子の引渡しの強制執行をするための条件や手続きについて
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
別居中もしくは離婚後に一方の父母が勝手に子供を連れ去り、裁判所の手続きで子供を引き渡すよう決定が出たにも関わらず、素直に子供を引き渡さないケースは少なくありません。
相手が任意で引き渡さない場合は、強制手段として“強制執行”という方法があります。
そこで本記事では、
・子の引渡しの強制執行とは
・子の引渡しの強制執行をするための条件とは
・子の引渡しの強制執行の手続き
など、「子の引渡しの強制執行」に関して、わかりやすく解説していきます。
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子の引渡しの強制執行とは
子の引渡しの強制執行とは、一方の父母が子供を勝手に連れて別居したり、子供を連れ去ったりした場合に、子の引渡し請求調停や審判を申し立てて子供を引き渡す内容で調停が成立したり、子供を引き渡すように命ずる審判が確定したにも関わらず、任意に子供を引き渡さない場合に強制的に子供を連れ戻す方法です。
通常は、強制執行というと給与や預貯金を差し押さえたり、土地の明け渡しを求めたり「物」を対象とするイメージがあるかと思います。
子の引渡しの強制執行の場合は、子供という「人」を対象としています。
なお、子の引渡しの強制執行には、「間接強制」と「直接強制」の2種類があります。
強制執行の流れ
子の引き渡しの強制執行には、「間接強制」と「直接強制」の2種類があります。
それぞれの流れは次のとおりになります。
【間接強制】
① 間接強制の申立て
② 相手の審尋(相手の意見を聞く手続き)
③ 間接強制の決定(間接強制金が課せられる)
④ 期限内に任意での子の引渡しが実現した場合→終了
期限内に任意での子の引渡しがなかった場合→直接強制を申し立てる
【直接強制】
① 直接強制の申立て(執行官に子の引渡しを実施させる決定申立て)
付随して状況に応じて「第三者の占有する場所での執行許可の申立て」もしくは「債権者代理人の出廷の下での執行を認める決定申立て」も行う
②相手の審尋(相手の意見を聞く手続き)
③直接強制の決定
④引渡実施の申立て
⑤ 執行官と事前打合せ
⑥ 執行官による引渡しの実施
間接強制と直接強制の違い
間接強制は、「子供の引渡しをするまで1日●万円を支払え」と制裁金(間接強制金)の支払いを命じることによって引渡しをさせる方法です。
子供の引渡しを直接実現させるものではありませんが、相手に心理的圧力を与えて、自発的に子供の引渡しを促す方法です。
一方で直接強制は、家庭裁判所の執行官と一緒に子供のいる場所へ赴いて、相手に直接子供の引き渡しを求める方法です。
間接強制を実施しても子供を引き渡さなかった場合や、引き渡す見込みがない場合、子供の窮迫の危険を防止するために必要がある場合などに実施します。
法改正による変更点
民事執行法の法改正が2020年4月1日に施行され、子の引渡しの強制執行について、新しいルールが定められました。
改正された内容は主に次のとおりです。
- 直接的な強制執行の申立ての要件を明確化した
- 債務者(引渡しをしないといけない側)の立ち会いが不要になった
- 債権者(引渡しを求める側)またはその代理人の立ち会いが必要になった
- 債務者の住所以外の場所での執行ができる場合を明確化した
改正された理由としては、今までの民事執行法には、子の引渡しに関する強制執行を直接定める規定がなく、動産(不動産及び定着物以外のもの)の引渡しに関する規定を準用して強制執行をしていました。
しかし、子供は物と違って、意思や感情があるため、執行の現場で果たしてどこまでの行為が許されるのか判断が困難になる事態が起きていました。
さらに、債務者が子供と一緒に執行現場にいなければならないという要件があったため、債務者が不在だったり、強く抵抗したりした場合には、強制執行が不能になってしまい、実効性がなく、ただ子供の心身に負担を与えるだけになっていました。
それらの問題点を解消するために法律が改正されました。
子の引渡しの強制執行をするための条件
子の引渡しの強制執行には、子の引渡しを合意した調停調書や子の引渡しを命ずる審判、審判前の保全処分による仮の引渡しを命ずる決定といった債務名義を得ていることが前提条件となります。
次項より、子の引渡し調停・審判と審判前の保全処分の手続きなどについて詳しく解説していきます。
子の引渡し調停・審判
子の引渡し調停・審判は、別居中や離婚後に養育していた子供を一方の父母が連れ去ってしまったような場合に、子供を取り戻すための手続きです。
調停では、父母双方と裁判官や調停委員を交えて話し合いで解決を図ります。
審判では、一切の事情を考慮して、子供の引渡しについて裁判官が判断を下します。
離婚後、親権者でない者が、子供の引渡しを求めるためには、親権者変更の申立ても併せて行う必要があります。
離婚前で別居中の場合に子供の引渡しを求めるケースは、父母が共同親権をもっている状態なので、同時に子の監護者指定の申立ても併せて行います。
子の引渡し審判については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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審判前の保全処分(仮の引渡し)
審判前の保全処分(仮の引渡し)とは、子の引渡し調停や審判の結果を待っていたのでは間に合わないといった緊急性がある場合に、調停・審判に先行して、仮に家庭裁判所の決定を得る手続きです。
子の引渡し調停と同時に審判前の保全処分を申し立てることもできますが、調停による解決が期待されるような場合には、話し合いを阻害するおそれのある保全処分の申立ては差し控えることもあります。また、そもそも審判前の保全処分は緊急性が高いときにするものですから、通常は子の引渡し審判と同時に申し立てます。
審判前の保全処分の場合は、強制執行できる期限があり、「保全処分の審判書を受け取ってから2週間以内」です。したがって、2週間を経過すると強制執行ができなくなりますので、強制執行する際は、迅速に準備して行動する必要があります。
子の引渡しの強制執行の手続き
子を引渡す内容の調停が成立また子の引渡しを命ずる審判が確定したにも関わらず、債務者(引渡しをしないといけない側)が債権者(引渡しを求める側)に対して、任意に子供を引き渡さない場合は、強制執行の手続きを行うことができます。
