二世帯住宅の離婚 | ローンや財産分与について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
親の高齢化や仕事の都合、経済的事情等、様々なきっかけがあり、二世帯住宅にしているご家庭も珍しくありません。二世帯住宅にすることで、親世帯と子世帯の交流をより図りやすくなります。ですが、一方の配偶者にとっては、義両親と同じ屋根の下で生活することになるため、多少なりとも気を遣ってしまうのではないでしょうか。
二世帯住宅で暮らすなかで、ストレスを感じるようになったり、義両親との関係性がうまく築けなかったり、夫婦仲が悪化してしまったりしたら、離婚を考えることもあるかと思います。本記事では、「二世帯住宅と離婚」をテーマに、解説していきます。
この記事の目次
二世帯住宅を理由に離婚することができるのか
離婚協議や離婚調停の場合、夫婦の合意により離婚が成立しますので、相手の同意が得られれば、離婚したいと思われた理由に関係なく、離婚できます。しかし、離婚裁判の場合、離婚が成立するかどうかは裁判所が判断し、法定離婚事由(民法770条)に該当するとされなければ、離婚は認められません。
「二世帯住宅だから」という理由だけでは、裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいです。しかし、二世帯住宅が嫌になったのには何かしら原因があるかと思います。その原因によっては、離婚を認めてもらえるケースもあります。
例えば、二世帯住宅で同居している義両親と不仲になり、そのことを配偶者に相談しても、聞き流されたり、改善しようと働きかけてくれなかったりして夫婦関係が悪化し、離婚を決意するに至ったというようなケースでは、法定離婚事由のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとされる可能性があります。
離婚の話し合いが困難な場合は弁護士に相談してみましょう
離婚裁判を行うことになったら、離婚できるかどうかは、裁判所の判断に委ねられます。離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由に該当する必要がありますが、二世帯住宅を理由にした離婚では、認めてもらうことは難しいといえます。そのため、離婚協議の段階で、相手の同意を得て離婚を成立させたいと思われる方が多いでしょう。
とはいっても、感情的になってしまい、当事者間ではなかなか話し合いがまとまらないこともあります。そのようなとき、弁護士に相談することで、法的観点を踏まえて、どのように話し合いを進めていくべきか、ご自身の状況に合わせたアドバイスを受けられます。また、相手と直接話し合いたくないという方にとっては、相手との交渉を弁護士に代わりに行ってもらうことも可能ですので、精神的負担を軽減することができます。離婚したいと考えているものの、相手との話し合いについてお困りの場合には、離婚問題に強い弁護士に、ぜひお気軽にご相談ください。
二世帯住宅に住んでいて離婚の原因になりやすいこと
二世帯住宅に住んでいて、離婚したいとまで思うようになる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。離婚の原因になりやすいこととしては、大きく分けて、「同居している義両親との問題」と「夫婦間の問題」が考えられます。
同居している義両親との問題
自分の両親ならともかく、配偶者の両親である義両親と暮らすとなると、全く気を遣わないというのは難しいかと思います。趣味趣向や味の好み、考え方が義両親と違うこともあるでしょう。二世帯住宅に住んでいると、食事を共にすることや交流する機会が多いため、どうしてもこのような違いが影響してきてしまいます。そうして日々のストレスや不満が積み重なったり、義両親と不仲になってしまったり等、義両親との問題が生じることが、離婚の原因になってしまう場合があります。
夫婦間の問題
二世帯住宅に住んでいて、義両親との問題が生じているにもかかわらず、肝心の配偶者が我関せずの態度であったり、相談しても何も策を講じてくれなかったりしたら、配偶者に対する不満は募るでしょう。そのうえ、家事や育児にも協力的ではない場合、夫婦喧嘩が絶えなくなってしまうこともあるかと思います。このような夫婦間の問題が生じることで、離婚を決断される方もいます。
二世帯住宅の種類
「二世帯住宅」の明確な定義はありませんが、一般的には、親世帯と子世帯の二世帯が住む家という意味で使われています。また、二世帯住宅は、間取りや構造等の違いによって主に3種類に分けられます。次項より、確認していきましょう。
完全同居型
完全同居型は、寝室といったプライベートな部屋以外、玄関から内部の設備すべてを二世帯で共用するという種類の二世帯住宅です。他の種類に比べ、建築費用を抑えられる、二世帯の交流を図りやすい等のメリットがある一方、プライバシーが確保しづらい等のデメリットがあります。
部分共用型
