養育費を払わない元配偶者へどうしたらいい?請求方法や時効について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚する際に養育費について取り決めていても、元配偶者からの養育費の支払いが滞るケースは少なくありません。
離婚をして親権がなくなり子供と離れて暮らすことになっても、子供の扶養義務はなくなりませんので、養育費の支払義務は続きます。
そのため、養育費を払わない元配偶者に対して、“親として当然支払うべき費用“としてきちんと請求するべきです。
そこで、本記事では、“養育費を払わない元配偶者への請求方法”や“未払い養育費の時効”など、養育費を払わない元配偶者への対処法をわかりやすく解説します。
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養育費を支払わないとどうなる?
離婚する際に養育費を取り決めたにも関わらず、継続的に養育費を受け取っている方は決して多くないのが現状です。
残念ながら、養育費を払わなかったとしても、刑事罰はありません。
まずは直接の催促や履行勧告、履行命令で支払いを促します(詳しくは後述します)。
それでも支払わないようであれば、強制執行の手続きを行って強制的に財産を差し押さえることができます。
また、強制執行を行うにあたって裁判所が養育費を支払わない元配偶者を呼び出して保有している財産を開示させる手続きである「財産開示手続」を行うことができます。
養育費を払わないことで直接の刑事罰はありませんが、2020年4月から適用された改正民事執行法により、財産開示命令が出ているにも関わらず、無視や虚偽の報告をした場合は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金刑」が科される可能性があります。
養育費を払わない元配偶者への請求方法
養育費を払わない元配偶者へ、未払い養育費の支払いを求めるときには、主に次のような流れで進めていきます。
- ①相手に支払いを催促する
- ②養育費請求調停を申し立てる(※債務名義がない場合)
- ③履行勧告を申し立てる
- ④履行命令を申し立てる
- ⑤強制執行を申し立てる
相手に支払いを催促する
まずは相手に養育費の支払いを催促します。支払日を勘違いして支払われていなかった、といったケースもあるので、ひとまず冷静になって支払うように催促してみましょう。
催促しても相手が応じないときは、「内容証明郵便」を出して請求するという手があります。内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の郵便物を送ったのかを、郵便局が証明してくれるサービスがついた郵便です。普段の生活で受け取る機会はそう多くないでしょうから、相手にプレッシャーを与えて、請求に応じてくれやすくなる可能性があります。また、確かに請求をした、という事実の証拠としても役立ちます。
養育費請求調停を申し立てる
元配偶者に督促しても養育費が支払われない場合は、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てます。
本調停を申し立てるのは、養育費について夫婦間の話し合いで口約束や離婚協議書で取り決めているだけで、「強制執行認諾文言付公正証書」を作成しておらず、債務名義をもっていない場合になります。
養育費請求調停では、調停委員を介して養育費について話し合います。
当事者双方が合意できれば調停は成立し、「調停調書」が作成され、債務名義となります。
調停で合意できなかった場合には、調停不成立となって審判手続きに移行して、裁判所が一切の事情を考慮して養育費について判断します。審判が確定したときも「審判書」が作成され、債務名義となります。
養育費調停について、詳しい内容は下記ページでご覧ください。
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履行勧告を申し立てる
履行勧告とは、家庭裁判所の手続きで決まった養育費の支払い等を守らない者に対し、家庭裁判所が「支払うように」と勧告する手続きです。調停や審判など、家庭裁判所の手続きで養育費を決めた場合に、「履行勧告」の申立てが可能になります。
費用はかからず簡単な手続きといえますが、履行勧告でできるのは、あくまでも任意の支払いを促すことのみです。強制力はないので、養育費の支払いを強制することはできませんし、勧告を無視しても罰則はありません。
履行命令を申し立てる
履行命令は、家庭裁判所の手続きで養育費を取り決めた場合に、養育費を支払わない元配偶者に対して、一定期間内に養育費を支払うように家庭裁判所から「命令」してもらう手続きです。
履行命令は、履行勧告より厳しいものとなり、正当な理由なく従わない場合には、10万円以下の過料の支払いが命じられる可能性があります。
よって、履行勧告より心理的プレッシャーを与えられると考えられます。
ただし、履行勧告と同様に養育費の支払いを強制することはできません。
強制執行を申し立てる
元配偶者に直接の催促や調停、履行勧告、履行命令を行っても、取り決めたとおりに養育費が支払われない場合は、強制執行の申立てを行う方法があります。
強制執行は、養育費を支払ってくれない元配偶者に対して、元配偶者の給与や預貯金などの財産を強制的に差し押さえる手続きをいいます。
強制執行をするためには、強制執行認諾文言付公正証書や調停調書、判決書などの執行力のある債務名義が必要となります。
