未払い養育費の回収方法|調停や強制執行の手続き、回収代行について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚後、子供と離れて暮らす親は、離婚をしても子供の親であることは変わりありませんので、養育費の支払義務を負います。
子育てにかかる費用は1人2000万~4000万円といわれており、養育費は子供が健やかに成長するために非常に大切なものです。
離婚後、子供と離れて暮らす元配偶者からの養育費の支払いがなされていないのであれば、一刻も早く回収すべきです。
そこで、本記事では、未払い養育費の回収方法や未払い養育費を回収できる期限など未払い養育費の回収方法に焦点をあて、詳しく解説します。
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未払い養育費の回収方法
厚生労働省が発表している令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告での養育費の受給状況をみると、現在も養育費を受けている母子家庭は28.1%、父子家庭は8.7%となり、養育費を受けたことがある母子家庭が14.2%、父子家庭は4.8%、養育費を受けたことがない母子家庭は56.9%、父子家庭は85.9%となっています。
結果から養育費の未払いが非常に多いのがわかります。
そこで、未払い養育費の回収方法をご紹介します。
未払い養育費を回収するには、主に次のような方法があります。
- ① 口頭やメールで督促する
- ② 内容証明郵便で督促する
- ③ 弁護士に養育費の回収を依頼する
- ④ 回収代行サービスや制度を利用する
- ⑤ 養育費請求調停の申立てをする
- ⑥ 履行勧告・履行命令の申立てをする
- ⑦ 強制執行(差押え)の申立てをする
次項よりそれぞれ詳しく解説していきましょう。
①口頭やメールで督促をする
まずは、相手に直接口頭やメールなどで養育費の支払いを督促してみましょう。
相手がわざと養育費を支払わないでいるわけではなく、養育費の支払いをうっかり忘れていた場合は、督促すれば支払いに応じてくれる可能性があります。
ただし、わざと支払わないでいる相手に対しては、口頭やメールで督促しても、支払われる効果は期待できない可能性が高いです。
②内容証明郵便で督促をする
内容証明郵便とは、日本郵便で取り扱っている郵便サービスのひとつです。
通常の手紙だと、誰にいつどのような内容の手紙を送ったか記録に残らず、相手が受け取ったかどうかもわかりません。
内容証明郵便であれば、誰が誰宛てにいつどのような内容の書面を送付したのかを日本郵便が証明してくれるので、相手の言い逃れを防ぎ、未払いの養育費を督促した証拠にもなります。
内容証明郵便に強制力はありませんが、相手は内容証明郵便を受け取ることで心理的プレッシャーを受けて支払いに応じる可能性があります。
③弁護士に養育費の回収を依頼する
未払い養育費について、弁護士に依頼して回収するのもひとつの手です。
弁護士に未払い養育費の回収を依頼すると次のような利点が挙げられます。
- 養育費を支払わない元配偶者に直接交渉や督促をしてもらえる
- 家庭の事情に応じた最適な回収方法を提案してくれる
- 弁護士名義で内容証明郵便を送付したり、連絡したりすることで、心理的プレッシャーを与えて養育費の回収に繋がる可能性が高まる
- 未払い養育費の回収に必要な手続きを代わりに迅速にしてもらえる
未払いの養育費の回収には法的な知識も必要となり、個人の力だけでは大変な時間や労力がかかります。
また各家庭の事情に応じた最適な回収方法は異なってきます。
弁護士に依頼すれば、弁護士費用はかかりますが、最適な回収方法で代わりに確実に実行してもらえるので、未払い養育費を回収できる可能性が高まるでしょう。
未払い養育費について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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④回収代行サービスや制度を利用する
養育費の不払いが生じたときに、民間で運営されている保証会社の養育費保証サービスを利用する方法もあります。
養育費保証サービスは、養育費の支払いが滞ったときに保証会社が養育費を立て替えてくれるサービスをいいます。
会社によって内容は異なりますが、基本的には、保証会社に保証料を支払って、保証会社が元配偶者に代わって養育費を支払う制度となります。
