財産分与にかかる税金とは?節税方法も含めた基礎知識
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
財産分与は、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産を離婚時に分け合うことをいいます。
婚姻期間が長ければ長いほど、財産分与の対象となるものが多かったり、高額になったりするかと思います。
では、財産分与をするときに、受け取る側、渡す側それぞれ税金はかかるのでしょうか?
財産を受け取る側は、例外を除いて基本的に税金はかかりません。一方で財産を渡す方は、現金で譲渡する場合、税金はかかりませんが、不動産や有価証券などを譲渡する場合は税金がかかる場合もあります。
本記事では、離婚時の財産分与を受け取る側、渡す側それぞれの税金についてや、節税方法など、「財産分与にかかる税金」について、詳しく解説いたします。
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離婚時の財産分与にかかる税金とは?
財産を受け取る側 | 基本的に税金はかからない(例外あり) |
---|---|
財産を渡す側 | 譲渡所得税(税金が発生しない場合もあり) |
離婚時の財産分与について、財産を受け取った側は基本的に贈与税や不動産取得税などの税金はかかりません。
ただし、例外的に、極端に一方が多くなるような分与の仕方をすると財産分与ではなく贈与とみなされて贈与税がかかる可能性があります。そのほかにも、慰謝料がわりに不動産をもらうと不動産取得税がかかる可能性もあります。
一方で財産を渡す側は、不動産を譲渡した場合は譲渡所得税が発生する場合があります。
財産分与した不動産の時価が購入時よりも値上がっている場合に譲渡所得税がかかります。不動産が値下がりしている場合には、譲渡所得税は発生しません。
財産を受け取る側の税金
離婚する際に、相手から財産を受け取る側については、基本的に税金はかかりません。
理由としては、財産分与は、新しく取得したものではなく、夫婦が共同生活をしていくなかで協力しあって形成した財産関係の清算や離婚後における生活保障のための財産分与請求権に基づいて相手から給付を受けたものと考えられるからです。
贈与税
贈与税とは、個人から金銭や不動産などの財産を譲り受けたときに納付する税金をいいます。
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産を清算するのであって、新たに財産を取得するわけではないため、贈与にあたらず、贈与税は発生しません。
ただし、例外的に、贈与税が発生するケースもあります。具体的には、財産分与で得た財産が極端に多額な場合などは贈与税が課される可能性があります。
税金逃れのための離婚の場合は贈与税が課される
財産分与により財産を受け取る側には基本的に税金がかからないことを利用し、税金の支払いから逃れようと、形式的に離婚するという夫婦もいます。このような場合、財産分与ではなく贈与として扱われ、財産を受け取る側に贈与税が課せられることになります。
不動産取得税
不動産取得税とは、購入や贈与によって新たに不動産を取得したときに一度だけ支払わなければいけない税金をいいます。
離婚時の財産分与で不動産を取得した場合は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産を清算するのであって、新たに財産を取得するわけではなく、元々自分がもっていた財産の名義変更をしただけと考えられるため、基本的に不動産取得税は課税されません。
ただし、離婚時に「慰謝料」や「扶養」として不動産を受け取った場合は、不動産取得税が課税される可能性があります。
なお、財産分与で不動産を取得する場合、ほかにかかる税金として、不動産の名義変更の際に支払う「登録免許税」と不動産を所有している者が支払う「固定資産税・都市計画税」がかかります。
財産を渡す側にかかることがある税金
財産分与として土地・建物などの不動産や、株式・債権などの有価証券、ゴルフの会員権などを譲渡したときに「譲渡所得税」がかかる場合があります。
財産分与時の価格が購入したときより価値が上回っている場合に譲渡所得税が課せられることになります。
一方で、財産分与時の価格が購入したときより価値が下回っている場合は、譲渡所得は課税されません。
財産分与として現金を分与する場合は、取得したときと譲渡したときの価値について、変動がないと考えられるため、譲渡所得税はかかりません。
譲渡所得税の算出方法
譲渡所得税の算出方法は、課税譲渡所得金額に一定の税率をかけて計算します。
具体的な計算式は・・・
課税(長期または短期)譲渡所得金額=財産分与時の時価-(取得費用+譲渡費用)-特別控除
となります。
取得費用は、不動産の購入金額、購入手数料、土地の改良費などになります。
譲渡費用は、仲介手数料、測量費、契約書の収入印紙代などになります。
マイホームを売却した際に適用される特例にあてはまるときは特別控除額が差し引かれます。
所得税と住民税は、長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日から所有期間が5年を越せるもの)、短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日から所有期間が5年以下のもの)によって異なり、税率は次の表のとおりとなります。
種類 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