当事者間で交わした離婚協議書や口約束などでは強制執行はできません。
また、元配偶者の住所と差し押さえたい財産の情報を把握しておく必要があります。
養育費を強制執行(差し押さえ)する方法について、詳しい内容は下記ページでご覧ください。
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差し押さえることができる財産
未払い養育費の強制執行で差し押さえが可能な財産には、次のようなものがあります。
- 【債権】
- 給与
- 預貯金
- 生命保険の解約返戻金
- 【不動産】
- 土地、建物
- 【動産】
- 現金(66万円を超える現金)
- 自動車
- 貴金属、骨董品など
差し押さえられる財産の中で、養育費の未払い分を回収できる可能性が高いのが給与と預貯金です。
給与については、給与の手取り額の2分の1まで差し押さえが可能で、未払い分だけでなく将来支払ってもらう分まで継続的に差し押さえられます。
預貯金は、回収できる金額の範囲に制限がないので、差し押さえた時点でまとまった未払い分の養育費を回収できる可能性があります。
他方で、残高がわずかな口座だった場合は、残高分だけ差し押さえるか差し押さえを取り下げるケースもあり得ます。
強制執行のメリット・デメリット
強制執行のメリットとデメリットは下表のとおりになります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
強制執行は、元配偶者の職場がわかっている、十分な財産があるという場合なら、元配偶者が支払いを拒否しても強制的に回収できるので有効な手段です。
しかし、元配偶者の職場や財産、住所などの情報がわからなければ、調査からはじめなければいけません。時間と労力をかけて情報を入手できてから強制執行を行うことになりますが、財産がなければ、結局未払い養育費分を回収できないおそれがあります。
養育費の取り決め方法によっては強制執行ができない
養育費の取り決め方法によっては、未払いが発生しても、すぐには強制執行ができないことがあります。
【強制執行ができる場合】
・夫婦間の話し合いで取り決めをして、その内容を「強制執行認諾文言付の公正証書」に残していた場合
・裁判所の手続き(調停・審判・裁判など)で取り決めをした場合
【強制執行ができない場合】
・夫婦間の話し合いで取り決めをして、口約束で終わらせている場合
・夫婦間の話し合いで取り決めをして、その内容を「離婚協議書」にまとめただけで、「強制執行認諾文言付の公正証書」にしていない場合
まとめると、強制執行ができるのは債務名義がある場合、できないのは債務名義がない場合です。
強制執行できない場合の対処法
強制執行は、強制執行認諾文言付公正証書や調停調書、審判書などの債務名義がなければ、強制執行できません。
強制執行できない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てて、改めて養育費について取り決めし直す必要があります。
しかし、養育費を支払わない元配偶者は、調停を申し立てたからといって、素直に調停に出席するのか、出席しても養育費について合意できるのかは通常の養育費請求調停よりハードルは高いといえます。
元配偶者と折り合いがつかずに調停が不成立となったとしても、次の手段があります。
調停不成立後は自動的に審判に移行しますので、裁判所が一切の事情を考慮して養育費について判断を下します。
調停で成立すれば、「調停調書」、審判が確定すれば「審判書」が作成され、強制執行が可能となります。
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メールで相談する養育費が免除・減額されるケースがある
養育費を決めた時から何かしらの事情の変更があり、養育費の金額が現在の実情に合わなくなった場合、事情によっては、養育費が免除・減額されることがあります。具体的にどのようなケースで免除・減額される可能性があるのか、確認していきましょう。
免除されるケース
受け取る側が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組をした
養親となった再婚相手が子供の扶養義務を第一に負い、養育費を負担することになります。そして、再婚相手の収入でカバーできない分の養育費は、元配偶者が負担します。そのため、再婚相手の収入次第では、免除となる場合もあるのです。
子供が就職した
子供が大学に進学することを想定して、養育費の取り決めをしていたご家庭もあるでしょう。しかし、実際には大学に進学せずに就職した場合、子供は経済的に自立できたとして、養育費の免除が認められる可能性があります。
再婚したからといって必ずしも免除・減免されるわけではありません。
再婚を理由に養育費の免除や減免は認められるのかについて、詳しい内容は以下のページをご覧ください。
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減額されるケース
支払う側の収入が大幅に減った
支払う側が病気やケガをして思うように働けなくなったり、リストラされて失業したりして、収入が大幅に減った場合は、養育費を取り決めたときには予期できなかった事情の変更があるとして減額が認められる可能性があります。
支払う側が再婚し、扶養家族が増えた
