離婚の切り出し方|タイミングや注意点など詳しく解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚を切り出すのは、とても勇気のいることです。
苦悩して離婚を決意しても、どのように離婚を切り出せばよいかわからず、一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
円満に離婚するためには、離婚の切り出し方が重要です。
ですが、離婚したい理由や、「子供がいる場合」、「すでに別居中の場合」など、それぞれの状況によって離婚の切り出し方が異なることがあるため、本ページでケース別の離婚の切り出し方を解説していきたいと思います。
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ケース別の離婚の切り出し方
離婚を切り出すときは、冷静に、落ち着いてご自身の意思を伝えることが大切です。
相手の気持ちを考慮せず、感情的に主張するだけでは話し合いは進みません。
これを踏まえて、実際どのように離婚を切り出せばよいのかを、以下のケース別に解説していきます。
- ① 性格の不一致で離婚したい場合
- ② 子供がいる場合
- ③ セックスレスの場合
- ④ ほかに好きな人ができた場合
- ⑤ 別居中の場合
- ⑥ DVやモラハラで話し合いが難しい場合
①性格の不一致で離婚したい場合
性格の不一致で離婚したい場合は、相手に理解してもらえるように、「性格や価値観の違いで、このままでは婚姻生活が続けられない」ということを、冷静に端的に伝え、離婚を切り出しましょう。
性格の不一致だけが離婚理由の場合、民法で認められた離婚理由(=法定離婚事由)に該当せず、裁判に発展すると離婚できない可能性があります。
そのため、裁判に発展する前に話し合いで離婚の合意を目指すことが重要になります。
ですが、相手が性格の不一致だと思っていないと話し合いができない可能性もあるので、離婚を切り出す際には、具体的なエピソードを交えるなど、相手が話し合いに応じてくれるような工夫が必要になります。
性格の不一致による離婚について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
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②子供がいる場合
夫婦の間に子供がいる場合、子供がいないときに離婚を切り出しましょう。
たとえ子供が小さくても、両親が目の前で離婚の話し合いをするのは子供の心身に悪影響を及ぼす可能性が高いです。
子供にとってはどちらも大切な親だということを配慮し、両親が離婚で揉める姿を見せないように、子供が学校に行っている間を利用したり、親族宅に預けたりして、子供がいないときに落ち着いて話し合えるタイミングで切り出すようにしましょう。
③セックスレスの場合
セックスレスが原因で離婚を考えている場合、夫婦で落ち着いて話し合えるタイミングで、「セックスレスがつらくて、離婚したい」ということを切り出しましょう。
子供を望んでいる場合は、「子供がほしいけれど、協力してくれないなら離婚もやむを得ない」と正直に伝えるのもよいかもしれません。
離婚したい意思を明確に伝えたうえで、ご自身がセックスレスについてどう感じているかを正直に伝えるべきですが、このとき相手がどう思っているのかを聞くことも重要です。
相手を責めるのではなく、配慮するような言葉を選ぶなど、切り出し方を工夫することで、相手の本当の気持ちを聞くことができれば、状況が好転する可能性もあります。
セックスレスによる離婚について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
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④ほかに好きな人ができた場合
ほかに好きな人ができたという理由で離婚を切り出す場合、相手を傷つけないよう、冷静に、誠実に話し合う姿勢が大切です。
好きな人ができたというだけでは、法律上の不貞行為にはあたりませんが、それでも離婚請求においては不利になる可能性があります。
なお、好きな人ができたことについて配偶者が気付いていない場合、「好きな人ができたから離婚してほしい」と切り出すのは自ら事を荒立てる行為でしかありません。
したがって、円満な離婚を目指すのであれば、「性格が合わない」や「お互い愛情を感じない」などを理由に、これ以上婚姻生活が続けられないというような切り出し方をするとよいでしょう。
⑤別居中の場合
別居中の場合、直接会うことが難しければ、電話や手紙、メール、LINEといったツールを利用して離婚を切り出すことも可能です。
いずれの方法も、「距離を置いて離婚について冷静に考えてみたけれど、やはりこのまま婚姻生活を続けることは難しいから、一度離婚について話し合いたい」というように、関係修復や離婚について向き合った上で離婚したいと伝えたうえで、お互いが落ち着いて話し合える機会を設けるとよいでしょう。
別居中の離婚について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
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⑥DVやモラハラで話し合いが難しい場合
