離婚に強い法律事務所へ弁護士相談|弁護士法人ALG

ハーグ条約とは?仕組みや子の返還手続きについてわかりやすく解説

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

近年、国際結婚の増加により、国際離婚も増えています。子供の両親が不和になり、どちらか一方の親が、勝手に子供を海外に連れ去ってしまう事件が起きるようになり問題視されています。
そこで、子供を保護するために、迅速な解決と連れ去りの抑止などを目的として定めた国際ルールが「ハーグ条約」です。

本記事では、ハーグ条約の内容やハーグ条約を日本が締結して変わったこと、ハーグ条約による子供の返還手続きなどをわかりやすく解説します。

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

お電話でのご相談受付

0120-979-164

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールでのご相談受付

メールで相談する

1人で悩まず弁護士にご相談ください

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

0120-979-164 無料電話相談受付中

24時間予約受付・年中無休・通話無料

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

ハーグ条約とは

ハーグ条約とは、国境を越えて子供が不法に連れ去られたり、不法に留め置かれた場合に子供を元の居住国に返還する手続きや国境を越えた親子の面会交流を実現するための締結国間の協力などについて定めた条約をいいます。
正式名は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といいます。

1980年(昭和55年)に成立した条約ですが、日本は長年未加盟でした。
日本が未加盟であることによって、日本から子供が連れ去れた場合に連れ去られた先の国の子供の返還を要求できないという問題が生じていました。
他方で、日本がハーグ条約を未締結であることを理由に、日本人親が子供と一緒に居住している国から日本へ一時帰国することができないといった事態も生じていました。

それらの問題を解決していくため、ハーグ条約に日本も加盟し、2014年(平成26年)4月1日から発効しています。

ハーグ条約の締約国

ハーグ条約の締結国は、現在日本を含めて103ヶ国となっています。(2024年8月1日現在)

例えば、日本人とカナダ人が国際結婚をして、カナダで結婚生活を送っていた夫婦の一方が、日本に子供を勝手に連れ去って、もう一方の親に会わせないといった場合、日本とカナダはどちらもハーグ条約の締結国ですので、ハーグ条約を利用して返還手続きが行えます。

しかし、中華人民共和国(香港・マカオを除く)や台湾など、元の居住国もしくは連れ去られた国がハーグ条約の未締結国の場合は、ハーグ条約は適用されません。

外務省領事局ハーグ条約室が公表している現在のハーグ条約の締結国一覧は下記ページに記載していますので、ぜひご覧ください。

締結による日本での変化

日本がハーグ条約を締結する前は、国境を越えて子供の連れ去りがあった場合は、子供を連れ去られた親が異なる法律、文化の壁を乗り越えながら、自力で子供の居場所を探し出し、外国の裁判所に子供の返還を求めなければなりませんでした。
そのほかにも、外国で生活している日本人が、子供を一緒に日本に一時帰国しようとしても、許可されないといった問題点が発生していました。

しかし、日本がハーグ条約を締結したことによって、相手国から子供を連れ戻すための手続きや親子の交流機会の確保のための手続きがスムーズに進められるようになりました。

ハーグ条約による子供の返還請求が認められる要件

子供の返還請求が認められるには、まず前提として、返還事由をすべて満たしている必要があります。日本で返還手続きをする場合(外国から日本に子供が連れ去られた場合)には、次の4つの返還事由が定められています。

  • ①子供が16歳未満であること
  • ②子供が日本国内に所在していること
  • ③連れ去った当事者の行為が、元いた国の法令での「監護権の侵害」にあたること
  • ④連れ去り・留置(期限付きで子供を外国に連れて行ったのに、期限を過ぎても子供を帰さないこと)の開始時に、元いた国がハーグ条約の加盟国であること

返還拒否が認められる事由

ハーグ条約では、子供の返還請求が認められる要件を満たしていても、次の6つのいずれかがあると認められ、子供を返還することが子供の利益にならないとされる場合は、子供の返還を命じてはならないとしています。

  • ① 連れ去りまたは留置開始のときから1年以上経過した後に裁判所に申立てがされ、かつ、子供が新たな環境に適応している場合
  • ② 申立人が連れ去りまたは留置開始のときに子供の世話をしたり面倒をみたりしていなかった場合
  • ③ 申立人が連れ去りや留置の前に同意していた、または事後承諾していた場合
  • ④ 元の居住国に返還することによって、子供への虐待やDVなどがあって子供の心身に害悪を及ぼすこと、そのほか子供を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合
  • ⑤ 子供が元の居住国に返還されることを拒んでいる場合(子供の年齢や発達の程度に照らして子供の意見を考慮することが適当である場合)
  • ⑥ 元の居住国に子供を返還することが人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合

ハーグ条約による子供の返還手続きの流れ

ハーグ条約による子供の返還手続きの主な流れは、次のとおりとなります。

  1. ① 中央当局への申請
  2. ② 連れ去った親と子供の所在調査
  3. ③ 協議による解決の促進
  4. ④ 裁判所への申立て

本記事では、日本で手続きをする前提で、次項より詳しく解説していきます。

①中央当局への申請

中央当局への申請は以下の流れで行います。

① 日本の中央当局に子供の日本への返還を実現するための日本国返還援助を申請します。
中央当局指定の申請書に必要書類を添付して外務省に送付します。申請書は、日本語または英語で日本の中央当局に提出することが可能ですが、子供の居住する国の中央当局が受け付けている言語への翻訳が必要となる場合があります。

