離婚裁判で負ける理由とは?有利に進めるためのポイントとは
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
夫婦間での話し合い(協議離婚)や離婚調停を行っても離婚問題について解決できなかった場合は、最終的に離婚裁判で決着をつけることになります。
協議離婚や離婚調停のような話し合いの手続きとは違い、離婚裁判では一切の事情を考慮して、裁判官が離婚の可否や離婚条件などについて判断を下します。
よって、ご自身の不利な内容の結果になることもあり、離婚裁判で負けてしまう可能性もあります。
では、そもそも離婚裁判に負ける理由にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで本記事では、
・離婚裁判で負ける理由とは?
・離婚裁判で負けたら離婚はできないのか?
・離婚裁判で有利に進めるためのポイント
など、主に「離婚裁判で負ける理由」について詳しく解説していきます。
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離婚裁判で負ける理由とは?
離婚裁判とは、夫婦間での話し合いや離婚調停で離婚問題を解決できなかった場合に、最終手段として裁判官の判決によって強制的に離婚を目指す手続きです。
しかし、離婚裁判を行ったからといって必ずしも離婚が認められるとは限らず、離婚裁判に負けてしまう場合もあります。
離婚裁判で負ける主な理由は次の4つが挙げられます。
- 法定離婚事由に該当しない
- 主張や証拠が不十分である
- 相手が弁護士を立てている
- 離婚原因を作った方からの離婚請求だから
次項でそれぞれ詳しく解説していきましょう。
離婚裁判の基礎知識について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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法定離婚事由に該当しない
離婚裁判で離婚を認めてもらうには、夫婦間に離婚が認められる理由(法定離婚事由)があることが必要です。
具体的には、民法770条1項で定められている次の5つのいずれかにあてはまる必要があります。
- (1) 配偶者に不貞な行為があったとき
- (2) 配偶者に悪意で遺棄されたとき
- (3) 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- (4) 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- (5) その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上記の法定離婚事由をみてわかるとおり、離婚原因の代表的なものである“性格の不一致”や“価値観の違い”などの理由は、それだけで離婚が認められる事情ではなく、婚姻関係を継続しがたい重大な事由があるかどうか判断する際の事情のひとつという位置づけになります。
法定離婚事由に該当しないのであれば、離婚裁判を行っても、離婚は認められず、負けてしまうというわけです。
離婚原因について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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主張や証拠が不十分である
離婚裁判では、法定離婚事由にあてはまる事情があることを裏付ける客観的な証拠が必要になります。
離婚裁判は、証拠によって事実を認定していきます。
主張や証拠が不十分であると「そのような事実があったと認定できない」と判断されてしまいます。
例えば、相手の浮気・不倫(不貞行為)を理由に離婚を求めて離婚裁判をした場合、「証拠はないけど女の勘で浮気していると確信している」、「知らない異性の人と電話していたので浮気していると思う」といったようなケースでは、証拠不十分として離婚は認められず、負ける可能性が高いといえます。
相手が弁護士を立てている
離婚裁判では、専門的な法律知識が要求されます。
また、離婚問題に強い弁護士は専門知識だけでなく、証拠の集め方、法律文書の作成、有利に進めるポイントなど離婚問題に関する様々なノウハウをもっています。
そのため、ご自身だけで離婚裁判を進めているのに対して、相手が弁護士をつけて離婚裁判に挑んでいる場合は、圧倒的に不利になってしまいます。
本来、勝訴できる事案であっても、十分な主張や証拠の提出ができなかったことや反論できなかったことにより負けてしまう可能性もあります。
相手が弁護士を立てている場合は、こちらも弁護士を立てて進めることを強くお勧めします。
離婚原因を作った方からの離婚請求
離婚裁判では、通常有責配偶者からの離婚請求は認められません。