配偶者のDVやモラハラが原因で離婚を切り出す場合、まずはご自身や子供の身の安全を確保しましょう。
とくに、離婚を切り出すことによってDVやモラハラがエスカレートするおそれのある場合は、別居してから離婚を切り出すなどの対策が必要です。
また、離婚を切り出すにあたっては、決して二人きりにならないことも重要です。
顔を合わせずに済む手紙やメール、LINEなどのツールを利用するか、第三者を介して直接やり取りしなくて済むようにしましょう。
弁護士を通して離婚を切り出し、交渉を任せるという方法もおすすめです。
DV(モラハラを含む)加害者と離婚する方法について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
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【ケース別】離婚を切り出すときに使える例文
円満に離婚するためには、離婚の切り出し方が重要になります。
そこで、実際に離婚を切り出すときに使える例文を、「対面」、「電話」、「文章」のケース別に紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。
対面で直接切り出す場合
夫婦双方が落ち着いて話し合える場合は、直接顔を合わせて離婚したいと伝えてみましょう。
ただし、いきなり離婚してほしいと伝えるのではなく、前置きをしたうえで、離婚を提案するかたちで切り出すことをおすすめします。
【例文】
「いつも家族のためにありがとう。実は、子供の教育方針の違いでずっと悩んでいたけれど、このままずっと一緒に子供を育てていく自信がなくなりました。子供やお互いの将来のために離婚を考えてもらえませんか?」
顔を合わせずに電話で切り出す場合
顔は合わせにくいけど、直接口頭で伝えたい場合、電話で切り出す方法もあります。
相手が落ち着いて話せる状況かを確認したうえで、まずは離婚を切り出し、その後端的に冷静に理由を伝えるとよいでしょう。
【例文】
「突然電話してごめんなさい。大事な話があるのですが、いま大丈夫ですか?実は、離婚したいと考えています。すれ違いばかりで、この先ずっと夫婦として一緒にいられる自信がなくなりました。離婚した方がお互いのためだと思うけれど、あなたはどう思う?」
手紙・メール・LINEなどの文章で切り出す場合
口頭で穏便に離婚を切り出す自信がなかったり、配偶者のDVやモラハラが離婚理由だったりする場合は、手紙やメール、LINEなどの文章で伝える方法がおすすめです。
自分の気持ちを整理して、相手の気持ちも尊重しながら、端的にわかりやすく伝えましょう。
【例文】
「突然連絡してごめんなさい。とても大事な話があるのですが、直接だと上手に話せる自信がないので手紙(メール・LINE)で伝えさせてください。私たちの将来についてずっと考えた結果、離婚を提案することにしました。あなたの意見を聞かせてください。」
離婚を切り出すタイミング
円満に離婚するためには、離婚を切り出すタイミングも重要です。
相手が個人的な問題に直面している時期は避け、子供がいる場合は可能な限り子供に影響がでないタイミングが望ましいです。
以下、離婚を切り出すのに適したタイミングの例を挙げてみます。
- お互いが落ち着いていて、ゆっくり時間がとれるタイミング
- 離婚の同意が得られそうだと思ったタイミング
- 転職や定年退職など、相手の環境が変化するタイミング
- 子供が自立したタイミング など
離婚を切り出す際の注意点
離婚を切り出すにあたって、切り出し方やタイミングのほかに、夫と妻のどちらから離婚を切り出すかによって注意すべき事がいくつかあります。
以下、妻から切り出す場合の注意点と、夫から切り出す場合の注意点を、それぞれ詳しくみていきましょう。
妻から切り出す場合
妻から夫へ離婚を切り出すにあたっては、感情的にならず、冷静に話すことを心がけましょう。
話しているうちに感情がたかぶり、感情的になって、つい夫を責めるようなことを口走ってしまうことがあります。
そうなってしまうと、離婚したいという意思が正確に伝わらず、話し合いが長引くことになりかねません。
男性は理論的に話すことを好む傾向にあるため、離婚理由や条件を明確にして、伝えたいことの要点を事前にメモなどに整理しておくとよいでしょう。
夫から切り出す場合
夫から妻へ離婚を切り出すにあたっては、離婚後も妻が安心して生活していけるように、慰謝料や養育費など、相手に有利な条件を提案すると、離婚に応じてもらいやすくなります。
また、女性は男性に比べて感情的になりやすい傾向にあることから、離婚を切り出すことによって妻から心ない言葉を突き付けられたり、話し合いが難航したりする可能性があることを想定し、ご自身は冷静な態度に徹することも重要です。
離婚を切り出す事前準備
離婚を切り出す前に、どのようなことを準備しておけばよいのでしょうか。
最低限、次の4点を事前に準備しておくことをおすすめします。
- ① 自分の気持ちを整理する
- ② 離婚を伝える方法を考える
- ③ 離婚条件について考える
- ④ 離婚原因の証拠を集める
それぞれ次項で詳しくみていきましょう。
自分の気持ちの整理
離婚を切り出す前に、まずは自分の気持ちを整理しておきましょう。
具体的には、
- なぜ離婚したいのか
