内縁関係とは|認められる条件や証明方法、解消の手続きなど
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
個人の意識や時代の変化に伴い、夫婦の在り方も多様になっており、婚姻届を提出せずに事実婚状態を続けるカップルも少なくありません。
事実婚状態のカップルをいわゆる「内縁関係」と呼びます。
ただし、長く一緒に住んでいるからといって、必ずしも内縁関係と認められるわけではありません。
また、法律婚であれば戸籍を確認すれば夫婦である事実が明確ですが、内縁関係にあることはどのように証明すればいいのでしょうか?
そこで、本記事では・・・・
・内縁関係が認められやすい条件
・内縁関係を証明する方法
・内縁関係の解消と必要な手続き
など、「内縁関係」に関して、詳しく解説いたします。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0078-6009-3006
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メールで相談するこの記事の目次
内縁関係とは
内縁関係とは、法律上の婚姻手続きはしていないものの、実態的には法律上の夫婦と変わらない結婚生活を送っている関係をいいます。
内縁関係にある夫婦として認められるには、社会生活上、事実上の婚姻関係としての実質が必要です。
具体的には次の2つの要件を満たしている場合です。
- ① お互いに婚姻の意思がある
- ② 一定期間同居して夫婦同然の共同生活を送っている
一定期間の同居とは、法律上の明確な定めはありませんが、基本的に3年程度と考えられています。
しかし、同居期間だけで判断されるわけではなく、婚姻の意思が認められる客観的事情や共同生活の実態などから総合的に判断するとされています。
内縁関係が認められやすい条件
法的に内縁関係が成立しているといえるかどうかは、最終的には裁判所の判断によります。先ほど紹介した2点について、どのような状況なら内縁関係が認められやすいか確認してみましょう。
まず、①の“婚姻の意思がある”というのは、お互いに「結婚しよう」という意思を持っているということです。例えば、次のようなケースでは、婚姻の意思があると認められやすいでしょう。
- 結婚式を挙げている
- 親族や知人に「妻」や「夫」として紹介している
次に、②の“夫婦同然の共同生活”が認められるかどうかは、家計を同一にしている、日常生活を一緒に過ごしている等の事情から判断されます。別居している場合は、仕事の関係などでやむを得ないものでなければ、共同生活と認められるのは難しいです。
内縁関係を証明する方法
内縁関係を証明するには、「婚姻の意思」と「夫婦同然の共同生活」があったことの2点が認められるかが重要になってきます。
具体的な証明方法としては、次のような書類を証拠にして、内縁関係を証明していくという方法が考えられます。
- 賃貸借契約書(同居人の続柄の欄に「内縁の妻」や「妻(未届)」などと記載されているもの)
- 健康保険証(被扶養者になっている場合)
- 住民票(続柄の欄に「妻(未届)」などと記載されているもの)
内縁関係の証明方法について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
内縁関係と法律婚の違い
内縁関係と、婚姻届を提出して法律上の婚姻関係を結んでいる法律婚とを比べると、次のようないくつかの違いがあります。
内縁関係 | 法律婚 | |
---|---|---|
名字の変更 | 変更なし | 変更あり →戸籍の筆頭者になる方の名字に変更される |
法定相続人 | 法定相続人になれない | 法定相続人になれる |
子供と父親の関係 | 当然には法律上の父子関係は生じない →生じさせるには「認知」が必要 |
当然に法律上の父子関係が生じる |
名字の変更や住民票
法律婚の場合、婚姻届を提出することで、夫婦の新しい戸籍が作られます。そして、戸籍の筆頭者になった方の姓に統一されます。つまり、一方の名字が変わるということです。
対して、内縁関係の場合、婚姻届は提出していないため、戸籍に変動はありません。そのため、どちらの名字も変わらず、別姓のままとなります。
なお、住民票上の記載を、内縁関係がわかるように変更してもらうことは可能です。具体的には、どちらか一方を世帯主にして、他方の続柄を「妻(未届)」や「夫(未届)」にするといったかたちです。
生まれた子供と父親の関係性
内縁関係にある夫婦の間に生まれた子供は「非摘出子」となります。
戸籍は、母親を筆頭者とする新しい戸籍を作り、子供は母親の戸籍に入って母親の姓を名乗ることになります。
父親の欄は空欄となって、法律上の親子関係はありません。
親権についても、母親が持つことになります。
父親と子供との法律的な親子関係を成立させるには、「認知」の手続きをする必要があります。
お住まいの役所で認知届を提出すれば、認知は成立して父親欄に父親の氏名が記載されます。
ただし、認知をしてもあくまで父子関係が明らかになるだけであって、子供の戸籍は母親の戸籍に入ったままで、姓も母親と同じままとなります。
子供の戸籍や姓を変更したい場合には、認知が成立したあとに家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」の手続きをする必要があります。
子供の認知について、下記ページでさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
遺産相続