有責配偶者とは、離婚原因を作った責任のある配偶者です。
例えば、夫婦のうち浮気をした側の配偶者、暴力をふるった側の配偶者、勝手に別居をして生活費を入れなくなった側の配偶者などが挙げられます。
有責配偶者ではない他方の配偶者が離婚を拒否している場合、有責配偶者が自ら裏切り行為をしたうえ離婚を求めるのは身勝手すぎて原則許されるべきではないと考えられています。
よって、他方の配偶者が離婚を拒否している限りは、離婚裁判では離婚は認められず、負けてしまいます。
有責配偶者からの離婚請求について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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有責配偶者からの離婚請求が認められなかった判例
東京地方裁判所 平成12年5月9日判決
事案の概要
夫である原告が、妻である被告が婚姻当初から常識を越えた浪費を継続しており、「婚姻を継続し難い重大な事由」があり、婚姻生活は既に破綻していると主張して離婚を求めた事案です。
なお、原告は、愛人関係にある女性と同棲して、2人の子供を設けて認知している状態です。
裁判所の判断
原告は、被告との婚姻関係を継続していて被告の浪費について原告被告間で格別の問題とされてもいなかった時期にすでに愛人がいたこと、愛人の存在を被告に打ち明けて別居して愛人と同棲していることから、婚姻関係が破綻した原因は原告の不貞行為であり、原告は有責配偶者であるとしました。
また原告が愛人と関係をもったころに、被告の浪費が原因で原告と被告との婚姻関係が継続し難い客観的な状況にあったということはできないとしました。
原告と被告は、一時単身赴任はあったものの、婚姻後約22年にわたって同居して婚姻関係を継続し、別居期間はいまだ2年7~8ヶ月程度にすぎず、また原告と被告の間には中学生を含む2人の未成熟子がいる事情を考慮すると、原告の請求は信義に反し許容されないものというべきであるとして、原告の請求を棄却し、離婚を認めませんでした。
離婚裁判で負けたら離婚はできない?
離婚裁判で負けたら、離婚は認められないということですので離婚はできません。
しかし、離婚裁判での判決結果に納得がいかなければ、控訴できます。
控訴とは、第一審の判決に対して不服がある場合に上級裁判所に対して、その判決の確定を遮断して新たな判決を求める不服申立てをいいます。
控訴する理由として、第一審の事実認定の誤りや法解釈の誤りがある場合だけでなく新たな証拠が見つかった場合もあり得ます。
ただし、控訴は判決を言い渡されてからいつでも提起できるわけではありません。
判決書を受け取った日の翌日から2週間以内に高等裁判所宛ての控訴状を作成して離婚裁判を行った家庭裁判所に提出します。
さらに、控訴状に原判決の不服理由を記載しなかった場合は、控訴状提出してから50日以内に控訴理由書を提出する必要があります。
したがって、離婚裁判で負けた場合は、2週間以内に控訴するかどうかを検討して、控訴を提起して控訴理由書を提出すれば、離婚に関して再審理を求めることができます。
離婚裁判で離婚できる確率
判決 | 認容 | 2699件 |
---|---|---|
棄却 | 319件 | |
却下 | 6件 | |
判決合計 | 3027件 | |
和解 | 2927件 | |
取下げ | 1890件 | |
その他 | 214件 | |
既済件数合計 | 8058件 |
参考:https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2024/20240515jinsogaikyou_r5.pdf
上記表のとおり、最高裁判所が公表している令和5年度の人事訴訟事件の概況をみると、離婚裁判になった8058件のうち、判決の合計数は3027件、判決のうち離婚が認容されたのは2699件となっています。
判決まで進んだ場合は、89%という高確率で離婚が認められていることがわかります。
しかし、離婚裁判の中で和解による離婚で終了しているのが2927件もあり、離婚裁判で離婚できる確率は一概に示せないのが実情です。
離婚条件で負ける可能性もある
離婚裁判で離婚が認められても、判決で不利な離婚条件を言い渡されることもあります。
離婚条件に納得できない場合は、離婚が認められても実質的に「負けた」ことになり得ます。
例えば、離婚裁判で次のような離婚条件になり、負けたと感じるケースです。
- 慰謝料の支払いが認められなかった
- 希望する金額での財産分与を得られなかった
- 親権を獲得できなかった
- 希望する金額の養育費を得られなかった
- 希望する面会交流の内容が認められなかった など
離婚裁判で勝つには?有利に進めるためのポイント
離婚裁判で勝つために、次のとおり5つのポイントをご紹介します。
- 有力な証拠を用意する
- 長期間の別居をする
