年金分割のための情報通知書とは?取得方法や見方について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
離婚を検討している方、また、離婚したという方でも請求期限(基本的に離婚してから2年以内)を過ぎていなければ、年金分割の手続きをすることができます。その際に必要になるのが、「年金分割のための情報通知書」です。
本ページでは、年金分割のための情報通知書とは何なのか、その見方、請求方法などについて、詳しく解説していきます。
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年金分割とは
年金分割は、離婚した際に夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれの年金にすることができる制度です。
年金分割には、元夫婦間の合意または裁判手続きにより年金の分割割合を決める合意分割と、元夫婦の一方が3号被保険者であった場合に、合意なしで年金分割できる3号分割があります。
年金分割を行うと、年金事務所が自動的に年金額を調整して、増額もしくは減額した年金を振り込んでくれます。
年金分割の対象となるのは、「厚生年金」のみです。
国民基礎年金、国民年金基金、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金などは分割の対象となりません。
年金分割のための情報通知書とは?
年金分割のための情報通知書とは、年金分割をどのぐらいの割合で行うのか決める際に必要となる情報が記載されている書類です。
この情報通知書には、次のような内容が記載されています。
- 年金分割をする側(第1号改定者)とされる側(第2号改定者)の情報
- 年金加入期間、分割対象期間
- 年金分割が可能な分割する割合の下限
そもそも、年金分割の方法には、夫婦間の合意手続きが必要な「合意分割」と夫婦間の合意が不要な「3号分割」の2種類があります。
まずは年金分割のための情報通知書を確認して、どちらの方法で分けるのかを決めたうえで、合意分割とするならどのような割合で分けるかを元夫婦間での話し合い、合意ができなければ調停や審判などの裁判所の手続きで決めることになります。
一方、3号分割の場合、分ける割合は2分の1とはじめから決まっているため、元夫婦間で合意をする必要はありません。
また、年金分割できるのかどうかについても、年金分割のための情報通知書の確認が必要です。
合意分割、3号分割について、詳しくは下記のページをご覧ください。
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公正証書を作成する際に提出を求められる
当事者間で話し合った結果、年金分割を行うこと、そして年金分割の割合について合意できたら、合意内容を書類にまとめます。というのも、実際に年金分割するには、離婚後、年金事務所への請求手続きを行わなければならず、そのときには合意したことを証明する書類が必要になるからです。
作成する書類は、次のいずれかです。
- ①年金分割合意書
- ②公正証書
- ③公証人の認証を受けた私署証書
①の書類は、当事者間で作成できます。一方、②や③の書類は、公証役場で手続きする必要があり、その際には情報通知書の提出が求められます。
話し合いで合意した後の書類の作成について、詳しくは下記のページで解説しています。こちらもぜひ参考になさってください。
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年金分割調停・審判の際に必要になる
離婚後に、夫婦間で年金分割の割合について話し合いができない、話し合いをしても合意できない、年金事務所での手続きに協力してもらえないなどの場合、年金分割の割合を定める調停・審判を利用して決める方法があります。
年金分割の割合を定める調停・審判とは、それぞれ次のような手続きとなります。
●年金分割の割合を定める調停・・・裁判官や調停委員を交えて話し合いで解決を図る手続き
●年金分割の割合を定める審判・・・書面照会や双方の意見を聞いたうえで裁判官が年金分割の割合を決める手続き
年金分割の割合を定める調停・審判を申し立てるときに、離婚成立後に取得した年金分割のための情報通知書が必要となります。
離婚成立前に取得した年金分割のための情報通知書しか保有していない場合は、再取得しなければいけません。
年金分割のための情報通知書の見方
情報通知書には、専門的な用語が記載されています。その中でも特に重要な用語を抜粋し、解説していきます。
(1)対象期間標準報酬総額
年金分割の対象期間の厚生年金保険料納付記録を当事者それぞれの生年月日に応じた再評価率を用いて現在価値に換算した合計額をいいます。
年金分割は、対象期間標準報酬総額が多い方から少ない方に対して、対象期間標準報酬総額の一部を分割します。
(2)第1号改定者、第2号改定者
第1号改定者とは、離婚した夫婦のうち対象期間標準報酬総額が多い方で、年金分割をする側で受け取る年金額が減る者です。
第2号改定者とは、離婚した夫婦のうち対象期間標準報酬総額が少ない方で、年金分割を受ける側で受け取る年金額が増える者です。
(3)按分割合の範囲
年金分割する割合の範囲をいいます。
按分割合の上限は50%(1/2)と定められています。
按分割合の下限は、年金分割を受ける側(離婚した夫婦のうち対象期間標準報酬総額の少ない方)が元々受け取る予定であった年金受給額を下回らないようになっています。
(4)対象期間
年金分割の対象期間を指し、基本的に夫婦の婚姻日から離婚日までの全期間です。
離婚前に情報通知書を請求した場合、対象期間の終期には、“年金分割情報通知書を請求した日”が記載されていますが、実際に年金分割する際は“離婚した日”を基準に計算します。
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メールで相談する情報通知書はどこでもらえる?取得方法について
年金分割のための情報通知書を取得するには、まず「年金分割のための情報提供請求書」を作成します。書式は、日本年金機構の下記ウェブページからダウンロードすることも可能ですし、最寄りの年金事務所や街角の年金相談センターで直接もらうこともできます。
