事実婚の年金分割|認められる条件や手続き方法

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
事実婚とは、婚姻届を提出せずに夫婦として共同生活を送っている状態を指し、内縁関係とも呼ばれています。
ライフスタイルの多様化に伴って、事実婚をする夫婦は増えてきています。
事実婚の夫婦が事実婚を解消したら、法律婚の夫婦が離婚する際に請求できる「年金分割」はどうなるのでしょうか?
そこで、本記事では、“事実婚(内縁関係)でも年金分割は可能なのか“、“事実婚の解消時における年金分割の方法“、“事実婚の年金分割に関する注意点“など「事実婚の年金分割」に焦点をあてて、詳しく解説していきます。
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事実婚(内縁関係)でも年金分割は可能か
事実婚(内縁関係)を解消する際は、年金分割は可能です。
そもそも年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の保険料納付記録を分割してそれぞれ自分の記録とすることができる制度です。
年金分割が認められるのは、2人が婚姻関係にあった期間分のみです。
法律婚の場合は、婚姻日と離婚日が戸籍によって客観的にわかります。
一方で、事実婚の場合は、客観的に婚姻期間を示すものがないため証明が困難です。
証明が困難なときに役に立つのが、第3号被保険者の制度になります。
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者で20歳以上60歳未満の者をいいます。
事実婚の関係にあった一方が他方の扶養に入って第3号被保険者になると、事実婚をしていたことが客観的に証明できますので、その期間については年金分割の対象と認められます。
事実婚で年金分割が認められる条件
事実婚の場合に年金分割が認められる条件は、次のとおりです。
- 事実婚をしていた期間内に、一方が他方の第3号被保険者であった期間があること
- 第3号被保険者であった者が、年金分割の改定請求時にその被保険者資格を喪失していること
- 事実婚を解消したと認められること
※第3号被保険者とは、厚生年金加入者である配偶者に扶養されている、20歳以上60歳未満の国民年金加入者をいいます。
事実婚を解消すると扶養から外れ、第3号被保険者ではなくなるため、国民年金のみに加入する第1号被保険者か、サラリーマンや公務員が加入する第2号被保険者となるため、第3号被保険者であった期間が確定して、事実婚をしていたことが客観的に証明できます。
したがって、確定した第3号被保険者であった期間について、年金分割が認められることになります。
事実婚の解消時における年金分割の方法
年金分割を行う方法には、「合意分割」と「3号分割」があります。
合意分割は、夫婦間の合意や、裁判手続きによって年金分割の割合を決定する手続きをいいます。
3号分割は第3号被保険者であった者が単独で請求することにより、自動的に厚生年金保険料納付記録を2分の1ずつに分割する制度をいいます。
それぞれの手続きの流れと必要書類は次のとおりとなります。
合意分割
【手続きの流れ】
(1)夫婦で年金分割について話し合います。
話し合いがまとまらない場合は、調停や審判、裁判などで年金分割を請求します。
(2)次の必要書類を持参して最寄りの年金事務所で合意分割の請求を行います。
【必要書類】
- (1)標準報酬改定請求書
- (2)マイナンバーカード(請求書にマイナンバーを記入した場合)
年金手帳または基礎年金番号通知書(請求書に基礎年金番号を記入した場合) - (3)事実婚期間を明らかにできる書類(世帯主との続柄が「夫(未届)」や「妻(未届)」になっている住民票など)
- (4)両者の生存を証明できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など)
※ただし、請求書にマイナンバーを記載すれば省略可能 - (5)年金分割の内容を明らかにできる書類(合意書、公正証書、調停調書、審判書、判決書など)
- (6)請求者の本人確認書類
3号分割
【手続きの流れ】
次の必要書類を持参して最寄りの年金事務所で3号分割の請求を行います。
※3号分割に相手の合意は不要なため、年金分割について、相手との話し合いや裁判所の手続きを経る必要はありません。
【必要書類】
- (1)標準報酬改定請求書
- (2)マイナンバーカード(請求書にマイナンバーを記入した場合)
年金手帳または基礎年金番号通知書(請求書に基礎年金番号を記入した場合) - (3)事実婚期間を明らかにできる書類(世帯主との続柄が「夫(未届)」や「妻(未届)」になっている住民票など)
- (4)相手の生存を証明できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など)
※ただし、請求書にマイナンバーを記載すれば省略可能