- 離婚以外の解決方法はないか
- 離婚後はどこで、どうやって生活していくのか
- 離婚後の不安と、その対策
といったことを、相手に伝えたときの反応を予想しながら紙に書きだすなどして、自分自身の気持ちと向き合い、整理しておくことが大切です。
離婚を伝える方法
自分の気持ちの整理ができたら、いつ、どのように離婚を伝えるのかを検討しましょう。
離婚の切り出し方には、主に次のような方法があります。
- 対面で直接切り出す方法
- 電話で切り出す方法
- 手紙・メール・LINEなどの文章で切り出す方法
- 弁護士などの第三者を介して切り出す方法
直接切り出す方法が一般的ですが、心身に危険が及ぶ可能性があったり、別居していたりして難しい場合は、手紙やメール、電話で切り出すなど、ご自身の状況に合った方法で、感情的にならない方法を選択することができます。
第三者が同席するメリット
離婚を切り出す際や、夫婦で離婚について話し合う際に、第三者が同席するメリットは次のとおりです。
- 感情的になって話し合いが滞ることを回避できる可能性がある
- 客観的な意見を交えることで、双方の意見が整理できることがある
- 配偶者からのDVやモラハラを回避できる など
離婚条件について考える
離婚するにあたっては、夫婦で離婚条件について取り決めることになるので、ご自身が希望する離婚条件をあらかじめ考えておきましょう。
【離婚時に取り決めるべき離婚条件】
- 財産分与、年金分割
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 慰謝料
子供に関することをはじめ、離婚後の経済的な不安を少しでも軽減できるように、事前準備としてお互いの財産状況を把握したうえで適切な財産分与が受けられるように希望条件をまとめておきましょう。
なお、慰謝料は離婚すれば必ず発生するものではなく、離婚の原因や責任が夫婦どちらにもないケースでは慰謝料が発生しないこともあるので注意が必要です。
離婚原因の証拠を集める
離婚の原因が相手の浮気・不倫といった不貞行為や、DV・モラハラである場合、その証拠を離婚前に集めておくことが重要です。
離婚原因の確固たる証拠があれば、ご自身に有利な条件で離婚を進められるほか、配偶者に対して慰謝料請求できる可能性もあります。
【不貞行為の証拠となり得るもの】
- 不貞行為中やラブホテルに出入りしている写真や動画
- 肉体関係があると推測できる内容のメールやLINEなどのやりとり
- 不貞相手を行ったと推測される旅先の領収書やクレジットカード明細 など
【DVやモラハラの証拠となり得るもの】
- DVやモラハラを受けた日時や場所、具体的な行為の内容を記録した日記や動画
- 怪我の写真や、通院記録・医師が作成した診断書
- 警察や公的機関への相談記録 など
不貞行為やDVの証拠を集める方法について、詳しい内容は下記のページをご覧ください。
熟年離婚の際の証拠集めについても解説していますので、ぜひご参考ください。
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- Q:
離婚を先に切り出した方が不利になりますか?
- A:
法律上は、離婚を先に切り出したからといって不利になることはありません。
離婚するにあたって、財産分与や親権、養育費などの離婚条件を取り決める際は、一定の基準にそって判断されますが、この基準に「離婚を先に切り出した方が不利」とは定められていません。
また、離婚を先に切り出したという理由だけで慰謝料が発生することもありませんのでご安心ください。
もっとも、夫婦双方に離婚の原因や責任がなく、離婚を切り出された側が離婚を拒む場合は、離婚に応じてもらうために、先に切り出した側がある程度条件の譲歩を強いられることがあるなど、交渉に影響するケースもあるので注意が必要です。
- Q:
離婚について子供にどのように切り出したら良いですか?
- A:
離婚することを子供に切り出す場合は、子供が落ち着いて話せるタイミングで、できるだけ事実を伝えるようにしましょう。
どこまで伝えるべきか迷われると思いますが、はぐらかすことで子供に悪影響を及ぼす可能性もあるので、次のようなことに気を付けながら、子供がわかる範囲で伝えるとよいでしょう。
- 離婚するのは子供のせいではないことを必ず伝える
- 離婚しても両親の愛情は変わらないことを伝える
- 相手の悪口を言わない
- 子供がわかる範囲で事実を伝える など
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ご自身の意思は固まっていても、離婚を切り出した後や、離婚後の生活を考えると不安な気持ちでいっぱいだと思います。
うまく離婚を切り出す勇気がない方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士であれば、ご相談者様のご事情にそったアドバイスのほかにも、ご自身の意思をうまく伝える自信がない場合や、配偶者のDV・モラハラが心配な場合に、弁護士を介して離婚を切り出し、相手とのやり取りを任せることもできます。
弁護士に離婚の切り出し方や離婚条件を相談しながら交渉することで、円満な離婚成立への可能性がぐっと高まります。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)