なお、2037年までは、上記所得税に復興特別税が加算されるため、長期譲渡所得は所得税と住民税を足して20.315%、短期譲渡所得は39.63%の税金が課せられます。
財産分与時の節税方法
財産分与時の節税対策について、いくつか方法があります。
具体的に、次項より解説いたします。
必要以上の財産をもらいすぎない
夫婦間で同意のうえで決めた財産分与の割合でも、極端に多く分与していると判断されると贈与税が課せられるおそれがあります。
贈与税を発生させたくないのであれば、客観的にみて適度な割合で財産分与するように心掛けましょう。
もし、夫婦間の事情や離婚の経緯を考慮して、多く分与したい場合は、弁護士や税理士に相談するようにしましょう。
なるべく現金や預貯金で行う
現金以外で財産分与すると、譲渡所得税や不動産所得税、登録免許税、固定資産税・都市計画税などが課せられます。
現金で財産分与をすると、税金はかかりませんので、節税対策になります。
ただし、現金が高額になりすぎると、贈与税が課せられるおそれがありますので注意が必要です。
控除制度を利用する
財産を渡す側、財産を受け取る側、それぞれ条件を満たせば控除制度を利用できます。
財産分与が離婚する前か後かでどのような控除を受けられるか異なりますので、注意が必要です。
下記の表でわかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
制度名 | 内容 | 条件 |
---|---|---|
特別控除 | 3000万円までの譲渡所得税が免除になる |
|
所得軽減税率の特例 | 譲渡所得税の税率軽減を受けることができる |
|
制度名 | 内容 | 条件 |
---|---|---|
配偶者控除 | 基礎控除110万円のほかに最高2000万まで贈与税が免除になる |
|
基礎控除 | 年間110万円以下の財産を受け取る場合、贈与税が免除になる | 特になし |
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メールで相談する財産分与時の税金に関するQ&A
- Q:
財産分与時の税金はいくらからかかりますか?
- A:
財産分与を受ける側の方は、基本的に贈与税などの税金はかかりません。
例外的に贈与税が課せられても、基礎控除が年110万円まで認められているので、110万円までの贈与であれば非課税です。財産を渡す側の方は、現金で財産分与する場合は所得税などの税金はかかりません。
しかし、不動産、有価証券、ゴルフの会員権などを譲渡したときは譲渡所得が課せられる場合もありますが、財産分与時の価格が購入したときの価格より上回っているケースに限られていますので、一概にいくらから税金がかかるとはいえません。
- Q:
離婚時の財産分与でマイホームの名義変更をした場合、譲渡所得税や不動産取得税はかかりますか?
- A:
マイホームを名義変更した場合、マイホームを渡す側に対して、財産分与時のマイホーム価格が、マイホームを取得したときの価格を下回れば、譲渡所得税は課税されません。
一方で、財産分与時のマイホーム価格が、マイホームを取得したときの価格を上回れば、差額に対して課税されます。
ただし、居住用不動産の場合は3000万円までの特別控除がありますので、差額が3000万円以内であれば譲渡所得税はかかりません。
次に不動産取得税ですが、財産分与による名義変更は、新たにマイホ-ムを取得したわけではなく、夫婦が婚姻期間中の一緒に築き上げた財産の清算だと考えられますので基本的に課税されません。
ただし、財産分与ではなく、慰謝料や、相手の今後の生活を援助するために不動産を譲渡したと判断された場合は不動産取得税がかかる可能性があります。
- Q:
離婚後、配偶者名義の住宅にそのまま住み続け、将来子供名義に変更した場合、贈与税はかかりますか?
- A:
子供名義に変更すると、贈与とみなされ、贈与税が課せられます。税率は最低でも10%、最高で55%になります。
ただし、親子間の贈与には、「暦年贈与」、「相続時精算課税制度」、「居住用不動産の購入資金贈与」、「教育費資金贈与」、「結婚子育て資金贈与」と様々な贈与税の控除制度があります。うまく利用すれば、ある程度まで節税は可能となり得ます。
名義変更せずに配偶者名義の住宅のまま住み続けると、勝手に住宅を売却されるおそれもありますし、財産分与だと非課税ですので、夫婦間で名義変更したほうが税金対策とリスク対策になるのではないでしょうか。
財産分与の税金について気になる方は弁護士にご相談ください
離婚時の財産分与では、財産を受け取る側は、基本的に税金はかかりません。
ただし、財産分与の分け方次第では、贈与税がかかってしまうおそれもあります。
一方で財産を渡す側は、譲渡所得税がかかる場合もあります。
「自分自身が離婚すると、税金はかかるのだろうか?」「どのくらい税金はかかるのだろうか?」とご心配な方は、財産分与する前に、ぜひ弁護士にご相談ください。
どのような財産をどのように分けるか、家庭ごとの事情を伺い、適切にアドバイスいたします。
また税金だけでなく、財産分与の分け方に不満のある方も弁護士にご依頼いただければ、代わりに相手と直接交渉することも可能ですので、納得のいく財産分与ができるように尽力します。
財産分与は、離婚後に安定した生活を送るためにとても重要なものです。
財産分与やかかる税金でお悩みの方は、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)