内縁関係の夫(妻)は、法律上の婚姻関係を結んでいないため、夫婦同然の関係であっても遺産を相続する権利はありません。
遺産を受け取れるようにするためには、生前贈与や遺贈による方法が考えられます。
ただし、他に相続人がいる場合には、最低限相続人に保障された財産の取り分をいう「遺留分」を侵害しないように気をつける必要があります。
また、内縁関係にある夫(妻)に他に相続人がいない場合は、家庭裁判所に「特別縁故者の申立て」を行って、家庭裁判所に被相続人と特別な関係にあった“特別縁故者”に該当し、相続財産を分与するのが相当と認められると家庭裁判所が決定した額を受け取れます。
なお、内縁関係にある夫婦の間に生まれた子供は、父親が認知していれば法定相続人になりますが、認知していなければ、法律上の親子関係が存在しないため相続権はありません。
内縁関係の解消と必要な手続き
法律上の婚姻関係を結んでいる夫婦は、離婚届を提出する必要がありますが、内縁関係の解消にあたっては、必要な手続きはありません。
内縁関係は2人の合意があれば、すぐさま内縁関係を解消できます。
一方が内縁関係の解消に同意しない場合や、内縁関係解消に伴い条件調整が必要な場合などには、家庭裁判所に内縁関係調整調停を申し立てて、調停委員を介して話し合いでの解決を目指すことになります。
内縁関係にある夫婦は、「結婚に準ずる権利や義務を有する」とされていますので、内縁関係を解消する際は、離婚と同様に財産分与や養育費、慰謝料などを請求できる場合があります。
次項で、それぞれ詳しく解説していきます。
財産分与
離婚するときには、結婚している間に夫婦が協力し合って築いてきた財産(共有財産)を分配し合う、財産分与が可能です。
この点、内縁関係を解消するときも同様に、財産分与が可能です。
実際、離婚時の財産分与の規定を類推適用するとした裁判例もあります。
内縁関係を解消する際の財産分与について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
養育費
内縁関係にある夫婦の間に生まれた子供を内縁の夫が認知している場合、養育費を請求できます。
認知していなければ、内縁の夫と子供は法律上の父子関係が認められないため扶養義務を負いませんので、養育費は請求できません。
内縁の夫が認知しないときには、家庭裁判所に認知請求を行って認知を擬制してもらったうえで養育費を請求する流れになります。
内縁関係を解消する際の養育費について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
内縁関係でも慰謝料請求ができるケース
内縁関係にある夫婦には、法律婚に準ずる権利や義務があります。
よって、次のようなケースでは慰謝料請求ができます。
- 不貞行為があった
- 内縁関係を一方的に解消された
次項で、それぞれ詳しく解説していきます。
内縁の夫(妻)に慰謝料請求する方法について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
不貞行為があった
内縁関係を解消する原因として多いのが不貞行為があったケースです。
不貞行為とは、夫婦にある貞操義務に反して、配偶者以外の者と肉体関係をもつことをいいます。
不貞行為という不法行為によって、精神的苦痛を受けた場合には、内縁の配偶者や浮気相手に慰謝料請求できます。
内縁関係にある夫婦は、法律婚と同様にお互いに貞操義務をもっているため、内縁の夫(妻)以外の者と肉体関係をもつと不貞行為となり、慰謝料請求ができます。
内縁関係を一方的に解消された
内縁関係の場合も、法律婚の場合と同じように、正当な理由なく関係を解消されたら、慰謝料を請求できます。
どのような事情が“正当な理由”になるのかというと、民法で離婚理由として定められている内容に準じる事情が、正当な理由であると考えられています。具体的には次の5つです。
- ①内縁の相手に不貞行為があった
- ②内縁の相手から悪意の遺棄をされた
- ③内縁の相手の生死が3年以上明らかでない
- ④内縁の相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- ⑤その他、内縁関係を継続し難い重大な事由がある
こうした事情もなく一方的に内縁関係を解消された場合には、不当に内縁関係を解消されたとして、慰謝料を請求することが可能です。
内縁の夫(妻)への慰謝料請求について、詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
法律婚と内縁関係を並行している場合の注意点
ほかの人と法律婚をしていながら、並行して内縁の夫婦関係にあることを「重婚的内縁」といいます。
法律上で重婚は禁止されているため、外観上重婚同様の関係にある重婚的内縁の関係の場合、法律婚や一般的な内縁関係のような法的保護は受けられません。
よって、重婚的内縁の関係を解消しても財産分与や慰謝料請求といった一定の保護は受けられない点に注意が必要です。
ただし、重婚的内縁であっても、法律婚が事実上離婚しているのと変わらないといえる状態であれば、例外的に法的保護の対象となり得ます。
合わせて読みたい関連記事
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0078-6009-3006
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メールで相談する内縁関係に関するQ&A
- Q:
-
内縁関係が認められるために、同居期間は何年必要ですか?