年金分割のための情報提供請求書には、請求者本人と配偶者の氏名、住所、基礎年金番号、生年月日などの情報や必要事項を記載します。
記入方法等についての説明書きもありますので、参考にして記載しましょう。
取得に必要な書類
情報提供請求書を作成したら、以下の必要書類と併せて、基本的に請求者の住所地を管轄する年金事務所(公務員等の場合は各共済組合)に提出します。
(1)請求書に“個人番号”を記入した場合:「マイナンバーカード」等
請求書に“基礎年金番号”を記入した場合:「年金手帳」または「基礎年金番号通知書」(郵送の場合は、写しでも可。)
(2)婚姻期間等を明らかにできる書類
<例>「戸籍謄本」や「当事者それぞれの戸籍抄本」など
(3)事実婚の関係を明らかにする書類(※事実婚の関係にあった期間を有する場合)
例としては、次のような書類が考えられます。ただ、個別の状況にもよりますので、年金事務所等に直接相談して確認することをおすすめします。
- 「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載されている住民票
- 民生委員に発行してもらった事実婚証明書
- 被扶養者とされていることがわかる書類(例:健康保険証など)
事実婚の場合の年金分割については、下記のページで詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
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情報通知書の有効期限
年金分割のための情報通知書の有効期限は、次のとおり、離婚後に請求して取得したものなのか、離婚前に請求して取得したものなのかによって、異なります。
●離婚後・・・有効期限は特段ありません。
ただし、年金分割の請求期限は、「離婚した日から2年以内」となりますので、注意が必要です。
●離婚前・・【原則】基本的に情報提供を受けた日から離婚をした日までの期間が1年以内のものは年金分割の際に利用可能です。
【例外】情報提供を受けた日から1年以内に、年金分割の割合を定める調停や審判を申し立て、情報提供を受けた日から1年過ぎた後に調停等が成立した場合は、情報提供を受けた日から1年を超えても有効です。
情報通知書の送付先に関する注意点
年金分割のための情報通知書を請求して取得したことを、相手に知られてしまうのか気になる方もいらっしゃるかと思います。
次の表のとおり、請求した当事者が誰か、請求したのが離婚前か後かによって、誰に交付されるかが異なります。
当事者の2人が共同請求した場合は、それぞれに交付されます。
当事者のどちらか1人が請求した場合は、離婚する前であれば、請求者のみに交付されますが、離婚した後は、請求者と相手方それぞれに交付されます。
離婚した後は、相手方も情報提供の請求があったことや情報内容を確認する必要があるためです。
なお、年金分割のための情報通知書は、窓口受け取りと郵送のどちらかを選択できます。
相手と同居中で、郵便が届くと困る場合は、窓口での受け取りか送付先を別の場所にしておくのが有用です。
当事者の2人が共同で請求 | それぞれに交付 | |
---|---|---|
当事者のどちらか1人が請求 | 離婚する前 | 請求者のみ |
離婚した後 | 請求者 請求していない相手方 |
情報通知書に関するQ&A
- Q:
情報通知書を利用して年金分割の計算はできますか?
- A:
情報通知書を利用して、年金分割の計算をすることは可能です。情報通知書に記載してある「対象期間標準報酬総額」と「按分割合の範囲」をもとに、分割割合を何%にするか仮定したうえ、分割後のそれぞれの老齢厚生年金の金額を計算していきます。
年金分割の具体的な計算方法については、下記のページで詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
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- Q:
情報通知書をもらってからでないと、離婚調停を申し立てることはできないのでしょうか?
- A:
情報通知書がなくても、離婚調停を申し立てることはできます。
ただし、離婚するかどうかだけではなく、年金分割の分割割合についても、離婚調停の中で併せて取り決めたいのであれば、情報通知書を裁判所に提出する必要があります。
- Q:
年金分割の情報通知書を請求すると、秘匿している住所を相手に知られてしまいますか?
- A:
情報通知書には、請求者の住所が記載されるため、秘匿しているあなたの住所が相手に知られる可能性はあります。
例えば、離婚後に情報通知書を請求した場合には、請求者と元配偶者の両方に情報通知書が届くので、相手に住所を知られる可能性が高いでしょう。相手に知られないようにするには、年金事務所等に情報通知書を請求する際、情報通知書に住所を記載しないよう求めるという方法があります。
また、調停の手続きなどで裁判所に情報通知書を提出したことで、相手に情報通知書の写しが送付され、秘匿している住所が知られてしまうというケースもあります。こうした事態を防ぐためには、住所の部分をマスキングテープなどで隠した状態でコピーをとり、相手方への送付用として提出するといいかと思います。
年金分割のための情報通知書について心配なことがあれば弁護士にお任せください
年金分割は、離婚後の老後の生活を少しでも豊かに暮らせるようにするためのものです。
そして、“年金分割のための情報通知書”は、年金分割の手続きを行う上で欠かせない書類となります。
年金分割のための情報通知書について心配なことがあれば、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、情報通知書の見方のアドバイスはもちろん、情報通知書を参考にして、代わりに直接相手と年金分割の割合について話し合うことも可能です。
話し合いで解決できなかった場合は、調停や審判などの裁判所の手続きを一任することもできます。
まずは、お気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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