- 陳述書を作成・提出する
- 和解離婚を検討する
- 離婚問題に強い弁護士に依頼する
次項よりそれぞれ詳しく解説していきましょう。
有力な証拠を用意する
離婚裁判を有利に進めるためには、自分の主張を裏付ける証拠が必要です。
相手の浮気・不倫(不貞行為)やDV・モラハラなどの有責行為が原因で離婚を求めているのであれば、次のような証拠が有用です。
●相手の浮気・不倫(不貞行為)が原因で離婚請求している場合
- ラブホテルを出入りしているときの写真、動画データ
- 不倫していると推測できる内容のメールやLINEのやりとり
- 不倫を認めている音声データ、自認書 など
●相手のDV・モラハラが原因で離婚請求している場合
- 外傷を負ったり、精神疾患を患ったりしていることがわかる医師の診断書、受診記録
- 警察や公的支援機関などに相談した事実がわかる相談記録
- DVされているときやモラハラ発言をされているときの音声データ、動画データ
また、離婚条件に関しては次のような証拠も有効です。
●親権について
子供を常に養育・監護していることがわかる写真や動画、母子手帳 など
●養育費について
源泉徴収票や確定申告書など収入がわかる資料
●財産分与について
預金通帳の写しや残高証明書、固定資産評価証明書などの共有財産がわかる資料
●年金分割
年金情報通知書、年金証書など年金情報がわかる資料
長期間の別居をする
不貞行為や悪意の遺棄などといった直接的な法定離婚事由がなくても、長期間の別居をすると、夫婦関係はすでに破綻しているとみなされて、法定離婚事由のひとつである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまり、離婚裁判で離婚が認められる可能性があります。
具体的にどの程度の別居期間があれば、離婚裁判で認められるかは、同居期間と別居期間の対比や夫婦の年齢など個別の事情によって異なりますが、およそ3年~5年程度だと離婚が認められやすいといわれています。
したがって、離婚裁判を有利に進めたいのであれば、長期間の別居をすることが得策です。
離婚前の別居について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください
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陳述書を作成・提出する
陳述書を作成・提出することも離婚裁判を有利に進めるポイントのひとつになります。
陳述書とは、自分の言い分を記載した書面のことで、事実(出来事)の証明をすることを目的として作成します。離婚裁判の証拠としても扱われます。
例えば、離婚原因の存在、夫婦関係が破綻した原因が相手にある事情、親権者として自分自身がふさわしい事情など離婚裁判の争点となっていることを記載します。
陳述書を提出することで、裁判官に細かい事情を伝えられ、離婚裁判の争点を理解してもらいやすくなります。
陳述書の書き方と注意点について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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和解離婚を検討する
判決に至る前に裁判所から和解の勧告を受けることがよくあります。
離婚裁判は、長い時間を要することが多く、精神的負担も大きいものです。
精神的負担から一刻も早く解放されて、できるだけ早くに解決を望むなら和解離婚も視野にいれましょう。
和解離婚とは、離婚裁判中に和解によって離婚を成立させることをいいます。
判決を待たずして早期に離婚に関する争いを解決することができ、内容も柔軟に決めることができます。
裁判が進んでいくと、判決の見込みや落としどころがわかってきます。
裁判が不利に進んでいると感じた際は、離婚裁判で負けてしまうと不利な条件で離婚することもあり得るので、なるべく有利な条件にするために和解離婚を受け入れることも検討すべきです。
和解離婚について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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離婚問題に強い弁護士に依頼する
離婚裁判を勝つためには、離婚問題に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士に依頼して離婚裁判を進めると次のようなメリットが挙げられます。
●離婚原因の存在を法的に主張・立証できる
離婚裁判では、法定離婚事由がなければ勝てません。
弁護士であれば法律的知識と豊富な経験をもとに法的観点から法定離婚事由を主張・立証して有利に進められる可能性が高まります。
●代わりに弁護士が必要書類の作成・提出、裁判所への出廷などを行ってくれる
