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浮気・不倫の離婚慰謝料の相場や請求できる条件

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

配偶者の不貞行為が発覚して離婚することになり、精神的苦痛を被った場合は、配偶者に対して離婚慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚慰謝料を請求したいと考えても、どのくらいの慰謝料が相場なのか、どのように請求するのかなどわからない点や不明な点などがあるかと思います。

そこで、本記事では、不貞行為による離婚慰謝料の相場や請求できる条件、請求する方法などをわかりやすく解説していきます。
配偶者の不貞行為が原因で離婚に至り、離婚慰謝料を請求したいとお考えの方は、ぜひ参考になさってください。

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浮気・不倫が原因の離婚慰謝料の相場はいくら?

浮気・不倫が原因の離婚慰謝料の相場は、およそ200万~300万円とされています。

相場はあくまでも目安となります。
婚姻期間の長さや子供の有無、不貞行為の期間、回数、悪質性といった夫婦関係や不貞行為の内容などの個別の事情によって金額は変わってきます。
不貞行為をされた側が、不貞行為が原因で離婚に至ったことによって被った精神的苦痛の大きさが大きいほど、慰謝料の金額は高額になる傾向にあります。

離婚慰謝料の相場について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

浮気の慰謝料が高額になる10の要素

不貞行為の慰謝料は、当事者間の話し合いによって決める場合は、金額に上限はなく自由に決められます。
よって、当事者間で合意できれば、相場より高額な慰謝料を支払ってもらうことが可能です。

しかし、そのようなケースは稀であり、調停や裁判など裁判所の手続きで慰謝料を請求した際には、相場の範囲内で慰謝料の金額になるのが一般的ですが、個別の事情によっては慰謝料が高額になる場合もあります。

具体的に、不貞行為の慰謝料が高額になる10の要素を下記表にご紹介します。

婚姻期間 浮気された側の心情の配慮や離婚後の新生活の再スタートが難しくなりやすいことから婚姻期間が長いことは増額要素とされます。
浮気をしていた期間 浮気していた期間が長ければ長いほど、浮気された側の精神的ダメージが大きいと考えられるため慰謝料は高額になる可能性があります。期間が数ヶ月程度であれば短いと判断されやすいでしょう。
浮気の回数・頻度 浮気の回数・頻度が多いほど、浮気された側の精神的苦痛は強いと判断されるので、慰謝料が高額になる要素となります。数回程度であれば少なく、20回以上だと多いと判断される傾向にあります。
浮気の悪質性 浮気がわかるような堂々した言動や、今後一切浮気相手と連絡とらないと約束したにも関わらず、その後も浮気を続けていた場合などは、悪質性が高いと評価されて、浮気された側の精神的ダメージは大きいとされるため増額要素となります。
子供の有無・人数 両親の離婚は子供に与える影響は大きいと考えられるため、子供がいれば高額になる要素となります。子供がまだ幼かったり、人数が多かったりすると、離婚による経済的負担や精神的負担が考慮され、さらに高額になる傾向にあります。
離婚するかしないか 浮気によって離婚をした場合の方が、生活環境の変化や精神的ダメージを考えると高額になる傾向にあります。
浮気への謝罪の有無 配偶者や浮気相手が社会的制裁を受けたり、謝罪をされたりした場合は、精神的苦痛は軽減されたと評価され、慰謝料の減額要素になります。一方で謝罪や反省が一切ない場合は、精神的苦痛も大きくなると考えられて、慰謝料の増額要素となります。
浮気相手の認識・意図 浮気相手が、既婚者だと認識しながら浮気を繰り返していたり、故意に夫婦関係を破綻させるように仕向けたりした場合は、浮気相手の悪質性は高いと考えられ、増額要素となります。
精神的苦痛 精神的苦痛が大きければ大きいほど高額になる要素となります。
自分自身の落ち度 配偶者が浮気した原因に、何かしらの自分自身の落ち度(DVやモラハラをしていたなど)があれば、慰謝料の減額要素となります。

