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養育費の時効は基本5年!止める方法、過ぎた場合についても解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

養育費は子供の成長に欠かせないため、未払いがあれば相手にしっかり請求することが重要です。

ただし、養育費の請求には「時効」があるため、いつまでも放置しておくのは危険です。「後でまとめて請求しよう」などと考えていると、時効が成立して適正額を受け取れなくなるおそれがあります。
そのため、未払いが発覚したら早めに行動するのがポイントです。

本記事では、養育費の時効期間や時効が迫っている時の対応、注意点などを詳しく解説していきます。ぜひ参考になさってください。

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養育費の時効とは

養育費の時効は、「5年」または「10年」が基本です。
これらの期間を過ぎると、未払いの養育費があっても相手に請求するのは難しくなります。そのため、支払いが滞り始めたら早めに対処するのがポイントです。

時効に差があるのは、養育費の取り決め方法によって時効期間が異なるためです。
大まかには、「夫婦の話し合いで取り決めたのか」「裁判所の手続きによって取り決めたのか」で変わってきます。以下で3つのパターンに分けて解説していきます。

①離婚時に養育費について取り決めをしなかった

そもそも離婚時に養育費の取り決めをしていない場合、過去に遡って請求するのは困難です。
つまり、それまで養育費が不払いだったとしても、その分の支払いを求めるのは難しいといえます。そのため、時効もあまり気にする必要はないでしょう。

なお、将来分については、子供が自立する前であればいつでも請求可能です。話し合いに時間がかかる可能性もあるため、早めに請求することをおすすめします。

②養育費を取り決めたが払わない・未払いがある

養育費の内容を「夫婦の話し合い」で決めた場合、時効期間は「5年」となります(民法166条1項)。

養育費は毎月定額を支払う形で約束されることが多いため、時効は各月分ごとに進行します。例えば、2023年9月25日が支払日の場合、2028年9月25日で時効が成立します。それまでに請求しないと、その月の養育費は受け取れなくなるため注意が必要です。
なお、取り決めをした後に未払いとなった場合、5年分であれば遡っての請求が可能です。

一方、5年以上前から未払いとなっている分については、時効が成立しているため基本的に請求できません。
「何年も前から養育費が支払われていない」という方は、できるだけ早く行動しましょう。

③調停や裁判で取り決めた

調停・審判・裁判など、裁判所の手続きによって養育費が決定した場合、時効期間は「10年」となります。

ただし、10年の時効が適用されるのは、既に支払期日を超過している未払い養育費のみです。
例えば、未払いの養育費を請求するために調停や裁判を起こし、支払いが確定したケースです。この場合、その後10年間は請求が可能となります。

一方、調停や裁判で確定した場合でも、これから支払われる予定の養育費については、話し合いと同様「5年」の時効が適用されます。
例えば、離婚時に調停や裁判を行い、他の離婚条件と併せて養育費の取り決めをしたようなケースです。この場合、養育費の支払期日はまだ先なので、時効期間も基本的に5年となります。

養育費の時効が迫っているときの対処法(時効の更新)

時効の更新とは、それまでの時効のカウントをリセットし、新たに5年または10年の時効をスタートさせる制度です。そのため、時効の成立を大きく遅らせることが可能となります。
時効の更新が認められるのは、債務の一部を支払った、債務を認める念書を差し入れたなど、債務者が債権者に対して債務の存在を認めたときが代表的です。

なお、時効の更新のほか、催告や裁判上の請求により時効の進行が一時的にストップする「時効の完成猶予」という制度もあります。

以下では、時効の更新をする方法を3つご紹介します。

債務承認

債務承認とは、養育費を支払う側が、自身が債務を負っていることを認める行為をいいます。
例えば、

  • 支払い義務がある旨の念書を書かせる
  • 養育費の一部だけでも支払ってもらう
  • 滞納分について、近々支払うことを書面で約束させる

などの行為が該当します。
なお、時効の更新は何度でも行うことが可能です。
時効が近づいてきたら、都度上記の対応を債務者に求めることをおすすめします。

裁判上の請求

裁判を起こすと、その時点から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
判決が確定すると「時効の更新」が適用され、時効のカウントを一度リセットしたうえで、新たに10年の時効が始まります。そのため、時効が成立するのを防ぐことができます。
また、裁判のほか、「調停」や「支払督促」の申立てによっても同様の効果が得られます。

なお、裁判所を通さず、内容証明郵便などで直接請求する「催告」という方法でも時効の完成が猶予されます。もっとも、催告による時効の完成猶予は6ヶ月間に限られるため注意しましょう。

仮差押え・差押え

相手の財産隠しを防ぐため、裁判を起こす前に「仮差押え」を行うことができます。

もっとも、仮差押えでは時効の完成は6ヶ月間猶予されますが、時効の更新(リセット)の効果はありません。その間に裁判で確定判決を得るか、相手に債務を承認させるなどの対応が必要となります。
債権者が勝訴判決を得れば、仮差押えした財産に関する権利を取得することができます。

また、強制執行の申立てでも、時効の完成を猶予できます。この点、強制執行申立てには、原則的に判決などの裁判所が発行する債務名義が必要ですが、「強制執行認諾文言」付の公正証書は裁判所の発行する債務名義ではありませんが、これに基づいて強制執行を行うことが可能です。
強制執行完了後、まだ債務(未払い養育費)が残っている場合、そこから新たな時効期間がスタートします。

時効が過ぎても養育費を請求できる可能性がある

時効の効力は、債務者が「時効の援用」をすることで発生します。時効の援用とは、「時効が成立したからお金は払わない」と権利者に意思表示をすることです。
つまり、時効を過ぎても、相手に支払う意思がある場合や、相手から何のアクションもない場合、時効の効力は発生せず、養育費の請求も引き続き可能となります。

なお、債務者が「養育費の支払いを待ってくれ」などと申し出た場合は、債務の承認があったとみなし、時効期間を一度リセットしたうえで、新たな時効のカウントがスタートします(時効の更新)。
相手が時効の制度や「時効の援用」について知らない可能性もあるため、時効を過ぎても一度請求してみることをおすすめします。

未払いの養育費を請求する方法

相手が時効の援用を主張しない限り、通常の請求と変わりありません。まずはメールや電話、内容証明郵便などで相手に連絡し、未払い養育費を支払うよう請求します。すでに調停調書、判決などの債務名義があるのであれば、強制執行を申し立てることも可能です。

未払い養育費を回収するための手段について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

養育費の時効のことで気になることがあれば、弁護士への相談がおすすめ

養育費の時効を正しく理解していないと、知らないうちに時効が成立し、未払い養育費を請求できなくなるおそれがあります。
また、養育費が支払われないまま時効が近づくと、焦って相手に請求してしまい、トラブルになるリスクもあります。

弁護士に相談・依頼すれば、ご自身の時効を正確に把握できるだけでなく、適切な請求方法についてアドバイスも受けることができます。また、相手とのやり取りも任せられるため、精神的にも楽になるでしょう。

弁護士法人ALGは、離婚問題に詳しい弁護士が多く在籍しています。「養育費を滞納されて困っている」「時効がいつなのかわからない」「相手との交渉が苦痛」などのお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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