② 日本の中央当局は、審査を行ったあとは、次のいずれかの対応を行って、その旨を申請者に通知します。

  • 援助決定
  • 援助申請却下
  • 申請に係る子供が日本以外の条約締結国に所在していることが明らかである場合には、その国の中央当局に援助申請書および添付書類の写しの送付

②連れ去った親と子供の所在調査

申請の対象である子供や連れ去った親の所在が不明な場合には、外務省(外務大臣)が、国の行政機関や地方公共団体等の関係機関の協力を得て、情報収集を行って所在の特定を行います。

③協議による解決の促進

条約上、当事者間で話し合いができるのであれば、当事者間の合意によって問題解決するのが望ましいと考えられています。

当事者が合意による子供の返還に向けた協議のあっせんの支援を希望する場合には、中央当局は、申請者と子供の返還を妨げている方との間の連絡の仲介や裁判外紛争解決手続(ADR)機関の紹介、弁護士紹介制度の案内等の支援を行っています。

日本の中央当局である外務省の問合せ先は次のとおりです。

【外務省領事局ハーグ条約室】
〒100‐8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:03-5501-8466
Email:hagueconventionjapan@mofa.go.jp

④裁判所への申立て

当事者間の合意によって解決ができなかった場合には、子供の返還申立手続きを家庭裁判所に行います。
日本では、ハーグ条約に関する事件は、東京家庭裁判所か大阪家庭裁判所のみが管轄とされており、それ以外の裁判所で申立てすることはできません。

通常、申立てから2週間程度後をめどに第1回期日が指定されます。
期日では、当事者双方に、主張を記載した書面や裏付ける証拠資料を提出してもらい、裁判所が双方の言い分を直接聴くなどして子供を元の居住国に返還するかどうかを判断します。
必要に応じて、家庭裁判所調査官が、当事者である申立人や相手方、あるいは子供に会って事情を聴くケースもあります。

なお、手続きのなかで、和解を行うことも可能です。
また、当事者双方の同意があれば、調停手続きに付し、裁判官と調停委員を介して話し合いで合意までの解決を目指すことも可能です。

子供の返還手続きを弁護士に依頼する重要性

子供の返還申立手続きでは、手続き開始日から6週間以内に決定を行うこととしているため、迅速な手続きが求められます。
よって、当事者双方が早期に的確な主張・立証を行うことがとても重要です。

また、日本と元の居住国の法律の知識も必要となりますし、日本の家庭裁判所に提出する書類や主張はすべて日本語で対応しなければいけません。
そのため、法律の専門家である弁護士に相談・依頼して進めることをお勧めします。

弁護士であれば、代理人として申立書をはじめ書面の作成や主張・立証活動を行ってくれますので、安心して手続きを任せられます。

【2020年4月】ハーグ条約実施法の改正について

家庭裁判所で返還命令が出されていても、相手方が子供を任意に返還しない場合には、申立人は、家庭裁判所に「間接強制」の申立てをすることができます。

間接強制とは、家庭裁判所が子供の引渡しや返還に応じるまで1日●●円支払うように命じて制裁金を課すことによって、子供の返還を促す制度をいいます。それでも子供の返還がなされない場合には、執行官などが申立人(債権者)の代わりに子供の解放・返還を行う「代替執行」の申立てをすることができます。

この子供の返還の強制執行手続きの実効性を一層確保するために、ハーグ条約実施法が2019年5月に改正され、2020年4年より施行されました。
改正された要点は、次表の3点となります。

改正前 改正後
間接強制の決定から2週間を経過した後に代替執行が可能 一定条件のもとで間接強制を経ずに代替執行が可能
子供が連れ去った相手と一緒にいる場合に限って解放実施を行うことが可能 子供が連れ去った相手と一緒にいなくても解放実施を行うことが可能
第三者の占有場所で代替執行を行う場合には、当該場所の占有者の同意が必要 執行の場所が子供の住居である場合には、裁判所の許可により、当該場所の占有者の同意がなくても、代替執行を行うことが可能

ハーグ条約に関する裁判例

子供の返還請求が認められた裁判例

東京家庭裁判所 平成27年3月20日判決

家族構成:夫(トルコ人)、妻(日本人)、子供A(2歳)

事案の概要

夫と妻はトルコの方式により、婚姻しました。
夫婦と子供Aはトルコで共に生活していましたが、婚姻から2年後、妻は子供Aを連れてトルコを出国して日本に入国し、現在は日本国内で子供Aと同居して生活しています。
そのため、夫は子供Aの返還を求めました。

裁判所の判断

妻は、返還拒否事由として、子供をトルコに返還すると、夫がDV・モラハラやアルコール依存症があり、「子供の心身に害悪を及ぼし、子供を耐え難い状況に置くこととなる重大なる危険があること」と、「夫は連れ去り前にこれに同意していた」と主張しました。