東京都港区や大阪市、神戸市など一部の自治体では、養育費保証サービスを利用する際の保証料について補助金を支給するところもあります。
利用を検討するにあたっては、お住まいの自治体で補助制度があるのかどうか問い合わせするのがいいでしょう。
⑤養育費請求調停の申立てをする
養育費請求調停とは、裁判官や調停委員を交えて、家庭裁判所で元配偶者と話し合いで養育費について解決を図る手続きです。
そもそも養育費の取り決めをしていなかった場合はもちろん、離婚時に養育費の取り決めを口頭のみでした場合や離婚協議書、念書など公正証書以外の書面を作成していた場合にも養育費請求調停を行う方法が有用です。
調停で元配偶者と合意ができて、調停が成立すると、調停調書が作成されます。
債務名義となる調停調書を取得し、未払い養育費を強制執行手続きによって回収することが、未払い養育費で困っているときに調停を行う最大の目的となります。
もし、調停不成立となっても、審判手続きに移行して、家庭裁判所が養育費について判断を下します。下した審判結果が確定すれば、作成された審判書に基づいて強制執行の手続きが行えます。
なお、養育費に関する調停には次の表のとおり主に3種類あります。
養育費請求調停 | 新たに養育費を取り決めたいときや、一度取り決めた養育費を変更したいときなど養育費のみについて話し合う手続き |
---|---|
離婚調停 | 離婚前に離婚の意思を確認したり、養育費などを含む離婚に関する様々な問題について話し合う手続き |
婚姻費用分担調停 | 離婚前に婚姻期間中の子供の養育費を含む夫婦の生活費について話し合う手続き |
⑥履行勧告・履行命令の申立てをする
養育費について調停や審判、裁判などで決めた場合は、履行勧告や履行命令という方法が利用できます。
・履行勧告とは:
家庭裁判所に申出を行って、裁判所が養育費の支払状況を調査したうえで、養育費がきちんと支払われていないときに、養育費を支払わない元配偶者に養育費を支払うように説得や勧告してくれる制度です。
・履行命令とは:
裁判所が養育費を支払わない元配偶者に対して、一定の期間内に養育費を支払うように命令し、命令に違反した場合には制裁金(過料)を課す制度です。履行勧告よりさらに強いものになります。
ただし、履行勧告も履行命令も、強制力はありません。
あくまでも、裁判所から履行勧告または履行命令をすることで、心理的プレッシャーを与えて、任意で養育費の支払いを促すものになります。
⑦強制執行(差押え)の申立てをする
強制執行とは、養育費を支払わない元配偶者の給与や預貯金などの財産を強制的に差し押さえて回収する方法をいいます。
養育費の取り決めを強制執行認諾文言付の公正証書や、調停や審判や裁判などの裁判所の手続きで取り決めて調停調書、審判書、判決書などの債務名義がある場合に強制執行を行うことができます。
ただし、強制執行を申し立てるには、相手に裁判所が発布する「差押命令」を送達しなければいけないので、元配偶者の居場所を把握しておかなければいけません。
さらに元配偶者の勤務先やどこの銀行に口座を保有しているかなど、元配偶者がどこに財産を保有しているか把握しておかなければ強制執行の手続きが行えませんので注意が必要です。
養育費の強制執行については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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法改正により強制執行がしやすくなった
財産開示手続きとは、養育費を滞納している元配偶者を裁判所に出頭させて財産状況を開示させる手続きをいいます。
法改正前の民事執行法でも、「財産開示手続き」制度がありましたが、裁判所の手続きであるにもかかわらず出頭率が低いなど実効性が低いと言わざるを得ませんでした。
2020年4月1日に施行された改正民事執行法では、「財産開示手続き」の実効性を高めるとともに、新たに「第三者からの情報取得手続き」を設けたため、養育費を強制執行によって回収しやすくなりました。
法改正によって、財産開示手続きに応じない者の罰則を強化して財産開示の実効性を高めるとともに、強制執行認諾文言付きの公正証書など債務名義を拡大して申立要件を緩和したことにより、元配偶者の財産の開示を求めやすくなりました。
第三者からの情報取得手続きは、銀行や年金事務所、市区町村役場などの第三者から養育費を滞納している元配偶者の財産に関する情報を取得できる新設された制度です。第三者からの情報を取得することによって、強制執行が円滑に進むことが期待できるようになりました。