離婚しない場合の浮気の慰謝料相場

離婚しない場合の浮気の慰謝料相場は、50万~100万円程度です。
離婚した場合よりも相場が低額になっているのは、浮気が原因で離婚した場合と比べて、被った精神的苦痛の度合いが低いと評価されるためです。

なお、離婚しない場合は、配偶者に対して慰謝料請求をしても、家計を同じにしている夫婦であれば、家庭のなかでお金が動くだけですので、浮気相手のみに慰謝料請求するという選択を取る方が多いです。

浮気(不貞行為)で500万円の慰謝料が認められた裁判例

昭和49年(ネ)第131号 東京高等裁判所 昭和52年2月28日判決

【事案の概要】

結婚後2年経過した頃、夫は海外で配偶者以外の女性と肉体関係をもち、帰国後、妻との同居を拒みました。また、生活費の交付を一切しませんでした。
その後、夫は別の配偶者以外の女性と同棲して子供をもうけました。

【裁判所の判断】

裁判所は、結婚期間は短いが、婚姻関係が破綻した原因は、夫の浮気、妻との生活を放棄したことにあると認めました。そして、当事者双方の経歴、資産収入、婚姻の期間、離婚の原因など諸般の事情を考慮して、夫に対して慰謝料500万円の支払いを命じました。

浮気・不倫による離婚で慰謝料を請求できる条件

浮気・不倫による離婚での慰謝料請求には、次のような条件が必要となります。
詳しくみていきましょう。

不貞行為があった

浮気で慰謝料を請求するには、夫又は妻が「不貞行為」を行ったことが必要になります。不貞行為とは、配偶者以外と肉体関係をもつこと、すなわち貞操義務に違反する行為をいいます。

肉体関係(性交渉)があるかどうかが重要なポイントであり、不貞行為があれば、慰謝料請求が可能となります。
異性と食事に出かけてデートしたり、異性とLINEやメールでやりとりしたりする行為は不貞行為に該当しません。

証拠がある

浮気による慰謝料請求をするには、配偶者以外と肉体関係をもっていることがわかる客観的な証拠が必要です。特に裁判を提起して慰謝料請求する場合、不貞行為の事実を裁判所が判断するためには、証拠は重要な材料となります。

具体的には次のようなものです。

  • ラブホテルに出入りしていることがわかる写真データや動画データ
  • 性交渉中や裸姿が撮影された写真データや動画データ
  • 肉体関係があることがわかるメールやLINEなどのやりとり
  • 探偵事務所の調査報告書
  • ラブホテルや旅行先の宿泊ホテルなどの領収書 など

時効が成立していない

浮気・不倫による慰謝料は、次のいずれかの時効が過ぎると請求できなくなります。

【離婚慰謝料を請求する場合】
●離婚の成立から3年

【不貞行為慰謝料を請求する場合】
●浮気および浮気相手を知ったときから3年
●浮気をしたときから20年

婚姻期間中の浮気が離婚後に発覚しても、不貞行為慰謝料請求の時効は「浮気の事実を知ったときから3年」のため、離婚後でも時効が過ぎていなければ慰謝料請求が可能です。

夫婦関係が破綻した

慰謝料請求が認められるためには、相手の浮気・不倫によって夫婦関係が破綻した事実が必要です。
一方で、浮気・不倫が、夫婦関係が破綻した後の行為であった場合、特段の事情がない限り、慰謝料請求は認められません。

「夫婦関係が破綻している」場合とは、例えば、長期間の別居している場合や夫婦関係を修復する意思がない場合、夫婦関係が修復できないほど悪化している場合などです。

こちらが既婚者であることを知っていた

不貞相手に慰謝料請求するには、浮気・不倫相手に「故意・過失」と「権利の侵害」の要件を満たす必要があります。
つまり、不貞相手が、「相手が既婚者であると知りながら(故意)」、または、「知らないことに落ち度があったこと(過失)」が必要となります。

言い換えれば、不貞相手が既婚者であることを知らなかった、または既婚者だと知る術がなかった状況であれば、不貞相手に慰謝料請求はできず、配偶者にのみ慰謝料請求を検討することになります。