離婚裁判において自分で書面を作成するのは、なかなか難しいものです。
弁護士であれば、訴状、準備書面、証拠など必要に応じた書面を作成して提出してくれます。
そのほかにも代わりに裁判所に出廷してくれますので、時間や労力・手間が大幅に削減できます。
●精神的負担を軽減できる
弁護士が近くにいてくれることで、相手の主張への反論や法的な疑問、裁判の進み方などをその都度助言してもらえます。また弁護士が絶対的な味方でいてくれるという安心感が得られるのも大きな強みになります。
弁護士の適確な主張により、裁判で離婚が認められた事例
事案の概要
妻である相手方が、不貞を疑い続ける、宗教がらみの言動で困惑させるなどの行為を続けるため、夫である依頼者は離婚を強く希望してご相談に来られました。
弁護士方針・弁護士対応
離婚調停不成立後の依頼だったので、担当弁護士は離婚裁判を提起することにしました。
離婚理由が性格の不一致の範疇に留まるとみられ、受任時点では別居してまだ半年ほどだったため、離婚裁判で勝てないのではないかという懸念がありました。
しかし、相手方の言動が具体的に依頼者に精神的苦痛を与えていた状況を丁寧に主張したり、相手方の調停不出席などの経緯を問題解決に消極的であるとして主張するなどの工夫を重ねました。
結果
判決時点で別居して1年4ヶ月強程度でしたが、離婚が認められました。
その後、相手方より控訴されましたが控訴棄却となり、離婚判決が確定して、無事に離婚が成立しました。
裁判離婚に関するQ&A
- Q:
離婚裁判の費用は誰が払うのでしょうか?敗訴した側が負担しなければなりませんか?
- A:
離婚裁判には、次の2つの費用が発生します。
- 弁護士に依頼した場合に弁護士に支払う「弁護士費用」
- 裁判所に支払う「裁判費用」
弁護士費用は勝訴・敗訴にかかわらず、基本的に自己負担しなければならない費用です。
相手に請求もできません。裁判費用は、離婚裁判を提起する際に裁判を起こす側である原告が一旦負担します。
その後、判決まで進むと裁判所が費用の負担割合を決めます。
最終的には、裁判所が決めた負担割合に応じて裁判費用を負担することになります。
一般的に裁判に負けた側の負担割合が多くなります。
- Q:
離婚裁判でモラハラ配偶者に勝つためのポイントはありますか?
- A:
モラハラはDVとは異なり、外傷などがなく、明らかに目に見えるものではないので第三者に証明するのが困難です。
離婚裁判でモラハラ配偶者に勝つためには、ひとつでも多くのモラハラ証拠を集めて、夫婦関係がすでに破綻しているとみなされて、法定離婚事由のひとつである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することが重要なポイントです。
具体的には、モラハラが原因で離婚裁判したときに有効となる証拠は次のものが挙げられます。
- モラハラを受けたことを記載した日記やメモ
- モラハラ配偶者の言動を録音・撮影したもの
- モラハラを受けて精神疾患を患った事実がわかる医師の診断書、通院履歴
- 警察や行政機関にモラハラ被害の相談をした相談記録 など
モラハラの証拠として有効なものは、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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- Q:
相手が離婚裁判で嘘をつく場合の対処法はありますか?
- A:
相手が離婚裁判で嘘をついたとしても、何ら証拠もなく、「相手が主張した内容は嘘です」と伝えても説得力がありません。
よって、相手が離婚裁判で嘘をついたときの対処法として、相手の主張が嘘であると示す証拠を集めて提出する手段が有用です。通常、相手とご自身の言い分が対立しているので、ご自身の主張が正しいことについて証拠を用いて証明できれば、相手の言っていることが嘘だと自動的に証明できます。
そして、なるべく多くの証拠を集めて自分の主張を補強するのがポイントです。個別の事情によって必要となる証拠は異なるので、弁護士にどのような証拠を集めて、法的な主張をどのように組み立てるのか相談しながら進めることをお勧めします。
離婚裁判で後悔しないためにも、弁護士に依頼することをおすすめします
離婚裁判では、法定離婚事由の有無や主張立証する内容によって、離婚裁判の勝ち負けが決まります。
離婚裁判は、高度な法律の知識が必要になり、とても複雑かつ専門的な手続きになります。離婚裁判を適切に進め、負けないためにも弁護士へ依頼することをお勧めします。
弁護士法人ALGでは、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。
離婚裁判に負けて後悔しないために、まずは弁護士法人ALGにお問合せください。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)