家庭内別居中に不倫が発覚したら…慰謝料請求できる?
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
完全別居までは至らず同じ家に住んでいるものの、夫婦関係が冷めきっていて会話もほとんどなく家庭内別居の状態の夫婦は少なくありません。
家庭内別居の状況で、配偶者の浮気・不倫が発覚した場合、精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求できるのでしょうか?
そこで、本記事では、
・家庭内別居中の浮気・不倫で慰謝料請求できる?
・家庭内別居でも不倫慰謝料を請求できる2つのケース
・家庭内別居中の不倫で慰謝料を獲得するポイント
など、「家庭内別居中の浮気・不倫の慰謝料請求」について、詳しく解説しています。
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家庭内別居中の浮気・不倫で慰謝料請求できる?
通常、夫婦円満で婚姻生活を送っているなか、夫婦にある貞操義務に反して配偶者が浮気・不倫をすると、他方配偶者は精神的苦痛を負ったとして慰謝料請求することができます。
しかし、家庭内別居中に、浮気・不倫がはじまった場合は、慰謝料請求は難しいとされています。
慰謝料請求できるのは、浮気・不倫が「夫婦関係を破綻させる」不法行為になる場合です。
すでに家庭内別居をして“夫婦関係が破綻している”状態であれば、浮気・不倫されても不法行為とならずに慰謝料請求できない可能性があります。
浮気・不倫により離婚の慰謝料請求については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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「婚姻関係が破綻している」と判断されるケース
「家庭内別居」とは、ひとつ屋根の下に暮らしていながら、別居しているかのように別々で過ごし、共同生活を行っていない状況をいいます。
明確な定義はありませんが、一般的に婚姻関係が破綻していると判断される家庭内別居の状況は次のようなケースです。
- 食事や掃除・洗濯などの家事全般を別々に行っている
- 夫婦の寝室が別々でセックスレスである
- 夫婦間の会話が一切ない
- 家でほとんど顔を合わせることがない
- 家計管理が別々である
- 一緒に外出することがない
- 家庭内別居している状態から修復する意思がない
- 将来的に離婚を見据えている など
家庭内別居中の不倫で慰謝料請求が認められなかった判例
事案の概要
元妻である原告が、元夫である被告に対して、不貞行為をしたとして慰謝料500万円の支払いを求めた事案です。
裁判所の判断
裁判所は以下の①~⑥の事実に照らし、家庭内別居開始2年後の段階ですでに婚姻関係は修復の見込みがないほどに破綻していた判断しました。また、婚姻関係が破綻する前に被告と交際相手Cが不貞関係を開始した事実は認められず、婚姻関係が破綻した約4年後に被告が家を購入し、Cと一緒に住むようになり、翌年に被告とCとの間に女児をもうけたことは原告に対する違法な行為とはいえないとして、原告の請求を棄却しました。
- ① 夫婦で住む家とは別に被告が新たに家を購入する6年前には家庭内別居状態になっていた
- ② 6年前頃、原告が別居の理由を告げることなく夫婦で暮らしていた自宅を出て、夫婦の長女の家で少なくとも半年間別居生活を送り、その間に連絡取り合うこともなく会話もなかった
- ③ 原告が夫婦の自宅に戻ってからも、被告にやり直そうなどと声を掛けることもなかった
- ④ 食事も別々であった
- ⑤ 性交渉もなかった
家庭内別居でも不倫慰謝料を請求できる2つのケース
家庭内別居中の浮気・不倫について慰謝料請求が認められるのは、基本的に難しいですが、次の2つのケースでは認められる可能性があります。
- ① 家庭内別居をする前から不倫していた
- ② 不倫があった時点では婚姻関係が破綻していなかった
次項より、詳しく解説していきます。
①家庭内別居をする前から不倫していた
家庭内別居中の浮気・不倫について慰謝料が認められない理由は、家庭内別居している事実が、すでに「婚姻関係が破綻していた」と考えられるためです。そこからさらに浮気・不倫が行われたからといって、婚姻関係破綻の直接の原因とはなりません。
ただし、浮気・不倫が家庭内別居をする前からのものであれば、上記理由に該当しません。
家庭内別居をする前から浮気・不倫していた場合、夫婦関係が悪化する要因のひとつになり得ます。
そもそも、浮気・不倫がなければ、家庭内別居するほど夫婦関係が悪化することはなかったかもしれません。
よって、家庭内別居をする前から浮気・不倫していた場合は、慰謝料請求ができるのです。
②不倫があった時点では婚姻関係が破綻していなかった
浮気・不倫があった時点で、家庭内別居をしていても婚姻関係が破綻していなければ、慰謝料請求できる可能性があります。