権利の侵害については、「不貞行為によって平穏な婚姻生活が害されて、夫婦関係が悪化してしまったこと」が必要です。
具体例としては、「故意・過失」と「権利の侵害」として認められる場合・認められない場合は次表のとおりです。

故意・過失
認められる場合 ■相手が結婚していると知りながら肉体関係をもった。
■相手が結婚していると気付ける状況だったにも関わらず、把握していなかった。
認められない場合 ■相手に独身であると嘘をつかれて肉体関係をもった。
■婚活パーティーやマッチングアプリで知り合ってすぐに肉体関係をもち、既婚者と気付く余地がなかった。
権利の侵害
認められる場合 浮気・不倫により、円満だった夫婦関係が悪くなり離婚した。
認められない場合 ■浮気・不倫があったときには、すでに婚姻関係が破綻していた。
■浮気・不倫があったときには、すでに長期間別居をしていた。

不貞相手へ慰謝料を請求できる条件や相場などについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

浮気・不倫の離婚慰謝料の請求に必要な「証拠」

不貞行為によって離婚に至った場合の慰謝料を請求するときは、客観的な証拠がとても重要となります。
証拠となるものとして具体的には、次のようなものになります。

  • ラブホテルを出入りしているときの写真・動画
  • 肉体関係をもっている事実がわかるメールやLINEのやりとり
  • 性交渉時や裸体が撮影された写真・動画
  • ラブホテルの領収書、クレジットカード明細書
  • 探偵事務所の調査報告書
  • 浮気・不倫を自白した録音データや自認書
  • 肉体関係があったとわかる電話の通話記録 など

不貞行為の確実な証拠がない場合

不貞行為の確実な証拠がない場合は、当事者間による話し合い(交渉)で慰謝料請求をして解決するのが得策です。

確実な証拠がなくても、相手が浮気の事実を認め、慰謝料の支払いに応じれば、スムーズに解決できます。相手が不貞行為の事実を認めなかったとしても、不貞行為をしているかどうかはっきりしない証拠を複数組み合わせることで、不貞行為の事実が明らかとなり、問い詰めた結果、相手が慰謝料の支払いに応じるケースもあります。

しかし、話し合いでは解決ができず裁判を提起した場合は、不貞行為の事実を証明できなければ慰謝料の支払いは認めてもらえない可能性が高くなります。
今一度、不貞行為をしている証拠がほかになかったか、確認するようにしましょう。

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浮気による離婚慰謝料を請求する方法

不貞行為による離婚慰謝料を請求する場合は、一般的に次の流れで進めていきます。

①当事者間での話し合い
まず配偶者と直接話し合いを行います。
配偶者が不貞行為を認めて、離婚慰謝料の支払いについて合意すれば、金額や支払方法などを詳細に取り決め、その他の離婚条件とともに離婚協議書として書面化しておきます。

②離婚調停
話し合いでは折り合いがつかなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

離婚調停では、調停委員を介して、離婚慰謝料を含む離婚条件について話し合いを行って解決を図ります。
調停での話し合いで合意できなかった場合は、調停不成立となります。

③離婚裁判
調停不成立後は、家庭裁判所に離婚裁判を提起します。
離婚裁判では、訴えた側(原告)が主張する離婚慰謝料について、提示された証拠を基に浮気の事実や内容、悪質性などを総合的に考慮して、裁判官が離婚慰謝料について判決を下します。

離婚慰謝料の請求方法については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

慰謝料の請求を浮気相手にする場合

不貞相手に慰謝料請求する方法としては、まず当事者間で直接話し合いをします。

不貞相手が話し合いに応じない場合や、直接話し合うことに抵抗がある場合は、内容証明郵便を送付して請求する方法があります。
内容証明郵便はこちらの本気度が伝わって心理的プレッシャーを与えることができます。

不貞相手と話し合いをしても、慰謝料の支払いについて合意できなかった場合は、裁判所の手続きで請求する方法を検討します。
調停は家庭裁判所に慰謝料請求調停を申し立てて、調停委員を介して話し合いでの解決を図ります。
裁判は簡易裁判所か地方裁判所に不貞慰謝料請求訴訟を提起して、一切の事情を考慮して裁判官が判決を下します。