部分共用型は、玄関や浴室等、設備の一部を共用し、居住空間は各世帯で分けるという種類の二世帯住宅です。例えば、玄関は一つで、1階は親世帯の居住空間、2階は子世帯の居住空間にする、といった構造の住宅が当てはまります。適度にプライバシーを確保しつつ、二世帯が近い距離で暮らせるといった、完全同居型と完全分離型の中間的なタイプになります。ですが、親世帯と子世帯で生活リズムが異なると、共用部分の使用方法で揉めることがある等のデメリットもあります。
完全分離型
完全分離型は、玄関も含め、すべての設備を各世帯で分けるという種類の二世帯住宅です。他の種類に比べ、プライベートが確保しやすいのが大きなメリットですが、すべての設備を二世帯分造らなければならず、その分建築費用がかかる等のデメリットもあります。
離婚時に二世帯住宅のローンが残っている場合
離婚時に二世帯住宅のローンが残っている場合、残ローンが家の評価額を下回っている(アンダーローン)というケースでは、評価額から残ローンを差し引いた額を財産分与していきます。一般的には、売却して現金化したうえで分け合ったり、一方の配偶者が住み続けて代償金を他方に与えたりといった方法で、財産分与していくことが多いです。
対して、残ローンが家の評価額を上回っている(オーバーローン)というケースでは、財産分与はプラスの財産を分け合うものであるため、財産分与の対象にはなりません。ローンを組んだ者は、離婚後も債務者として返済義務を負うことになります。
なお、金融機関の承諾を得ることができれば、債務者を変更することが可能です。特に二世帯住宅の場合には、購入費用が高額になりやすいため、親子リレーローンや親子ペアローンというローンの組み方が利用されることがあります。
親子リレーローンとは、当初は親がローンを返済し、後に子が返済を引き継ぐという方法で、借入期間を長くしたいときに利用されることが多いです。また、親子ペアローンとは、親と子がそれぞれでローンを組んで返済していくという方法で、全体的な借入金額を増やしたいときに利用されることが多いです。このようなローンの組み方をした場合でも、離婚したからといって債務者は返済義務を免れるわけではありません。
二世帯住宅の財産分与の方法
二世帯住宅の残ローンが家の評価額を下回っている(アンダーローン)というケースでは、評価額から残ローンを差し引いた額を財産分与していくことになります。その際、通常タイプの家の場合と同様に、原則2分の1ずつの割合で分けていきます。家の財産分与についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
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二世帯住宅の財産分与についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう
離婚する際、家の財産分与について揉めてしまうことは多くあります。なかでも、二世帯住宅の場合には、親世帯と同居していることや、購入費用が高額になる傾向があること等から、名義やローンの組み方が通常より複雑になり、さらに問題となりやすいでしょう。
二世帯住宅の財産分与に関して生じた争いを早期に解決し、スムーズに離婚を進めるためには、弁護士への相談をお勧めします。法律の専門家である弁護士が介入することで、話し合いがまとまる可能性が高まります。また、ご相談者様の状況に応じた適切なアドバイスを受けることで、二世帯住宅のローンの返済等で後に不利益を被るという事態になるのを防ぐことにも繋がります。二世帯住宅の財産分与について、ご不明な点がある場合には、まず弁護士にご相談ください。
義両親との同居が原因で離婚した場合の慰謝料について
二世帯住宅に住んでいて、義両親との同居が原因で離婚した場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
同居している義両親との問題が生じているにもかかわらず、配偶者が解決に向けて何も行動してくれなかったり、相談しても聞く耳を持ってくれなかったりして離婚に至っているのであれば、義両親との問題の内容や配偶者の対応等の具体的事情によりますが、配偶者に対し、精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求できる可能性があります。
また、義両親から嫌がらせやいじめを受けていた場合には、それらの行為について、義両親に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。
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二世帯住宅に住んでいた場合の親権について
離婚時に未成年の子がいる場合には、夫婦のどちらが親権を得るかを決める必要があります。二世帯住宅に住んでいて、同居している義両親から「親権を夫(妻)に渡せ」と言われても、従う必要はありません。通常の離婚の場合と同様に、親権者を決めていきます。親権についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
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- Q:
二世帯住宅が嫌で別居した場合は離婚が成立しますか?
