離婚届を勝手に提出すると、相手の申し出により離婚は無効となります。
本来、離婚は当事者双方の意思に基づいて成立するものです。そのため、一方が勝手に提出したものについては、たとえ役所で受理されていても取消しが可能です。

また、無断で離婚届を出すと、罪に問われたり、慰謝料を請求されたりすることもあるため絶対にやめましょう。
「今すぐ離婚したい」「相手が離婚に応じてくれない」とお悩みの場合、ひとりで判断せず弁護士に相談することをおすすめします。

離婚届を勝手に出すリスクについて、以下で具体的に解説します。

離婚が無効になる

離婚届を勝手に出すと、離婚の成立は無効となります。

協議離婚の場合、役所は形式的なチェックしか行わないため、内容に不備がなければ離婚届は受理されるのが一般的です。
しかし、無断で離婚届が提出されたとなれば、相手は離婚の無効を求めて「離婚無効調停」や「離婚無効訴訟」を起こしてくると想定されます。また、裁判所も「離婚は無効」と判断する可能性が高いでしょう。

罪に問われる可能性がある

相手に無断で離婚届を作成したり、提出したりすると、罪に問われて逮捕・起訴されるおそれがあります。成立し得るのは、以下の犯罪です。

慰謝料を請求されることがある

離婚届を勝手に出すと、相手は違法行為により精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求してくる可能性があります。慰謝料の金額はケースバイケースですが、100万円以上となることも少なくありません。

また、離婚届を提出した目的が「不倫相手と再婚するため」という場合、悪質性が高いと判断され、慰謝料も高額になる可能性があります。

何より、無断で離婚届を提出された相手は相当な怒りや悔しさを感じていると考えられます。そのため、通常の離婚手続きよりも長期化・難航するリスクもあるため注意が必要です。

離婚届を勝手に出されるおそれがある方は、以下の方法で確認することができます。

①離婚届受理通知
夫婦の一方が単独で離婚届を提出した場合、役所からもう一方に「離婚届受理通知」が発送されます。これにより、離婚届が勝手に出されたことを把握できます。

②戸籍謄本を取り寄せる
離婚届が受理されると、数日～1週間で新しい戸籍が作成されます。戸籍謄本を取り寄せ、内容が変わっていないか確認するのもひとつの方法です。

離婚届が勝手に出されたとしても、書類に不備がなければ受理されてしまいます。
その場合、法的手段をとり、離婚が無効であることを証明する必要があります。具体的には、以下の流れで対応しましょう。

1. ①離婚無効確認調停を申し立てる
2. ②調停が不成立となった場合、離婚無効確認訴訟を起こす
3. ③離婚が無効となった場合、戸籍を訂正する

それぞれの手順について、詳しく解説していきます。

離婚無効確認調停を申し立てる

離婚の無効を求める場合、まずは裁判所に「協議離婚無効確認調停」を申し立てます。

協議離婚無効確認調停とは、夫婦の一方が無断で離婚届を出した際、離婚が無効であることを話し合いで決定する手続きです。調停委員が夫婦の間に入り、双方の意見を聞きながら話し合いを進めます。

当事者が離婚無効について合意できたら、事実確認の調査などを行ったうえで、合意に沿った「審判」が下されます。

なお、調停の申立てには、以下の書類の提出が必要です。

• 申立書3部（裁判所用、相手方用、申立人の控え用）
• 連絡先等の届出書
• 進行に関する照会回答書
• 申立人、相手方の戸籍謄本
• 離婚届の記載事項証明書

調停が不成立となった場合、離婚無効確認訴訟を起こす

話し合いでは合意できず「調停不成立」となった場合、「離婚無効確認訴訟」を起こし、離婚無効について裁判で争うことになります。
裁判では、離婚届を勝手に出されたことがわかる“証拠”を提示する必要があります。例えば、筆跡がわかる離婚届のコピー、相手とのLINEや手紙、離婚を迫られた時の日記などが証拠になり得ます。

裁判の結果、こちらの主張が正当と判断されれば、裁判所によって離婚の無効が認められます。

離婚が無効となった場合、戸籍を訂正する

調停や訴訟によって「離婚の無効」が確定した場合、自身で戸籍の訂正手続きを行う必要があります。訂正方法は、以下のとおりです。

【申請先】
当事者の本籍地または申立人の住所地の役所

【提出書類】
・審判書謄本（調停の場合）または判決書謄本（訴訟の場合）
・確定証明書
※家庭裁判所で交付してもらえます。

【提出期限】
審判または判決が確定した日から1ヶ月以内

「離婚届を勝手に出されるかもしれない」とご不安な方は、あらかじめ「離婚届不受理申出」を行うと安心です。

離婚届不受理申出制度とは、申し出た本人による直接の届出がない限り、離婚届を受理しないとする制度です。よって、相手に無断で離婚届を出されても、離婚が成立することはありません。

不受理申出の方法は、「申出書」と「写真付き身分証明書」を揃え、役所に提出します。

ただし、本籍地以外の役所に提出した場合、手続き完了まで時間がかかり、その間に離婚届を出されてしまうおそれがあります。申し出時は、本籍地の役所で行うか、できるだけ早く行動することをおすすめします。

Q:

相手が勝手に離婚届を作成し提出した場合、離婚は成立しますか？

A:

離婚届を勝手に提出されたとしても、法律上は離婚が成立してしまいます。
協議離婚の場合、離婚の理由は問われず、役所も形式的なチェックしか行いません。そのため、書類に不備がない限り、離婚届もそのまま受理されるのが基本です。

離婚を取り消したい場合、調停や訴訟を申し立て、裁判所に離婚の無効を認めてもらう必要があります。
また、あらかじめ「離婚届不受理申出」を行っておけば、相手が勝手に離婚届を出しても受理されるのを防ぐことができます。

Q:

勝手に離婚届を出すと相手にバレますか？

A:

自分ひとりで離婚届を提出しても、相手にはバレる可能性が高いです。
なぜなら、夫婦の一方が離婚届を提出した場合、もう一方には役所から「離婚届の受理通知」が届くからです。これにより、無断で離婚届を提出したことがほぼ確実に相手に伝わります。

その後、相手は離婚の無効を求め、調停や訴訟を申し立ててくることが想定されます。また、慰謝料の支払いや罰則を受けるおそれもあるため、勝手に離婚届を出すことは絶対にやめましょう。

Q:

離婚届の代筆は罪になりますか？

A:

相手の署名を勝手に行うと、「有印私文書偽造罪」にあたり、3ヶ月以上５年以下の懲役が科せられる可能性があります。
本来離婚届は夫婦の合意のもと作成されるものですので、一方が無断で作成することは認められません。

また、無断で作成した離婚届を提出すると、「偽造私文書行使罪」「電磁的公正証書原本不実記載罪」なども問われる可能性があります。

離婚の手続きをスムーズに進めるには、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

弁護士であれば、無断で離婚届を提出された場合も、調停や訴訟など適切な手続きを速やかに行うことが可能です。また、相手との交渉をすべて任せられるため、精神的にもかなり楽になるでしょう。

弁護士法人ALGは、離婚問題に精通した弁護士が揃っています。「離婚の進め方がわからない」「離婚届を勝手に出されるかもしれない」などとお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。