支払う側が再婚して扶養家族が増えた場合、再婚して増えた扶養家族を考慮して、元配偶者との間の子供の養育費を考えるのが公平です。そのため、減額されることがあります。
受け取る側の収入が大幅に増えた
養育費の金額は、当事者双方の収入に応じて決められます。
したがって、受け取る側が就職や転職、昇進などで大幅に収入が増えた場合は、減額が認められる可能性があります。
養育費を減額できるケースや方法について、詳しい内容は下記ページでご覧ください。
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未払い養育費の時効は5年または10年
未払い養育費を請求する権利には時効があり、次のように、養育費の取り決め方法によって時効期間は異なります。なお、どちらも「支払日の翌日」から数えます。
取り決め方法 | 時効期間 |
---|---|
夫婦間の話し合い (公正証書を作成していた場合も含む) |
5年 |
調停・審判・裁判といった裁判所の手続き | 10年 ※裁判所の手続きが確定した時点で、すでに支払日を迎えていた分のみ。以降に発生する将来分は、「5年」となる。 |
養育費は、「毎月○万円」というかたちで支払っていくのが一般的です。その場合、養育費が未払いとなった月ごとに請求権は発生し、順々に時効にかかっていくようになります。
養育費を払わない元配偶者について弁護士に依頼するメリット
元配偶者から養育費を払われずに困っている場合に弁護士へ依頼すると、次のようなメリットがあると考えられます。
養育費の支払いに応じる可能性が高まる
弁護士から元配偶者に連絡をしたり、弁護士名で内容証明郵便を送付すると、心理的プレッシャーを与えられて、すんなりと支払いに応じる可能性が高まります。
未払い養育費の請求・回収に最適な方法を提案してもらえる
ご依頼者様それぞれの個別の状況を確認したうえで、どのような方法が最も未払い養育費を請求・回収できるかを法的観点から検討してアドバイスしてもらえます。
煩雑な手続きを任せられる
未払い養育費を請求・回収する方法には、調停や強制執行など様々な手続きがあります。手続きには法律の専門的知識も必要になるため、ご自身だけで対応するのは大変です。難しい手続きを弁護士に任すことで、手間をかけずに回収ができます。
弁護士の介入による養育費の未払い問題の解決事例
弁護士のアドバイスにより即座に調停を起こし、未払いの養育費を回収できた事例
【事案概要】
ご依頼者様は、相手方と離婚を前提に話をしていたところ、相手方に半ば強引に離婚届を書かされ、提出されてしまいました。
その後、相手方から低額な養育費を提示され、今後どのように養育費や財産分与の話を進めていくべきか悩まれてご相談に来られました。
【弁護士方針・弁護士対応】
担当弁護士は、これまでの経緯を聞いて任意の支払いは期待できないと判断し、即座に養育費調停を起こすべきと考えました。遠方の実家に戻るご依頼者様に代わって弁護士が調停に出席し、十分な養育費を獲得できるように動いていくことになりました。
【結果】
子供2人分の養育費として月額17万円の支払いをしてもらう内容で調停が無事に成立しました。
併せて、即座に調停を申し立てていたため、離婚直後から未払い分として養育費を回収することができました。
転職によって給与より高くなってしまった養育費を減額させた事例
【事案概要】
ご依頼者様は、離婚時に養育費として月額30万円を支払うという内容で合意して公正証書を作成していました。
しかし、従前の仕事を解雇されて転職先の給与は月額25万円という状況になり、給与より高い状態の養育費を減額したいとご相談に来られました。
【弁護士方針・弁護士対応】
担当弁護士は、速やかに養育費減額調停の申立てを行うべきだと助言し、受任して1週間後に調停を申し立てました。
【結果】
相手方からは、養育費には扶養的な財産分与も含まれている、解決金として100万円を支払えなど、様々な反論がされました。当方としては、収入が当時から減少したこと、養育費算定表上では数万円にしかならないことを反論しました。
その後、裁判所から折衷案として月額15万円の提示がなされ、双方が合意して、調停が無事に成立しました。
養育費の未払いでお困りなら弁護士法人ALGまでご相談ください
養育費は、子供が健やかに成長するために大切なお金です。
また子供が経済的・社会的に自立するまで長い年月に渡って支払ってもらうものですので、長期間養育費が払われていない状態が続けば、損失はかなり大きいものになります。
元配偶者から養育費が払われずお困りの方は、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。
本記事で解説したとおり、適切な対処法をとれば、未払い養育費を回収できる可能性があります。
しかし、強制執行をはじめ手続きには複雑なものもあり、法的知識が必要となります。
仕事や子育てをしながらご自身のみで対応するとなると、時間や労力がかかり、想像以上に大変です。
弁護士法人ALGにご依頼いただければ、煩雑な手続きをすべて弁護士が行い、早期解決できるように尽力いたします。
まずは、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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メールで相談する- 監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)