未払い養育費を回収できる期限
未払い養育費を回収できる期限(消滅時効)は、養育費の取り決めの有無と取り決め方によって異なり、下記表のとおりとなっています。
養育費について取り決めていたが支払われない場合 | 話し合いで取り決めて離婚協議書、公正証書を作成している場合 | 消滅時効は、各月の養育費支払日到来から5年 |
---|---|---|
調停、審判、裁判など裁判所の手続きで養育費を取り決めた場合 | 過去の未払い分の消滅時効は10年 将来支払い分の消滅時効は、各月の養育費支払日到来から5年 |
|
そもそも養育費について取り決めていない場合 | 子供が社会的・経済的に自立するまでの間であれば、いつでも請求可能 養育費を請求してから「請求した月から」養育費を受け取れるのが基本的な考えのため、遡って過去分を請求するのは難しい |
なお、養育費の時効は、時効期限が過ぎれば、自動的に請求権が消えてしまうわけではありません。
養育費を払わない元配偶者が、「時効を過ぎているので支払いません」といった“時効の援用”をして、はじめて請求自体ができなくなります。
相手は消滅時効を気付かずに、任意で支払ってくる可能性もあるので、実際は時効期限が過ぎていても、ひとまず請求するべきです。
とはいえ、消滅時効成立後に養育費を支払ってもらえるのは稀なケースが多いので、養育費の未払いが生じたときは、できる限り消滅時効の期限内に迅速に対処するのが有用です。
養育費の時効について、下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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養育費の請求に関するQ&A
- Q:
強制執行をしても未払い養育費が回収できない場合はありますか?
- A:
強制執行をしても未払い養育費が回収できない場合はあります。
例えば、預貯金口座を差し押さえても預貯金口座の残高がほとんどなかった場合や、給与を差し押さえたけどもその会社をその後退職した場合などが挙げられます。差し押さえた預貯金口座の残高が足りなかった場合は、時期を改めて、再度同じ口座に申し立てるか、ほかの財産の調査をして差し押さえることになります。
給与の差し押さえが退職してできなかった場合は、本人に新しい勤務先を教えてもらう、もしくは第三者からの情報取得手続きや財産開示手続きなどを利用して新たな勤務先を特定して再度申し立てるなどして新たに対応策を考えて、未払い養育費の回収を試みることになります。
- Q:
別居中の未払い養育費の回収方法を教えてください
- A:
離婚が成立しておらず別居中の場合は、「養育費」ではなく「婚姻費用」を請求することができます。
「養育費」は、子供のみの生活費全般の費用ですが、「婚姻費用」は、子供の生活費全般だけでなく、他方の配偶者の生活費も含めますので、「養育費」より「婚姻費用」のほうが金額は高くなることが一般的です。
「婚姻費用」はあくまでも離婚するまで請求すればもらえるものです。離婚すると、相手(元配偶者)の生活費まで負担する義務はありませんので、離婚後に請求すればもらえるものは「養育費」となります。
「婚姻費用」について、詳しくは下記のページで解説していますので、ぜひご覧ください。
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養育費の回収は、お早目に弁護士にご相談ください
離婚をして子供を育てていくにあたり、養育費は金銭面を支える大切なものであり、子供の生活のためにも迅速に回収する必要があります。
未払い養育費の回収方法は、養育費の取り決めをしていたかどうかや、取り決めた方法などによって異なります。
未払い養育費を回収したい方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士にご相談いただければ、それぞれのご家庭の事情を伺い、ご自身の状況に沿う未払い養育費の回収が実現できるよう適切なアドバイスをいたします。
また弁護士にご依頼いただければ、養育費を支払わない相手と直接交渉することもできますし、内容証明郵便の作成、調停の申立て、強制執行の手続きなども代わりに行います。
まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)