手続きの種類、申立人、申立先、申立てに必要な費用、必要な書類は次のとおりです。
間接強制
【概要】
子供を引き渡さない債務者に対して、間接強制金を課すことで、債務者に心理的圧迫を加えて自発的な引渡しを促す方法
【申立人】
調停証書、審判書、判決書などに記載されている債権者(権利者)
【申立先】
調停、審判、判決などをした家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
・収入印紙:2000円
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる
【申立てに必要な書類】
・申立書
・執行力のある債務名義(調停調書、審判書、判決書)の正本、債務名義の送達証明書、確定証明書(審判前の保全処分の場合は不要)、債務者の資産
・収支状況を裏付ける資料
直接的な強制執行【直接強制】
【概要】
家庭裁判所の執行官が子供のいる場所に赴き、子供を直接連れ戻す方法
【申立人】
調停証書、審判書、判決書などに記載されている債権者
【申立先】
調停、審判、判決などをした家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
・収入印紙:2000円
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる
【申立てに必要な書類】
・申立書
・執行力のある債務名義(調停調書、審判書、判決書の)正本、債務名義の送達証明書、確定証明書(審判前の保全処分の場合は不要)、
a.間接強制決定の確定日から2週間を経過したとき又は同決定において定められた債務を履行すべき一定の期間がこれより後である場合はその期間を経過したことを示す資料、
b.間接強制による強制執行を実行しても債務者が子の監護を解く見込みがあるとは認められないことを示す資料、
c.子の急迫の危険を防止するため直ちに強制執行をする必要があることを示す資料(aからcはいずれかで足りる)
直接強制をする際に付随して利用できる手続き
第三者の占有する場所での執行の許可の申立て
【概要】
直接強制をする際は債務者が占有する場所(住居など)で実施することとされていますが、子供が債務者の占有する場所以外に住居している場合に、家庭裁判所から占有者の同意に代わる許可を受けることにより、子供が実際いる場所で子の引渡しを行える手続き
【申立人】
直接強制の申立てをする(した)債権者
【申立先】
直接強制の申立てをする(した)家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
・収入印紙:500円
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる
【申立てに必要な書類】
・申立書
・申立ての理由を裏付ける資料
債権者代理人の出頭の下での執行を認める決定申立て
【概要】
直接強制をする際は債権者自身も執行の場所に出頭しなければいけませんが、やむを得ない事情により出頭できない場合に、家庭裁判所の決定によって債権者の代理人が執行の場所に出頭して子の引渡しを行える手続き
【申立人】
直接強制の申立てをする(した)債権者
【申立先】
直接強制の申立てをする(した)家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
・収入印紙:500円
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる
【申立てに必要な書類】
・申立書
・申立ての理由を裏付ける資料
子の引渡しの強制執行について、下記の裁判所のウェブページで詳しく解説しています。申立書の書式もダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
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メールで相談する強制執行で必ず子を引き渡してもらえるのか?
強制執行を行えば必ず子供を引き渡してもらえるわけではありません。
例えば、直接強制を行って子供を相手の家に迎えにいったけれども子供がいなかったり、子供はいたけれども子供が泣き叫んで暴れるので連れ戻すことができなかったりする場合もあります。
強制執行を行っても子供を連れ戻せない場合は、最終手段として人身保護請求を行うこともあります。
人身保護請求は、人身保護法に基づいて拘束されている者の身体の自由を回復するための手続きです。
相手のもとに子供を留めておくと、子供に悪影響を及ぼすおそれがあり、一刻も早く子供を引き取る必要がある場合に認められ得ます。
人身保護請求に理由があるときは、裁判所は相手に対し、子供と共に審問期日に出頭するよう命じ(人身保護命令)、相手が人身保護命令に従わない場合は、裁判所は相手を勾引ないし勾留することができます。その後、子供を請求者に引き渡す判決が下されます。
ただし、人身保護請求が認められるための要件は直接強制よりも厳しいのが実情です。
子の引渡しには強制執行という手段もあります。経験豊富な弁護士にご相談ください
離婚前に勝手に子供を連れて別居されたり、別居後に子供を連れ去られたりした場合、離婚後に親権をもちたいと考えているのであれば、そのまま放っておくと親権獲得に不利になってしまうおそれがあります。
また、離婚する際に親権を獲得しても、勝手に子供を連れ去られて放置した場合、子供と離れて暮らす期間が長くなると、親子関係を再構築するのが難しくなるおそれがあります。
したがって、子供を連れ去られた場合は、早急に子の引渡し手続きを行う必要があります。
子の引渡しの調停・審判および審判前保全処分で子供を引き渡すように決まっても、相手が任意に引き渡さない場合は、即座に強制執行するべきです。
強制執行をはじめ子供の引渡し事案でお悩みのある方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士法人ALGでは、子供の連れ去り問題を多く解決してきた実績があります。
培ってきた経験やノウハウを活かして有利に進められるように尽力します。
迅速な対応が必要とする問題ですので、できるだけ早く弁護士法人ALGにお問合せください。
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