- A:
別居期間が相当長い場合(一般的には3年程度)には、婚姻関係が破綻していると判断され、法定離婚事由のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。しかし、夫婦には同居義務があるため、相手の同意を得てから別居した方が良いでしょう。
相手の同意を得ずに別居した場合、「悪意の遺棄」という法定離婚事由に該当するとして、裁判所に離婚の請求を認めてもらえなかったり、相手から慰謝料を請求されたりするおそれがあります。ただし、相手からDVを受けている、義両親から嫌がらせやいじめを受けている等で別居しており、別居に正当な理由があると認められれば、悪意の遺棄に該当するとされることはありません。
別居についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
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- Q:
離婚してもしばらく二世帯住宅に元配偶者と同居し続けた場合、児童扶養手当はもらえますか?
- A:
児童扶養手当は、児童を養育するひとり親家庭の生活の安定を図るための制度であり、事実婚をしている場合には支給されません。離婚後もしばらく元配偶者と同居を続ける場合、事実婚の状態にあるとみなされてしまい、児童扶養手当はもらえない可能性が高いといえます。
ただし、離婚後同居せざるを得ない理由がある、元配偶者からの扶養は受けていない等、児童扶養手当が必要な事情を説明することで、自治体によっては児童扶養手当を支給してもらえるケースもあります。
- Q:
同居していた相手の親から生活費を援助してもらっていた場合、離婚のときに返さなくてはいけませんか?
- A:
ご質問のケースでは、ご質問者と元配偶者の双方に対する贈与であると考えられるため、離婚時に相手の親に対し、援助してもらっていた生活費を返す必要はありません。
なお、離婚する際に、生活費の援助が貸付と贈与のどちらに当たるかで争いになることがありますが、貸付であると認められた場合には、返さなければならない可能性があります。
- Q:
二世帯住宅に住むときに婿養子として入りました。離婚を前提に別居するので養子縁組を解消することはできますか?
- A:
婚姻関係を解消する「離婚」と、養子縁組を解消する「離縁」は別物として扱われます。そのため、養子縁組をした相手の親(養親)と話し合い、当事者間で離縁について合意に達すれば、離婚前の段階で離縁することはできます。当事者間での協議が成立しない場合には、調停や裁判を行うことになります。
なお、裁判で離縁することを認めてもらうには、民法814条で定められている、「①他の一方から悪意で遺棄されたとき」「②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき」「③その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき」の3つの事由のいずれかに該当している必要があります。
そして、協議や調停、裁判を経て離縁が成立したら、各市区町村役場に養子離縁届を提出して、手続は完了します。
- Q:
離婚調停中に二世帯住宅から妻(夫)を追い出すことはできますか?
- A:
離婚が成立する前の段階では、夫婦には同居義務があり、かつ、二世帯住宅は夫婦の共有財産でもあるため、妻(夫)を二世帯住宅から追い出すことは難しいといえます。正当な理由なく追い出した場合には、法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」に該当する可能性があり、追い出した妻(夫)から慰謝料を請求されることもあります。
- Q:
二世帯住宅を離婚後に売却したいのですが、反対している元夫の意見は聴かないといけませんか?
- A:
離婚時に、二世帯住宅の財産分与について取り決めた際、元夫とご質問者との共有名義にしていた場合は、元夫の同意を得なければ、二世帯住宅を売却することはできません。元夫が反対していて売却できない場合には、共有物分割請求を行い、二世帯住宅の共有状態を解消するという対応をとっていくことになります。
お困りなら弁護士に相談・ご依頼ください
二世帯住宅に住んでいて、同居している義両親との問題や夫婦間の問題が生じ、離婚したいと考える方は多くいらっしゃるかと思います。義両親と不仲になり、配偶者も自分の味方にはなってくれないのであれば、日々の暮らしに耐えられなくなるのは想像にたやすいことです。
いざ離婚を進めようとしても、二世帯住宅の場合、特に家の財産分与で揉めるおそれがあります。また、離婚するために裁判を行うことになったら、二世帯住宅のみを理由に、裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいです。二世帯住宅で暮らしていくなかで生じた離婚原因によっては、離婚を認めてもらえる可能性もありますが、その判断は個別の事情によって異なります。
法律の専門家である弁護士であれば、離婚の進め方や、家の財産分与を含めた離婚条件について、適切なアドバイスをすることが可能です。また、ご依頼者様に代わって弁護士が相手方とやりとりをしたり、裁判所の手続を要することになっても、必要な手続を代行したりすることもできます。
離婚したいけれど、二世帯住宅についてお困りのことがある場合や、ご自身だけで進めていくのに不安を抱かれている場合には、弁護士に相談・依頼することをご検討いただければ幸いです。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)