年金分割の手続方法について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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事実婚の年金分割に関する注意点
事実婚の年金分割に関して、注意点があります。
次項で詳しく解説していきます。
年金分割の請求期限
年金分割はいつでも請求できるわけではありません。
請求期限があり、期限が過ぎると年金分割の請求権を失います。
事実婚における年金分割の請求期限は次のとおりとなります。
- 第3号被保険者の資格を喪失して事実婚が解消されたと認定される日の翌日から2年以内
- 年金分割の改定請求の相手方が死亡した場合は、死亡したときから起算して1ヶ月以内
事実婚から法律婚へ移行した場合
事実婚から法律婚へ移行した場合は、事実婚の関係解消と法律婚の成立が同時ですので、事実婚と法律婚の違いはありますが、実質的には、両者を通じて夫婦関係は継続しているものと考えます。
よって、法律婚へ移行する直前の事実婚期間だけを年金分割することはできません。
年金分割請求できるのは、法律婚の解消、つまり離婚したときです。
事実婚の年金分割の対象は、第3号被保険者期間に限られているため、事実婚から法律婚へ移行してから離婚した場合は、「事実婚の第3号被保険者期間+法律婚の期間」が年金分割の対象となります。
事実婚の年金分割について弁護士に相談するメリット
事実婚の年金分割については、弁護士に相談して進めることをお勧めします。
弁護士に相談するメリットは次のような点が挙げられます。
●事実婚であっても年金分割ができるようにサポートしてもらえる
事実婚は、法律婚よりも年金分割の改定請求を行うことができる用件が厳しいのが実情です。
弁護士であれば、手続きについてアドバイスやサポートが可能であるため、スムーズに年金分割の手続きができ、受け取れる可能性が高まります。
●相手と代わりに交渉してもらえる
年金分割の改定請求をするには、相手に協力してもらわないと取得できない書類もあります。
弁護士であれば、代理人として相手方と代わりに話し合いができますし、書類の受取先も代理人弁護士事務所宛てにできますので、相手方と直接かかわらずに済みます。
●年金分割以外の事実婚を解消するときに生じ得る問題を解決してもらえる
事実婚を解消する際は、法律婚の離婚と同様に年金分割以外の財産分与、養育費、慰謝料などを請求できます。
弁護士に相談・依頼すれば、財産分与、養育費、慰謝料などの解決を図り、事実婚の解消後において、安心して生活できるように尽力してもらえます。
事実婚(内縁関係)と年金分割のQ&A
- Q:
離婚した後も事実婚の関係にある場合は年金分割の請求はできますか?
- A:
できます。
離婚する際には必ず離婚届を提出し、関係が一旦解消されるため、たとえその後、事実婚状態を継続したとしても、法律婚の期間分の年金分割を請求することができます。
もっとも、離婚後も事実婚を続ける関係にある以上、年金分割の話が話題にならず、実際に年金分割を請求する方は少ないようです。しかし、注意しなくてはならないのは、年金分割の請求において、「法律婚の期間と事実婚の期間は別個のものとして扱われる」ということであり、年金分割の請求期限である2年は、法律婚の期間分については、離婚時から進むことになります。
すなわち、離婚時に年金分割をすることなく事実婚に移行し、その後事実婚を解消した場合、離婚日から2年以内であれば、法律婚の期間分を含めて年金分割を請求できますが、離婚日から2年を経過している場合には、事実婚の期間分の年金分割しか請求できません。
- Q:
別居している妻を扶養から外し、事実婚の妻を扶養に入れて、事実婚の妻に年金分割の改定請求をさせることはできますか?
- A:
年金分割については、遺族年金と異なり、重婚的内縁当事者が「第3号被保険者」になっている限り、当該期間については当然に法律婚配偶者に優先して年金分割を受けることができるとされています。
故に、別居している法律婚配偶者を扶養から外し、事実婚の配偶者を扶養に入れることも法律上想定されています。
事実婚解消時の年金分割は法律で認められています。まずは弁護士にご相談ください
事実婚の場合も法律婚と同様に、権利を有し、義務を負う場合があります。例えば、財産を協力して築けば財産分与が認められますし、貞操義務を負うため、事実上の配偶者以外と肉体関係を持った場合には、慰謝料を請求されることもあります。もちろん、年金分割を受ける権利も、する義務も互いに有しています。
このように、様々な権利義務を有することになる事実婚を解消する際には、トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士に相談することをお勧めします。年金という複雑な制度に基づく年金分割のサポートはもちろん、事実婚の解消に関連して生じる多様な問題の解決のお手伝いもさせていただきますので、ぜひ相談することをご検討ください。
まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)