しかし、裁判所は妻の主張を認めず、妻の主張は理由がないとしました。
そして、法に定める子供の返還事由が認められるが、子供の返還拒否事由は認められないとして、子供Aを返還することを命じました。

子供の返還請求が認められなかった裁判例

東京家庭裁判所 平成30年12月11日判決

家族構成:夫(スペイン人)、妻(日本人)、子供A(小学生:養子縁組済)、子供B(小学生)、子供C(幼稚園)

事案の概要

夫と妻は日本の方式により婚姻しました。妻の非摘出子であった子供Aも日本の方式に従い、養子縁組をしており、子供Bと子供Cは夫妻の実子です。
家族はスペインで生活を開始して、子供Aと子供Bはスペインの小学校に在籍していました。

婚姻から8年後、妻は子供3人とともにスペインを出国し、日本へ入国し、子供3人とともにそのまま日本国内に留まっており、夫は子供3人の返還を求めました。

裁判所の判断

子供の返還申立ては、「日本へ留置の開始から1年を経過したあとにされたものであり、子供らは日本での生活に適応している」として、返還拒否事由が認められるとして申立てを却下しました。

ハーグ条約に関するQ&A

Q:

日本でハーグ条約が締結される前に、子供の連れ去りがあった場合はどうなりますか?

A:

2014年よりも前に子供の連れ去りがあった場合、ハーグ条約に基づいて子供の返還請求はできません。
自力で子供を探し外国の裁判所で子供の返還請求をしないといけません。
しかし、ハーグ条約に基づいて面会交流を実現するための援助を要請することは可能です。

Q:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合はハーグ条約が適用されますか?

A:

日本人同士の夫婦が海外で生活していた場合でも、子供が連れ去られたとき、住んでいた国と連れ去られた先の国がハーグ条約に加盟していれば、ハーグ条約が適用されます。

Q:

配偶者に無断で子供を居住国から日本に連れて帰ることは、犯罪になりますか?

A:

父母双方が親権をもっている場合、相手の同意を得ずに国外に連れ出すことを刑罰の対象にしている国はあります。
実際に、居住国へ再入国する際に子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際指名手配される事案があります。

Q:

DVや虐待を理由に子供を連れて帰国した場合、返還を拒否できますか?

A:

相手が子供やご自身に対して、DVや虐待をしていた場合には、返還拒否事由のひとつである「元々住んでいた国への返還によって、子供の心身に悪影響を及ぼしたり、子供を耐え難い状況に陥ったりする重大な危険がある」に該当して、返還を拒否できる可能性があります。返還拒否事由であると認められるには、DVや虐待が行われていた事実を証明する証拠が必要となります。

仮に、相手によるDVや虐待の行為の事実が認められても、返還先の国によっては、DVや虐待から子供を保護する施設や制度などがある場合には、返還しても重大な危険は及ばないと判断されて、返還が認められる場合もあります。

Q:

子の返還申立ての審理中に、子供を日本国外へ連れ去られないようにするにはどうしたらいいですか?

A:

ハーグ条約に基づいて、子供の返還手続き中に、相手が子供を日本国外に連れ出すことを避けるために、返還手続きと合わせて、以下の申立てを行うことが可能です。

  • 相手が子供を日本国外に連れ出すことを禁止する「出国禁止命令」
  • 子供名義のパスポートを外務大臣に提出するように命ずる「旅券提出命令」

この命令が出されると、連れ帰った親は、子供を国外に連れ出すことはできなくなります。
また、パスポートを提出しない場合は、20万円以下の過料に処せられる可能性があります。

ハーグ条約に関する様々なご相談は、子に関する問題の経験豊富な弁護士にお任せください。

国境を越えた子供の連れ去りが生じた場合は、ハーグ条約に基づいて、早期かつ適切に手続きを進めていくことが大切です。
しかし、日本と元の居住国のそれぞれの法律の知識が必要となり、自力で対応しようとするのは困難です。

国境を越えた子供の連れ去りについてお困りの方は、ぜひ弁護士に相談・依頼して進めることをお勧めします。
弁護士であれば代わりに子供を連れ戻すためにハーグ条約に基づいて適切に返還請求の手続きを行います。

他方で、外国に居住していて、DVやモラハラが原因で外国から日本に子供を連れて帰った方も、相手方から、ハーグ条約に基づいた返還請求をされる可能性があります。
その際、弁護士であれば、DV・モラハラが原因で返還拒否事由にあてはまることをしっかり主張・立証していきます。

まずは、ハーグ条約について精通している弁護士が多数在籍している弁護士法人ALGにお気軽にお問合せください。

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

離婚問題ご相談予約受付来所相談30分無料

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

お電話でのご相談受付

0120-979-164

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メールでのご相談受付

メールで相談する

1人で悩まず弁護士にご相談ください

まずは専任の受付職員が丁寧にお話を伺います

0120-979-164 無料電話相談受付中

24時間予約受付・年中無休・通話無料

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

弁護士法人ALG&Associates 事務所情報

お近くの事務所にご来所いただいての法律相談は30分無料です。お気軽にお問い合せください。

※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。