ただし、慰謝料の二重取りはできません。
例えば、慰謝料が300万円というケースでは、配偶者と不貞相手の両者から合計300万円を獲得できるにとどまります。配偶者からも不貞相手からも、それぞれ300万円ずつ(計600万円)もらえるわけではないので注意が必要です。

浮気の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

不貞行為による慰謝料を請求したいと悩んでいる方は、今すぐにでも弁護士に相談して今後の方針を検討すべきです。
弁護士に相談した場合のメリットは次のようなものが挙げられます。

  • 保有している証拠で不貞行為の存在が認められるか否かを判断してくれる
  • 証拠の集め方をアドバイスしてくれる
  • 適正な慰謝料を知ることができる
  • 相手との交渉から慰謝料の獲得までの一連の流れをすべて任せられるので、労力や精神的負担が軽減される
  • 慰謝料以外に合意すべき条件なども相談できる など

弁護士に相談することで納得した慰謝料を獲得する近道となるでしょう。

浮気が原因で離婚した場合の慰謝料に関するQ&A

Q:

肉体関係なしだと浮気の離婚慰謝料を請求することはできませんか?

A:

肉体関係なしだと、浮気の離婚慰謝料の請求は難しいでしょう。
裁判で浮気の離婚慰謝料が認められるのは、基本的に不貞行為があった場合、つまり配偶者以外の人と肉体関係があった場合だからです。

Q:

浮気が原因で離婚する場合、配偶者と浮気相手の年収によって慰謝料の金額は変わりますか?

A:

配偶者については、その年収によって、離婚慰謝料の相場は変わる可能性があります。配偶者の年収が高いケースでは、通常の慰謝料額では、被害者の精神的苦痛は十分に慰謝されないと考えられるため、慰謝料が増額される余地もあると考えられます。

一方、浮気相手の年収については、たまたま高額であったとしても、慰謝料を増額する理由とはなりづらいでしょう。

Q:

妻の浮気に対して慰謝料はいくら請求できますか?夫が浮気した場合と相場は変わりますか?

Q:

離婚後に配偶者の浮気が発覚しました。離婚後でも慰謝料は発生するのでしょうか?

A:

発覚した浮気が離婚するに至った原因であるかどうかによって、離婚後でも慰謝料が認められるかどうかが決まります。

浮気のせいで配偶者の態度が変わり夫婦関係が悪化したなど、そのことが原因で離婚した場合は、離婚慰謝料が発生し得ます。一方、離婚原因と浮気が何ら関連していない場合は、離婚慰謝料は発生しない可能性があります。

また、時効によって慰謝料を請求できなくなってしまうことに注意が必要です。

くわえて、離婚する際に、公正証書などで「追って慰謝料やお金の請求はしない」という取り決め(清算条項)をしていると、離婚後に慰謝料を請求するのは難しくなってきます。ただし、取り決め時点で浮気の事実を知る由もなかったことを証明できれば、慰謝料請求の可能性が見いだせるでしょう。

浮気の慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

夫(妻)が不貞行為をしていた場合、一定の条件を満たせば慰謝料を請求できます。たとえ離婚にまでは至らなかったとしても、慰謝料請求は可能です。

不貞行為の慰謝料請求では、“証拠”が重要なポイントになってきます。相手が「不貞行為なんてしていない」などと言い張る場合もありますし、不貞行為の証拠は裁判所の判断に影響するからです。

とはいえ、どのような証拠を集めればいいのか、悩むこともあるでしょう。また、相手との交渉や裁判の手続きに不安を抱く方もいるかと思います。

不貞行為の慰謝料について悩んだときは、まずは弁護士にご相談ください。弁護士なら、証拠の集め方について適切にアドバイスできますし、相手との交渉や裁判の手続きを代わりに行うこともできます。弁護士と一緒に、納得のいく解決を目指しましょう。

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監修:福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

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