、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いです。
暴力(DV)を理由とした離婚について、詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
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ケース3:育児と家事すらできないのかなどとモラハラを受けている
ワンオペ育児をしている中、夫から「お前はまったく家事ができない」「誰が食わしてやっていると思っているんだ」「育児は女の仕事だろ」などと批判や侮辱の言葉を投げられるケースです。
これらの言動はモラハラとみなされ、法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
モラハラを理由とした離婚について、詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
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ケース4:ワンオペ育児から夫婦仲が悪くなり相手が不倫している
ワンオペ育児が原因で夫婦仲が悪くなったことや、出産を機に「妻を女として見られなくなった」ことなどを理由に、相手が不倫に走るケースもあります。不倫は、法定離婚事由のうち「不貞行為」にあたるため、裁判で離婚が認められる可能性は高いです。
ただし、肉体関係がないと基本的に不貞行為とはみなされません。一緒に出掛けたり、手を繋いだりしただけでは、離婚は難しいといえます。
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メールで相談するワンオペ育児で離婚する際に慰謝料は請求できる?
ワンオペ育児だけを理由に、慰謝料を請求することは基本的にできません。慰謝料を請求するには、相手の以下のような言動を証明する必要があります。
- 不貞行為
- DV
- モラハラ
- 生活費を渡さない
- 正当な理由もなく無断で家を出ていき、同居に応じない
- 健康なのに働かない
一方、夫が家事や育児をしないことが原因で離婚を余儀なくされた場合、相手の「不法行為」を根拠に慰謝料請求できる可能性があります。
ワンオペ育児で離婚する際に決めること
離婚時に取り決める項目は、以下のようなものです。
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
- 親権
- 面会交流
- 養育費
なお、「親権」は離婚届に記載するため、必ず離婚時に取り決める必要があります。
それ以外の項目については、離婚成立後に取り決めることも可能です。ただし、離婚後は相手と連絡が取りにくかったり、話し合いでもめたりする可能性もあるため、できるだけ離婚時に取り決めておくことをおすすめします。
また、取り決めた内容は「公正証書」などの書面に残しておきましょう。
ワンオペ育児で離婚する前にできること
ワンオペ育児が原因で離婚しても、離婚後の生活がうまくいくとは限りません。経済的な不安や子供への影響、生活環境の変化など、ひとり親になるリスクはさまざまです。
そのため、離婚ではなく「ワンオペ育児を乗り切る努力」をするのもひとつの方法といえます。例えば、以下のような方法を試みると良いでしょう。
夫婦で話し合う
ワンオペ育児の辛さや苦労について、夫とじっくり話し合うことが重要です。
感情的に怒りや不満をぶつけても、喧嘩になり夫婦仲を悪化させる可能性が高いといえます。そのため、「相手のどんなところに不満があるのか」「具体的に何をしてほしいのか」などの考えを整理し、丁寧に伝えてみましょう。
妻の気持ちがきちんと伝われば、心を入れ替える夫も意外と多いものです。
また、家事や育児の内容をリスト化し、分担表を作成するのも効果的です。自分の役割が明確になれば、夫も家事や育児に取り組みやすくなる可能性があります。
自分の時間を作る
子育て支援などを利用し、定期的に自分1人の時間を作るのもポイントです。例えば、ベビーシッターや一時保育、家事代行サービスなど、ワンオペ育児をサポートする制度はたくさん存在します。
「他人に子供を預けるのは抵抗がある」と思われるかもしれませんが、預け先が保育園や保育士であれば、安心感があるでしょう。
また、掃除ロボットや食洗器などの便利家電を利用し、家事の手間を減らすのも良いでしょう。家事育児に参加しない夫でも、家電の購入であれば同意してくれる可能性があります。
そのほか、食事に総菜や冷凍食品を取り入れ、適度に力を抜くことを心がけましょう。
ワンオペ育児のつらさを聞いてもらう
悩みや不満を吐き出すことで、気持ちが楽になることもあります。
両親や兄弟といった身近な人物であれば、夫には言いづらいことも気軽に相談できるでしょう。
また、ママ友に相談することで、子育てに関する有益な情報や解決策を得られることもあります。
「ママ友の作り方がわからない」「緊張して話しかけられない」という方は、インターネット上のママコミュニティーや地域交流、市区町村の子育て相談窓口などを利用するのもおすすめです。
ワンオペ育児を理由とした離婚を弁護士に相談するメリット
・本気度が伝わる
夫に「離婚したい」と伝えても、まともに取り合ってくれるとは限りません。
弁護士が出ることで、こちらの本気度が伝わり、夫も真剣に向き合ってくれる可能性が高くなります。
・交渉を有利に進められる
弁護士は離婚の進め方を熟知しており、不倫やDVなどの証拠集めにも慣れています。
そのため、自身で対応するよりも有利な内容で離婚できる可能性が高くなります。
・手間や時間を削減できる
離婚手続きでは、離婚協議書の作成や裁判の申立書の作成など、さまざまな手間がかかります。弁護士に依頼すれば、これらの作業をすべて任せられるため、自身の負担を大きく軽減できます。
ワンオペ育児の離婚に関するQ&A
- Q:
ワンオペ育児が限界で子供を連れて家を出た場合、連れ去りになりますか?
- A:
相手の同意を得ず、勝手に子供を連れて家を出た場合、連れ去りの方法や態様によっては違法な連れ去りになる可能性があります。
もっとも、ワンオペ育児のように、同居中にあなたが主として子供の面倒をみてきたのであれば、子供があなたと一緒に暮らすことを拒否しているなど、特別な事情がない限り、違法な連れ去りと判断されることは少ないでしょう。
以下のページでは、子の連れ去りと親権との関係について詳しく解説しています。こちらもぜひ参考になさってください。
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- Q:
ワンオペ育児で家事が疎かになっていることを理由に生活費をもらえなくなりました。婚姻費用の請求はできないのでしょうか?
- A:
相手の収入の方が多い場合、基本的に婚姻費用の請求は可能です。
法律上、ご家庭の生活にかかる費用(婚姻費用)は、夫婦間で分担する義務を負うものと定められています。そして、この婚姻費用の分担義務は離婚が成立するまで生じるので、結婚している限り、相手が負担すべき婚姻費用は請求が可能です。
家事が多少疎かになっても、必要な生活費はしっかり請求しましょう。
- Q:
ワンオペ育児に疲れて離婚した場合に受けられる公的支援制度はありますか?
- A:
離婚後にシングルマザーになった場合、自治体から支援を受けられる可能性が高いです。例えば、以下のような制度があります。
- 児童扶養手当
- 税金の免除
- 家事代行サービス
- 母子生活支援施設
- 公共交通機関の割引
- ひとり親家庭等医療費助成
- 就労サポートプログラム
このように、経済的支援から生活支援、就労支援など幅広いサポートが整備されています。
詳細は自治体によって異なるため、お住いの市区町村にお問い合わせください。
ワンオペ育児で離婚を考えたら、ひとりで抱え込まず弁護士にご相談ください
ワンオペ育児で離婚する場合、できるだけ夫婦の話し合いで解決するのが望ましいといえます。裁判に発展すると、不倫やDVなどほかの離婚事由が必要になるためです。
ただし、単に「離婚したい」と伝えても、無視されたり、まともに取り合ってもらえなかったりする可能性が高いです。思うように離婚手続きが進まず、ストレスも溜まることもあるでしょう。
弁護士であれば、ご依頼者様に代わって相手と交渉できるため、よりスムーズな解決が期待できます。
また、証拠集めにも慣れているので、調停や裁判に発展した場合も安心です。
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メールで相談する- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)