- A:
-
内縁関係が認められるために必要な同居期間として、一般的な目安は3年程度といわれています。
しかし、「同居期間の長さ」は内縁関係が認められるための一つの判断要素にはなるものの、「親族や知人、職場の人から夫婦と認識されているかどうか」や「結婚式等の儀式の有無」といった、その他の具体的な事情も総合的に考慮したうえで、内縁関係にあるといえるかどうかを裁判所は判断します。
そのため、どれくらいの同居期間があれば内縁関係が認められる、と一概に言うことはできません。たしかに、同居期間が長い方が内縁関係と認められる可能性は高まりますが、同居期間が短くても内縁関係と認められる場合もあれば、反対に同居期間が長くても内縁関係とは認められない場合もあり、ケースバイケースとなります。
- Q:
-
内縁関係でも遺族年金は受け取れますか?
- A:
-
内縁関係でも、遺族年金を受け取れる可能性があります。
ただし、受け取るためには、受給要件を満たす必要があるので注意しておきましょう。遺族年金は、亡くなった方が加入していた保険の種類によって、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分けられます。いずれも、法律によって、配偶者・夫・妻には、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする、と定められていますので、内縁関係にあたる者も受け取れる可能性があります。
そもそも、遺族年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族が受け取るお金です。
内縁関係で遺族年金を受け取るには、内縁の夫(妻)によって生計を維持されていたことに加えて、内縁関係にあったことを証明する必要があります。
- Q:
-
内縁の妻(夫)を扶養に入れることはできますか?
- A:
-
要件を満たせば、内縁の妻(夫)を健康保険や厚生年金保険といった社会保険の扶養に入れることは可能です。
他方で税法上の配偶者控除や扶養控除といった扶養は、法律上婚姻をしている配偶者である必要があるため内縁関係にある妻(夫)は対象外です。なお、内縁関係の夫婦の間に生まれた子供に対して、被保険者である内縁の夫が認知していれば、法律的な親子関係が成立していますので、基本的に社会保険の扶養に入ることや扶養控除の対象になります。
- Q:
-
内縁関係だと児童扶養手当をもらえませんか?
- A:
-
児童扶養手当は、ひとり親家庭における児童の福祉を図ることを目的とした手当です。
そのため、事実上の婚姻関係(内縁関係)が継続している限り、児童扶養手当の支給の対象にはならないとされています。また、離婚したとしても、元配偶者と同居し続けている場合には内縁関係にあるとみなされ、児童扶養手当はもらえない可能性が高いといえます。
内縁関係のトラブルは離婚・男女問題に強い弁護士にご相談ください
内縁関係の夫婦には、法律婚の夫婦以上にトラブルが起こりやすく、法律上の取り扱いも複雑になります。
特に内縁関係を解消するときにトラブルになるケースが多く、「内縁関係だけど財産分与や養育費、慰謝料などを請求したい」、「内縁関係を解消したいのに相手が同意してくれない」といったご相談が寄せられます。
自己判断で行動すると不利益を被るおそれがありますので、法律の専門的知識や経験をもつ弁護士に相談して解決を図ることをお勧めします。
弁護士法人ALGは、多数の離婚・男女問題を解決してきた実績を持ちあわせています。
ぜひ、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0078-6009-3006
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メールで相談する- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)
弁護士法人ALG&Associates 事務所情報
お近くの事務所にご来所いただいての法律相談は30分無料です。お気軽にお問い合せください。
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
- 関連記事