夫婦の会話がないことを理由に離婚は可能か
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交際時や結婚当初は、話題は尽きず、毎日語り合っていた仲だったのに、長年一緒に生活していると、生活時間のズレや、相手に興味がなくなるなど様々な理由で気付けば会話がほとんどなく、このまま一緒に居ても意味がないのではと思い、離婚を考える方がいらっしゃいます。
会話がない夫婦は離婚率が高いとよくいいますが、実際は本当にそうなのでしょうか?
また、“夫婦の会話がない”という理由で離婚はできるのでしょうか?
そこで、本記事では、「会話のない夫婦と離婚」をテーマにして、様々な角度から詳しく解説していきます。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0120-544-064
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メールで相談するこの記事の目次
会話がない夫婦の離婚率
厚生労働省が公表している令和5年度人口動態統計では、婚姻件数が47万4717組となり、離婚件数が18万3808組となり、単純に比較すると38%となって、結婚した3組のうち1組が離婚していることになります。
そのなかでも、会話がない夫婦の離婚率は高いと思われていますが、実際どのくらいなのでしょうか。
実は、「会話のない夫婦」というのはあいまいな定義で離婚率を調べたという調査は存在せず、裏付けるものがないのが実情です。
言えるのは、夫婦間で会話がないことは決して望ましいことではないということです。
会話がないと、一緒にいる意味を感じられなくなったり、孤独を感じたりして、浮気に走ったり、ギャンブルや買い物依存症に陥るおそれさえあります。
会話のない夫婦の離婚率が高いかどうかというよりも、会話のない夫婦ほど、離婚の危機に陥りやすいといえるのでないでしょうか。
『夫婦の会話がない』だけで離婚できるのか?
まず、離婚する方法には次の表のとおり主に4パターンがあります。
協議離婚 | 夫婦間で話し合いによる合意で離婚を成立させる手続き |
---|---|
離婚調停 | 家庭裁判所で裁判官や調停委員を介した話し合いによる合意で離婚を成立させる手続き |
審判離婚 | 離婚調停が不成立になった後、裁判所の職権で調停に代わる審判で離婚を成立させる手続き |
離婚裁判 | 家庭裁判所に裁判を提起して、裁判官が離婚について判断を下す手続き |
「夫婦の会話がない」という理由でも、夫婦間で話し合って離婚について合意できれば、離婚できます(協議離婚)。
夫婦間での話し合いでは合意できず、離婚調停を申し立てた場合は、裁判官や調停委員を交えて話し合うことになりますが、合意できれば離婚はできます。
審判離婚に移行する場合は、離婚するかどうかや、離婚条件でほぼ合意に至っていて、僅かな相違があった場合になりますので、僅かな相違(例えば、養育費の額や終期、財産分与の割合など)についての裁判所の判断に納得すれば離婚できる可能性はあります。
しかし、離婚裁判では、「夫婦の会話がない」という理由だけでは、離婚できない可能性があります。
詳しくは次項で解説いたします。
裁判の場合は離婚できない可能性がある
離婚裁判で離婚を成立させるには、次の5つの民法上離婚が認められる「法定離婚事由」が必要となります。
- (1) 不貞行為があったとき
- (2) 悪意で遺棄されたとき
- (3) 3年以上の生死が明らかでないとき
- (4) 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- (5) その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上記の法定離婚事由をみてわかるとおり、「会話がない」という理由だけではどれもあてはまりません。
ただし、会話がないのに加えて、セックスレスや長期間の別居などもあり、婚姻関係はすでに破綻している事実があれば、“(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき”にあてはまり離婚が認められる可能性があります。
法定離婚事由について、下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
会話のない夫婦が離婚前に検討すべきこと
離婚前に検討すべきことがあります。
特に夫婦の会話がないことを理由に離婚を考えている場合は次の2点を検討すべきです。
- 家庭内別居や別居
- 会話をしたくない理由があれば相手に伝える
次項で詳しく解説していきましょう。
家庭内別居や別居
同じ屋根の下で会話がない状態を続けていると、お互い身がもたなくなります。
家庭内別居や別居をして、物理的に距離をおくことによって、冷静に今後のことを見つめ直せる機会になります。
そのほかにも、別居状態にある夫婦は、夫婦関係が破綻していると推定されうるので、同居しているときよりも「会話がない」という離婚理由でもスムーズに離婚できる可能性が高まります。
別居したいけど、経済的に生活できるか不安という方もいらっしゃるかと思います。
別居をしても、夫婦はお互いに協力して扶養しあう義務があります。
よって、収入の低い方が収入の高い方に別居中の生活費として「婚姻費用」を請求できます。
婚姻費用を請求して、離婚するまでの生活費を確保すれば、別居後の生活も安心です。
合わせて読みたい関連記事
会話をしたくない理由があれば相手に伝える
自分の気持ちや考えは言葉にしなければ伝えることはできません。
会話をしたくない理由があれば、きちんと相手に伝えることで相手が今までの言動を見つめ直して、改善される余地があるかもしれません。
もしくは、理由を伝えることによって、離婚に同意してくれる可能性もあります。