例えば、次のような場合は、「婚姻関係が破綻している」といえない状況です。
- 家庭内別居の期間が短い
- 会話がなくても、配偶者のための食事の準備や掃除・洗濯を行っている
- 浮気・不倫をしている最中も、配偶者と性交渉を行っていた
- 家庭内別居中でも、子育てには夫婦で協力しており、子供を含めて家族で遊びに出かけたりしている
ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかは、明確な線引きがあるわけではなく、夫婦の個別の事情や状況によって判断されます。
家庭内別居中の不倫で慰謝料を獲得するポイント
家庭内別居中とはいえ、婚姻中なのですから、配偶者が浮気・不倫をしたとなると、慰謝料請求したいと考える方も多いでしょう。
そこで、次項より家庭内別居中の浮気・不倫で慰謝料を獲得するポイントを解説していきます。
離婚慰謝料の請求方法については、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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不倫が始まった時期を特定する
家庭内別居をする前から浮気・不倫していた、もしくは不倫があった時点では婚姻関係が破綻していなかった場合は、慰謝料請求が可能です。
そのため、浮気・不倫が始まった時期の特定が重要となります。
例えば、次のようなもので特定できる可能性があります。
- 不倫相手といつごろから肉体関係があったかうかがえるメールやLINEなどのやりとり
- ラブホテルの領収書やクレジットカードの支払明細書の日付
- ラブホテルや不倫相手の自宅に出入りしているときの写真や動画の日付
- 配偶者や不倫相手から、いつ浮気・不倫を開始したのかの自白 など
婚姻関係が破綻していなかったことを証明する
浮気・不倫が行われた時点で婚姻関係が破綻していなかったことを証明できれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。
例えば、次のようなもので婚姻関係が破綻していなかったことを証明できる可能性があります。
- 浮気・不倫が行われた頃、家族旅行に行っていたときの写真、子供の運動会や発表会などに家族で参加したときの写真、結婚記念日やお誕生日などを一緒にお祝いしている写真など
- 浮気・不倫が行われた頃、夫婦が仲むつましい状況がうかがえるメールやLINEのやりとり
- 家族をよく知る友人や親族の陳述書 など
不倫問題に強い弁護士に依頼する
家庭内別居している状態で配偶者の浮気・不倫が発覚した場合は、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
弁護士に相談・依頼すれば次のようなメリットが挙げられます。
●夫婦関係が破綻しているかどうか判断してもらえる
家庭内別居をしている状態や証拠を確認し、法的に夫婦関係が破綻しているといえるのか、浮気・不倫による慰謝料請求ができるのか判断してもらえます。
●配偶者や浮気相手と直接連絡をとらなくて済む
慰謝料請求をする場合、弁護士が代わりに交渉をしますので、精神的負担が軽減できます。
またご自身で配偶者や浮気相手と直接やりとりすると、感情的になって冷静な話し合いができずに解決できないという事態を回避できます。
●慰謝料請求に有利になる証拠の集め方をアドバイスしてもらえる
家庭内別居中に浮気・不倫している事実そのものの証拠以外に、いつ不倫がはじまったか、夫婦関係が破綻していたのか、などが客観的にわかる証拠も重要です。
弁護士であれば、どのような証拠が有利かについてアドバイスや、証拠収集のサポートをしてくれます。
家庭内別居中の不倫を理由に離婚を決意したら
家庭内別居中の浮気・不倫を理由に離婚を決意したら、慰謝料請求と並行して離婚請求もしましょう。
離婚は、夫婦間での話し合いや離婚調停で夫婦双方の合意があれば離婚できます。
夫婦間の話し合いや離婚調停で合意できなかった場合は、最終的に離婚裁判を提起することになります。
離婚裁判では、裁判上で離婚が認められる事由(法定離婚事由)が必要です。
家庭内別居中の浮気・不倫(不貞行為)が原因で離婚する場合は、法定離婚事由のうち「配偶者に不貞行為があったとき」もしくは「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」を主張・立証していくことになります。
家庭内別居で離婚することはできるのかは、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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家庭内別居中の不倫に関するQ&A
- Q:
家庭内別居中に旦那の不倫が発覚しました。不倫相手にも慰謝料を請求できますか?