ただし、相手への伝え方によっては、さらに関係が悪化する場合もありますので、感情的にならずに冷静に伝えるように心掛けましょう。
会話がない夫婦が離婚する際の注意点
会話がない夫婦が離婚する際に、しっかり離婚条件について取り決めて、離婚後の生活についてしっかり考えておかないと、離婚後に後悔するおそれがあります。 次項で詳しく確認していきましょう。
離婚条件について
離婚する際に定める必要がある離婚に関する条件は夫婦ごとに異なりますが、代表的な項目は次の表のとおりです。離婚後、トラブルになったり、生活が困窮しないためにも取り決めておく必要があります。
財産分与 | 婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産を分け合うことをいいます。 財産の名義がどちらなのか、離婚理由は何なのか、どちらが離婚を申し出たのかなどは関係なく、基本的に公平に2分の1ずつ分け合います。 |
---|---|
慰謝料 | 相手の責任で夫婦関係が破綻し、精神的苦痛を受けたときに請求できる損害賠償金をいいます。 “夫婦の会話がない”という離婚理由だけではどちらに責任があるとはいえませんので、慰謝料の請求は難しいです。 |
親権 | 子供の利益のために、子供の監護・教育をする権利であり義務のことをいいます。 市区町村役場に離婚届を提出するときに父母のどちらを親権者にするのか定めて離婚届に記入しなければ受理されません。 |
養育費 | 子供の監護や教育にかかる費用をいいます。 基本的に、離婚理由は関係なく、離婚によって子供と離れて暮らす親が子供と一緒に暮らす親に支払います。 |
面会交流 | 子供と離れて暮らす親と子供が会ったり、電話をしたり、手紙をやりとりして交流することをいます。 |
年金分割 | 夫婦の婚姻期間中の保険料納付に対応する厚生年金の納期記録を分割してそれぞれの納付記録にすることができます。 年金分割する方法には、夫婦間の合意が必要な「合意分割」と、夫婦間の合意が不要な「3号分割」があります。 |
離婚後の生活について
離婚後は自活しなければいけませんので、離婚後の生活をあらかじめ考えて準備しておく必要があります。
離婚後、現在の自宅はどうするのかを話し合う必要がありますし、転居する場合は転居先を探さなければいけません。
専業主婦(主夫)の方は就職先を探さなければいけません。
離婚後、子供と一緒に暮らす方は、受給できる各種公的扶助制度の確認、子供の保育所・幼稚園・小学校などの選択や手続きなど様々あります。
“離婚しなければ良かった“と後悔しないためにも事前準備はとても大切です。
会話のない夫婦が子供に与える影響
「親の背を見て子は育つ」という“ことわざ”があるように、子供は良いことも悪いことも親の姿を見て育っていきます。
さらに、夫婦の会話が子供の心を育てます。
親である夫婦の会話そのものが子供に計り知れない影響を及ぼしています。
反対にいえば夫婦の会話がない状況は、子供に計り知れない悪影響を及ぼしています。
具体的に、会話のない夫婦が子供に与える影響は次のようなものが挙げられます。
- コミュニケーション能力が育たない
- 情諸不安定になる
- 感情表現が苦手になる
- 家族の思い出が少ない
- 結婚への憧れがなくなる
夫婦間の会話がなくモラハラのような言動を受けていたが弁護士の介入によって離婚が成立した事例
事案の概要
同居しているものの、長年に渡って相手からモラハラのような言動を受けていて、会話のない状態が続いており、夫婦としての実態がありませんでした。依頼者は離婚を決意しましたが、まともに相手と話ができず、別居をして弁護士法人ALGへご相談に来られました。
弁護士方針・弁護士対応
相手の性格を考えると、交渉ではなく調停で進めることを想定していました。
ただ申し立てる前に弁護士が相手と話をしてみると、「離婚もやむなし」と思われているのが察せられました。
そこで、あえて調停を申し立てずに交渉で進めることにしました。
熟年夫婦のため、ある程度まとまった財産があり、依頼者としても相応の財産分与をすることを受け入れました。
相手は、新生活のための家具や家電の購入費用を求めてくるなど細かいやりとりがありましたが、その都度、弁護士で請求が過度に広がりすぎるのを制御していました。
結果
離婚条件として論理的に算出される額におさめて、無事に離婚が成立しました。
調停への出廷の手間が省け、ご自身ではうまく話が出来ない相手と弁護士が代わりに交渉したことで精神的負担も軽減され、納得のいく形で離婚できたことに大変感謝されました。
夫婦の会話がないことを理由に離婚を検討される際は弁護士にご相談ください
夫婦の会話がない状況が続くことは、決して、健全な状態ではありません。
子供がいれば、子供にも多大な悪影響を及ぼしているおそれもあります。
夫婦の会話がないことを理由に離婚を考えている方は、すぐにでも弁護士にご相談ください。
夫婦の会話がないことを理由に離婚するには、基本的に相手が離婚に合意しなければ離婚は難しいのが現状です。
弁護士であれば、最適な離婚までの道筋を立てて、適切なアドバイスができます。
また、相手と直接交渉することも可能です。
1人で抱え込まずに、まずは弁護士法人ALGにお問合せください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います
離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料
※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
お電話でのご相談受付
0120-544-064
24時間予約受付・年中無休・通話無料
メールでのご相談受付
メールで相談する- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)