- A:
浮気・不倫は、配偶者と不倫相手が共同して行う「共同不法行為」なので、夫婦関係が破綻する前に行われた不法行為になる場合は、不倫相手にも慰謝料請求できます。
ただし、家庭内別居中に発覚した浮気・不倫とのことですので、家庭内別居中に始まり、すでに夫婦関係が破綻してからの浮気・不倫と判断されれば、不法行為にならず、不倫相手へ慰謝料請求をしても、慰謝料は認められないでしょう。
浮気相手(不倫相手)への慰謝料できる条件や相場などについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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- Q:
家庭内別居中の不倫だと、慰謝料額は相場よりも低くなってしまいますか?
- A:
通常、浮気・不倫の慰謝料の相場は50万~300万円程度となります。
慰謝料の相場に幅があるのは、婚姻期間や不倫期間、不倫の悪質性なども関係しますが、浮気・不倫したときの“夫婦の状況”も大きく左右します。
よって、夫婦円満だったにも関わらず浮気・不倫があった場合は慰謝料の金額は高額になる傾向にあります。一方で、婚姻関係は破綻してなくても家庭内別居中で、すでに夫婦仲が悪化していたときの浮気・不倫であれば、慰謝料の金額は低額になる可能性があります。
離婚慰謝料の相場は、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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- Q:
家庭内別居中に妻から「好きな人ができた」と離婚を切り出されました。離婚に応じるしかないでしょうか?
- A:
夫婦間での話し合いや離婚調停での話し合いで、夫婦双方が離婚について合意しなければ離婚はできません。
したがって、離婚を切り出されても、離婚に応じなければ、離婚は成立しません。夫婦間での話し合いや離婚調停で離婚の合意ができなければ、離婚を希望している奥様からは、最終的に離婚裁判を提起される可能性があります。
しかし、離婚裁判では、奥様が婚姻中に浮気・不倫をして離婚の原因を作り、婚姻関係を破綻させた責任のある配偶者と認められれば、「有責配偶者」となり、有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。
もっとも、奥様が浮気・不倫する前から家庭内別居をして夫婦関係が破綻していたとなれば、離婚請求が認められる可能性もあります。
有責配偶者からの離婚請求について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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家庭内別居中の不倫でも慰謝料が認められる可能性はあります。まずは弁護士にご相談下さい
家庭内別居中に配偶者に浮気・不倫されても、「慰謝料請求はできない・・・」と諦めないでください。
“浮気・不倫がいつから始まったか”、“夫婦関係が破綻しているかどうか”によっては、現在家庭内別居をしていても慰謝料請求できる可能性があります。
家庭内別居中の浮気・不倫で慰謝料請求を検討している方は、まずは弁護士にご相談ください。
ご家庭の個別の状況を伺い、法的観点から慰謝料請求できるかどうかをアドバイスいたします。
慰謝料請求できる場合は、有益となる客観的な証拠集めをアドバイスして、代わりに弁護士が相手と交渉します。
よって、ご自身が精神的負担を負わずに、時間や労力を軽減して、有利に解決できるように尽力いたします。
まずは、一人で抱え込まずにお気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。
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- 保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)